昨日の名古屋高裁におけるイラク派兵違憲判決に関する各紙の社説である。政府はこうした判決が出ても、傍論だとして従おうとしていない。政府のこの姿勢は立憲主義と三権分立主義に真っ向から反する態度である。朝日、毎日、東京、北海道の各紙はイラクは兵の再検討を主張しているが、読売紙は判決に正反対の態度を取っている。
先のプリンスホテルの日教組問題での仮処分判決無視の態度といい、権力や力のあるもの達がこうした判決を無視する風潮をいかにすればいいのか。(高田)
イラク派兵、名古屋高裁違憲判決・各紙社説
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#syasetu1
イラク判決―違憲とされた自衛隊派遣
あのイラクに「非戦闘地域」などあり得るのか。武装した米兵を輸送しているのに、なお武力行使にかかわっていないと言い張れるのか。
戦闘が続くイラクへの航空自衛隊の派遣をめぐって、こんな素朴な疑問に裁判所が答えてくれた。いずれも「ノー」である。
自衛隊が派遣されて4年。長年、疑念を抱いていた人々も「やっぱり」という思いを深めたのではないか。
航空自衛隊の派遣に反対する3千人余りの人々が派遣差し止めを求めて起こした訴訟で、名古屋高裁が判決を言い渡した。
差し止め請求は退けられ、その意味では一審に続いて原告敗訴だった。だが、判決理由のなかで憲法などとのかかわりが論じられ、派遣当時の小泉政権が示し、その後の安倍、福田両政権が踏襲した論拠を明確に否定した。
判決は、イラクの現状は単なる治安問題の域を超え、泥沼化した戦争状態になっていると指摘した。とくに航空自衛隊が活動する首都バグダッドの状況はひどく、イラク特措法の言う「戦闘地域」にあたるとした。
小泉政権は、イラクのなかでも戦火の及ばない「非戦闘地域」が存在し、そこなら自衛隊を派遣しても問題ないと主張した。陸上自衛隊を派遣した南部サマワや、首都の空港などはそれにあたるというわけだ。
判決はそれを認めず、空輸活動はイラク特措法違反と明確に述べた。空自の輸送機はこれまで攻撃を受けなかったものの、何度も危険回避行動をとったことを防衛省は認めている。実際に米軍機などが被弾したこともあった。判決の認識は納得がいく。
もう一つ、多国籍軍の武装兵員を空輸するのは、他国による武力行使と一体化した行動であり、自らも武力を使ったと見られても仕方ない、つまり憲法9条に違反するとした。
もともと、無理のうえに無理を重ねた法解釈での派遣だった。当時の小泉首相は、非戦闘地域とはなにかと国会で聞かれ、「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域」などと開き直ったような答弁を繰り返した。
判決後、町村官房長官は派遣続行を表明した。最高裁による最終判断ではないからということだろう。それでも、高裁の司法判断は重い。判決を踏まえ、与野党は撤収に向けてすぐにも真剣な論議を始めるべきだ。
日本の裁判所は憲法判断を避ける傾向が強く、行政追認との批判がある。それだけにこの判決に新鮮な驚きを感じた人も少なくあるまい。
本来、政府や国会をチェックするのは裁判所の仕事だ。その役割を果たそうとした高裁判決が国民の驚きを呼ぶという現実を、憲法の番人であるはずの最高裁は重く受け止めるべきだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008041802004496.html
【社説】
イラク空自違憲 『派兵』への歯止めだ
2008年4月18日
航空自衛隊のイラク派遣は憲法九条に違反している。名古屋高裁が示した司法判断は、空自の早期撤退を促すもので、さらには自衛隊の海外「派兵」への歯止めとして受け止めることができる。
高裁の違憲判断はわかりやすい論理になっている。
イラク特措法は、人道復興支援のため「非戦闘地域」での活動を規定している。空自のC130輸送機は、武装した米兵らをバグダッドなどに空輸している。ところが、バグダッドは戦闘地域、すなわち戦場である。
戦場に兵士を送るのは軍事上の後方支援となる。これは非戦闘地域に活動を限定したイラク特措法から逸脱し、武力行使を禁じた憲法九条に違反するとした。
イラク戦争開戦から五年余。大量破壊兵器の保有、国際テロの支援を理由に米英両国は攻撃に踏み切った。「事前に悪をたたく」という米ブッシュ政権の先制攻撃論が理論的支柱となった。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080418k0000m070137000c.html
社説:イラク空自違憲 あいまいな説明は許されない
イラク復興特別措置法に基づく航空自衛隊のバグダッドへの空輸活動を違憲とする判決が出た。自衛隊のイラク派遣に反対する市民グループが国を相手取って、派遣が憲法違反であることの確認を求めた控訴審で、名古屋高裁(青山邦夫裁判長)が17日、判断したものだ。
陸上自衛隊は06年7月にイラク・サマワから撤退したが、空自は昨年6月のイラク特措法改正で活動が2年間延長された。イラクで5年目の活動を展開しており、クウェートから首都バグダッドへの輸送などを担当している。
判決はまず、バグダッドで米軍などと武装勢力との間で激しい武力衝突が起きていることを指摘し、特措法でいう「戦闘地域」にあたると認定した。そのうえで、「多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸する活動は、他国による武力行使と一体化した行動で、武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」とした。
政府と同じ憲法解釈で特措法を合憲としたとしても、活動を「非戦闘地域」に限定した特措法と、武力行使を禁じた憲法9条に違反するとの判断である。
重要なのは、判決がイラク国内の紛争は多国籍軍と武装勢力による「国際的な武力紛争」であるとの判断に基づき、バグダッドを「戦闘地域」と認定したことだ。政府がイラクでの自衛隊の活動を合憲だと主張してきた根拠を根底から覆すものだからだ。
イラクに自衛隊を派遣した小泉純一郎首相(当時)は、国会で非戦闘地域について質問されて、「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域である」と答弁し、物議をかもしたことがある。また、党首討論では、イラク国内の非戦闘地域について聞かれ、「イラク国内の地名とかを把握しているわけではない。どこが非戦闘地域かと聞かれても、分かるわけがない」と発言したこともあった。
判決は、極めてあいまいだった当時の首相発言を指弾する内容でもある。政府は判決を真摯(しんし)に受け止め、活動地域が非戦闘地域であると主張するなら、その根拠を国民にていねいに説明する責務がある。
さらに、判決が輸送対象を「武装兵員」と認定したことも注目に値する。政府はこれまで、空自の具体的な輸送人員・物資の内容を明らかにしてこなかった。小泉首相は、当時の記者会見で「空自による物資の輸送はしている。しかし、どんな活動をしているかは部隊の安全の面があり、公表できない部分もある」と述べていた。
しかし、輸送対象に米軍を中心とする多国籍軍が含まれており、当初の「人道復興支援」から「米軍支援」に変質したのではないかとの見方が前からあった。
政府は、輸送の具体的な内容についても国民に明らかにすべきである。
毎日新聞 2008年4月18日 0時01分
いずれも見込み違いの「大義なき開戦」だったことは明らかだ。この五年は、イラク人にとり苦難と混乱の日々であった。世界保健機関(WHO)によると、十五万人以上のイラク人が死亡した。
米兵死者が四千人を超す米国も、厭戦(えんせん)気分が満ちている。秋の大統領選ではイラク問題が最大争点となりそうだ。
では、小泉政権の「開戦支持」は正しかったか。この支持の延長に自衛隊の派遣があった。イラク南部サマワに派遣された陸上自衛隊は、インフラ整備など復興支援の活動を展開したが、空自は情報開示に乏しく、活動実態は伝わっていない。
高裁が違憲とした以上、空自の輸送活動をこのまま継続することは難しく、撤退も視野に入れた検討が必要ではないか。福田政権にとっては、道路財源や高齢者医療の内政問題に加え、日米同盟にかかわる安全保障上の外交課題を背負うことになった。
もう一つ、今回の違憲判決が明確にしたのは、自衛隊海外派遣と憲法九条の関係である。与党の中には、自衛隊の海外派遣を恒久法化しようという動きがある。しかし、九条が派遣でなく「派兵」への歯止めとなることを憲法判断は教えた。
イラク派遣に限らず、司法は自衛隊に関する憲法判断を避けてきた。今回の踏み込んだ判決を受け止め、平和憲法の重さとともに、世界の中にある日本の役割を考える機会としたい。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/87943.html
社説
イラク空自違憲判決 まだ派遣を継続するのか(4月18日)
自衛隊の海外活動について、司法が初めて違憲判断を示した。
イラクで航空自衛隊が行っている米軍の武装兵などの空輸活動は憲法九条に違反する。他国による武力行使と一体化しているからだ-。
名古屋高裁の判決文は明快だ。
空自が活動するバグダッド周辺は「戦闘地域」だとも認定した。
画期的ではあるが、きわめて常識的な判断ともいえる。
国内の反対の声を押し切って派遣を進めてきた政府の主張には、やはり無理があったということだ。
自衛隊の海外派遣には、慎重さが求められる。九条をないがしろにするような派遣は認められない。
ここはいったん空自を撤退させ、自衛隊の海外活動のあり方を根本から論議し直すべきだ。
*司法が疑問に答えた
イラク復興支援特別措置法には、自衛隊の活動は「武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならない」と明記されている。
活動地域についても「戦闘行為が行われていない」ところと限定している。
だが、イラク国内でテロや宗派間抗争が絶えなければ、そこは戦闘地域ではないのか。米軍を中心とした他国の武装兵などを運ぶ後方支援は、武力行使の一環ではないのか。
多くの国民が抱いてきた疑問だ。
これに対し、政府はあくまで武力行使ではなく人道復興支援だといってきた。派遣を決めた小泉純一郎首相は「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」という粗雑な論理を振りかざした。
判決は、そうした政府の言い分を真正面から否定している。
判決はいう。
イラクの現状は「泥沼化した戦争の状態」だ。自衛隊が活動する首都バグダッド周辺は「戦闘地域」に該当する。輸送などの補給活動も戦闘行為の重要な要素だ。
こちらの方が、はるかにすっきりと納得できる説明ではないか。
米国が主導して始めたイラク戦争には国際社会に強い反対の声があった。大量破壊兵器の存在など、米国が主張した「開戦の大義」が偽りだったことも明らかになっている。
日本が自衛隊を派遣したのは、国際世論や国民の声より日米同盟の維持・強化を優先させたからだ。
復興支援という派遣の名目も非戦闘地域の強引な定義も、結局はそのための理屈付けだったといわざるを得ない。
*厳格な基準が必要だ
昨年一月の自衛隊法改正で、自衛隊の海外活動が本来任務に格上げされた。
インド洋では、海上自衛隊が他国の艦船への給油活動を再開した。
政府・与党は自衛隊の海外派遣の恒久法制定を目指している。
いつの間にここまで来てしまったのだろう。
イラクでの活動を政府は今後も継続する方針だ。司法判断を軽んじる態度といっていい。
今回の名古屋高裁の判断が指し示しているのは、自衛隊の海外活動にはもっと厳格な基準と抑制が必要だということではないのか。
この判決を待つまでもなく、憲法九条は自衛隊の海外での武力行使を禁じている。
だから九条は変えるべきだ、という声も出てくるかもしれない。
しかし、それは逆だろう。九条は日本が平和国家を目指すという宣言である。各種世論調査でも九条を守ろうという国民の意識は強い。
九条の理念に立ち返って考える。政府はそこから再出発すべきだ。
*国会は実態の解明を
国会の責任も重い。
活動の実態をできるだけ詳しく国民の前に明らかにする。その上で憲法論議を具体的に積み上げていく。
それこそが国会の使命だ。
空自がイラクで輸送活動に従事して四年あまり。政府が実際の活動の一端を説明し始めたのは、ようやく昨年の通常国会からだった。
詳細はいまだに明かされていない。にもかかわらずイラク特措法は昨年六月に二年間延長された。
国会の監視機能が不十分なまま、文民統制は形骸(けいがい)化していた。
すでに撤退したとはいえ、二年半にわたる陸上自衛隊の活動も検証が必要だ。
年内には