鳩山幹事長、「天皇は元首」明記訴え
本日、6日の読売のベタ記事である。サイトからとれないので入力しておく。(高田)
「天皇は元首」明記訴え
民主党の鳩山幹事長は5日、都内で開かれた「天皇陛下ご即位20年奉祝委員会」(会長=岡村正・日本商工会議所会頭)の設立総会で挨拶し、「憲法改正の議論の中で『日本国は天皇を元首とする民主主義国家である』と書き込むべきだ」と述べた。鳩山氏は2005年、「国民統合の象徴である天皇を元首とする」と明記した独自の改憲試案を発表している。
本日、6日の読売のベタ記事である。サイトからとれないので入力しておく。(高田)
「天皇は元首」明記訴え
民主党の鳩山幹事長は5日、都内で開かれた「天皇陛下ご即位20年奉祝委員会」(会長=岡村正・日本商工会議所会頭)の設立総会で挨拶し、「憲法改正の議論の中で『日本国は天皇を元首とする民主主義国家である』と書き込むべきだ」と述べた。鳩山氏は2005年、「国民統合の象徴である天皇を元首とする」と明記した独自の改憲試案を発表している。
毎日の社説ウォッチングである。
商業紙のプロ記者が折角書くのなら地方紙の動向にも注意を払ってもらいたかったところだが。本ブログでもすでに紹介したが、この特徴の指摘はだいたい妥当であろう。(高田)
http://mainichi.jp/select/opinion/watching/
社説ウオッチング:憲法記念日 「9条改正」主張なし
◇「9条改正」主張なし--各紙
◇生存権の侵害に警鐘--毎日
61回目の憲法記念日の3日、各紙は社説で一斉に憲法を取り上げた。昨年の60回目の記念日は「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍晋三首相が憲法改正を7月の参院選の争点にする、と意気込み、憲法改正の手続き法である国民投票法案が成立直前だったため、各社とも戦争放棄と軍隊不保持をうたった9条問題への言及が中心だったが、今年は福田康夫首相が改憲路線とは一線を画し、各社世論調査でも改憲反対が増えた中で、改憲を主張する読売、日経、産経が正面切っての9条改正論を打ち出さず、衆参ねじれ国会打開のための2院制改革などに焦点を移したのが特徴だ。一方、ワーキングプアや非正規労働者の激増という新しい貧困がクローズアップされる中、毎日、朝日、東京は憲法前文や25条が定める生存権をいかに生かすか、という新たな視点で憲法の血肉化を求めた。また、3紙は表現の自由を守る大切さを訴え、毎日は「ことなかれ」世論に警鐘を鳴らした。
◇2院制のあり方焦点
94年に憲法改正試案を発表後、一貫して改憲を訴える読売は、昨年5月の国民投票法成立で衆参両院に設置された憲法審査会がまったく動いていない、と批判。2010年に憲法改正発議が可能になるが「これ以上、遅延させては、国会議員としての職務放棄に等しい」と断じた。また「ねじれ国会」打破のために2院制のあり方を「大いに論議してもらいたい」と注文した。しかし、あれほど熱心だった「9条改正」「安全保障」の文言は見当たらない。新聞社は重要な節目には通常2本で構成する社説を長文の1本社説にするが、この日の読売は2本社説で、風向きの変化を印象付けた。
日経も「ねじれ国会の迷走を貴重な教訓」に衆院再可決の要件を3分の2から過半数に緩和する59条改正を改めて主張。1本社説の大半を2院制改革論にあてた。
◇産経「9条解釈変更を」
産経は4月に中東イエメン沖で日本郵船の大型タンカーが海賊に襲われ被弾したのに、周辺海域で多国籍軍への給油活動を行っていた海上自衛隊の補給艦と護衛艦が憲法の制約で撃退できなかったことを取り上げ、「憲法守って国滅ぶである」「海賊も撃退できない憲法解釈がいかにおかしなものか」と悲憤慷慨(こうがい)したが、解釈改憲で対応可能とし、正面切っては9条改正を主張しなかった。
読売、産経の社説に世論の変化の影響が読み取れる。各社世論調査を見てみよう。読売調査(3月15、16日)は改憲賛成が42・5%、改正反対が43・1%と93年以来では初めて非改正派が改正派を上回った。日経調査(4月18~20日)は「改正すべき」が48%、「現在のままでよい」43%だが、前回(07年4月)比で改正支持は3ポイント低下、現状維持支持は8ポイント上昇した。朝日も改憲派が07年の58%から56%へ、護憲派が27%から31%。同様の傾向を見せた。特徴的なのは朝日調査で9条改正反対が昨年の49%から66%に激増し、改正賛成が33%から23%に減ったことだ。毎日は「あれほど盛んだった改憲論議が、今年はすっかりカゲをひそめてしまった。国民の関心は憲法よりも、暮らしに向かっている」と解説する。
毎日、朝日、東京は生存権にスポットライトを当てた。
毎日はイラクの航空自衛隊の活動に対する名古屋高裁の違憲判決が憲法前文の「平和のうちに生存する権利」を法的権利と認めたことに触れ「ダイナミックにとらえ直された『生存権』。その視点から現状を見れば、違憲状態が疑われることばかりではないか」と指摘。後期高齢者医療制度、ワーキングプア、消えた年金などを例示して「『生存権』の侵害に監視を強める地道な努力」を訴えた。
東京は憲法25条が「すべて国民は、健康で文化的な生活を営む権利を有する」とあるのに、生活保護辞退の強制などが相次ぐ現状を「弱者に対する視線の変化」として「行き過ぎた市場主義、能力主義が『富める者はますます富み、貧しい者はなかなか浮かび上がれない』社会を到来させ」たと分析した。
朝日も雇用、社会保険、公的扶助の3段階のセーフティーネットの脆弱(ぜいじゃく)さを問題にした。年収200万円に満たずワーキングプアとされる労働者が1000万人を超え、非正規労働者が働く人の3分の1を占める中、「憲法と現実との間にできてしまった深い溝」を埋める必要性を訴えた。
◇表現の自由の危機
右翼のいやがらせへの懸念を理由に、裁判所決定を無視し、日教組の集会を拒んだ東京のホテル。国会議員の介入を機に映画館の上映中止が相次いだ映画「靖国」。毎日は「『面倒は避けたい』と思うのは人情だ。しかし、このとめどもない『ことなかれ』の連鎖はいったいどうしたことか。意識して抵抗しないと基本的人権は守れない。私たちの現状は、やや無自覚に過ぎるように見える」と、集会の自由、表現の自由が脅かされている問題を「『ことなかれ』に決別を」のメーン見出しで取り上げた。【紙面研究本部・長田達治】
この間、運動の多忙さの故に手抜きになっていたが、遅ればせながら5月3日の各紙社説を拾った。読売、日経、産経、朝日、毎日、東京、北海道、神奈川各紙である。
特徴は改憲派の読売、日経が9条改憲論を正面から展開できずに、衆参ねじれ国会状況に引っかけて二院制のあり方を論じて改憲へと誘導しようとしていること(産経は海賊事件に例を借りて、自衛隊派兵改憲を主張したが)、朝日や各地方紙が、この1年で憲法状況が大きく変化したことを指摘し、9条護憲の意見が国民の間で急増していることや、貧困と深刻な格差社会、名古屋高裁判決、立川反戦ビラ判決、プリンスホテル問題などに触れ、「憲法と現実の乖離」を指摘し、9条だけでなく、21条や25条の問題でも、憲法の理念を実現することを主張していることである。
この間、9条改憲論の根拠として強大な自衛隊保持などの現実と憲法の乖離が主張され、憲法を現実にあわせるための改憲が語られてきた。ではお聞きしたい、21条や、25条での現実との乖離も改憲派の諸君は憲法を現実にあわせろと主張するのだろうか。これらの深刻な乖離は名古屋高裁判決を受けての福田首相の発言や海上幕僚長の「関係ねえ」発言にみられるように、憲法無視、立憲主義の否定の態度と共通する問題である。各紙社説氏は、こうした指摘を5月3日の一時の憲法論に終わらせるのではなく、ジャーナリズムの使命としての恒常的な権力批判として展開しなければならない。この社会の現状にはマスマディアにもまた重大な責任があるからだ。
地方紙各紙の社説を集めたNPJの資料は迫力がある。
http://www.news-pj.net/siryou/shasetsu/2008.html#anchor-kenpou(高田)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080502-OYT1T00753.htm
憲法記念日 論議を休止してはならない(5月3日付・読売社説)
この国はこれで大丈夫なのか――日本政治が混迷し機能不全に陥っている今こそ、活発な憲法論議を通じ、国家の骨組みを再点検したい。
昨年5月、憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立し、新しい憲法制定への基盤が整った。
ところが、同法に基づいて衆参両院に設置された憲法審査会は、衆参ねじれ国会の下、民主党の消極的姿勢もあって、まったく動いていない。
超党派の「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根元首相)が1日主催した大会に、顧問の鳩山民主党幹事長らが欠席したのも、対決型国会の余波だろう。
大会では、憲法改正発議に向けて憲法問題を議論する憲法審査会を、一日も早く始動させるよう求める決議を採択した。これ以上、遅延させては、国会議員としての職務放棄に等しい。
与野党は、審査会の運営方法などを定める規程の策定を急ぎ、審議を早期に開始すべきだ。
憲法審査会で論じ合わねばならぬテーマは、山ほどある。二院制のあり方も、その一つだ。
現行憲法は、衆参ねじれ国会を想定してはいた。例えば、憲法59条。衆院で可決した法案を参院で否決、または60日以内に議決しない場合、衆院は3分の2以上の賛成多数で法案を再可決し、成立させることができる。
政府・与党は、これに基づき、インド洋での海上自衛隊の給油活動再開のための新テロ対策特別措置法と、ガソリン税の暫定税率を復活させるための税制関連法をそれぞれ再可決、成立させた。
この再可決は、憲法の規定上、何の問題もない。
かつて、参院議長の私的諮問機関は、参院改革の一環として、衆院の再可決要件を、「3分の2以上」から「過半数」に緩和することを提言した。自民党が新憲法草案を作成する過程でも、同様の案が一時、浮上した。
もちろん、こうした改革には憲法改正が必要で、直ちに実現できることではない。
ただ、参院の機能は、衆院に比べてあまりに強すぎないか。衆参両院の役割分担を見直す必要はないか。与野党には、こうした憲法改正にかかわる問題を大いに論議してもらいたい。
衆参ねじれ国会は、国として迅速にしなければならぬ意思決定を困難にしている。こうした国会機能をめぐる議論を積み重ねることが、新しい国会ルールの形成にもつながるのではないか。
(2008年5月3日01時45分 読売新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080502AS1K3000302052008.html
日経新聞 社説 憲法改正で二院制を抜本的に見直そう(5/3)
衆参両院の多数派が異なるねじれ国会で政局が迷走する中で、61回目の憲法記念日を迎えた。現行の二院制度は日本国憲法の最大の欠陥である。議院内閣制がきちんと機能するように憲法を改正し、よりよい二院制度をめざしたい。ねじれ国会の迷走を貴重な教訓として憲法改正論議に生かすべきである。
私たちはかねて、参院が大きな権限を持つ現行制度の下では議院内閣制が立ち往生しかねないと指摘してきた。そうした懸念が現実となったのがねじれ国会の迷走である。
衆院の優越より明確に
テロ防止のための国際協力に4カ月近くの空白が生じた。日銀総裁の決定も混迷に混迷を重ねた。予算を執行するための関連法案の成立も容易でない状況が続いている。
現在は与党が衆院で3分の2以上の多数を握っており、参院で法案が否決されるか、2カ月以内に議決しない場合に衆院で再可決できるので国政の混乱もまだこの程度で収まっている。しかし、与党が衆院で3分の2以上の勢力を持つのは極めてまれである。与党が衆院で単なる過半数しか持っていない場合、政治はたちまち行き詰まってしまう。
議院内閣制は衆院多数派が内閣を組織し、国会と国民に責任を負う仕組みだ。参院はこれに対する「チェック機関」「再考の府」であり、参院が強大な権限を持つと議院内閣制の趣旨は貫徹できなくなる。現行憲法は首相指名、予算、条約承認で衆院の優越を明確に認めているが、普通の法案については衆院の3分の2の再可決規定があるだけである。
衆院の優越規定がそれだけでは明らかに不十分である。予算が成立しても歳入などの裏付けとなる関連法案が成立しなければ予算執行に支障が出る。条約が承認されても関連の国内法が成立しなければ実際の効力が発生しないケースも出てくる。国会同意人事も最終的には内閣の責任になるのだから衆院の優越を認めないのは不自然である。
英国の上院は貴族院であり、ドイツの連邦参議院は州政府の代表で構成されている。いずれも国民の直接選挙ではなく、その分、権限は制約されている。一方、イタリアの上院は国民の直接選挙で下院と完全に同等の権限を持っており、解散の場合は常に上下両院同時である。解散がないのに大きな権限を持つ日本の参院は世界的に見ても異様である。
私たちは衆院の優越をより明確にするため憲法59条を改正し、衆院の再可決の要件を3分の2から過半数に緩和すべきだと主張してきた。参院に従来通り2カ月の審議期間を保証すれば、チェック機関、再考の府としての機能は十分に果たせるはずである。道路特定財源問題では参院が2カ月間審議を引き延ばした結果、内閣は再可決の条件整備のために一般財源化方針に踏み切らざるを得なくなったのが一例である。
現行の二院制度を前提とする限り、ねじれを解消する手段は最終的に衆院第一党と参院第一党の大連立しかないだろう。衆院選の民意を踏まえた結果なら大連立もやむを得ないと考えるが、大連立が常態化するのは好ましくない。議院内閣制はやはり二大政党による政権交代可能な政治体制が基本である。
憲法を改正して参院の権限を縮小し、衆院の優越をより明確にするのに合わせて、参院の選挙制度も抜本的に見直すべきである。現行の3年ごとの半数改選は米国上院をまねたものでほとんど無意味だ。6年の任期も長すぎる。全国単位の比例代表制は廃止した方がいい。
参院は地方代表で構成
衆院議員が全国民の代表とするなら、参院議員はドイツのように地方の代表として位置づける。将来の道州制導入をにらんでブロックごとの比例代表選挙か、あるいは直接選挙をやめて間接選挙とし、総定数は100人程度とする。このような案も一考に値しよう。
自民党は2005年に新憲法草案を公表したが、参院の改革には全く触れていない。民主党も憲法に関する基本的な考え方をまとめているが、参院のあり方への言及がない。両党ともこれまで参院をタブー視して党内議論を封じ込めてきた。ねじれ国会の迷走はそうした両党の姿勢に反省を迫っているともいえよう。民主党も将来政権を担うときに参院が足かせになる可能性があることをもっと真剣に考えた方がいい。
昨年5月に成立した国民投票法で衆参両院に憲法審査会を設置することが決まった。だが、同審査会の組織や運営ルールを定める審査会規程の協議を民主党が拒否し続け、いまだに憲法審査会が活動できずにいる。議論すべきテーマは二院制度見直しだけにとどまらない。自衛隊の国際貢献などの安全保障、抜本的な地方分権、環境や生命倫理などいくらでもある。一刻も早く憲法審査会を始動させるべきである。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080503/plc0805030149000-n1.htm
憲法施行61年を迎えた。施行された昭和22年当時には想定できなかった事態が続発している。
サブプライム問題に伴う金融危機、資源争奪に加え、中国の軍事力強大化や北朝鮮の核の脅威にさらされている。この国際環境の激変とパワーゲームを前に日本は日銀総裁を空席にしたように国家意思を決められなくなっている。
より深刻なのは、日本が国家として当たり前のことを実行できなくなっていることだ。4月21日、中東イエメン沖で日本郵船の大型タンカー「高山」が海賊に襲われ、被弾した事件は、日本が公海上で海賊を撃退することに無力なことをみせつけた。憲法解釈によりがんじがらめだからである。
これでは日本は国際社会の平和と安定に寄与することはむろん、国の安全を保っていくことも難しい。憲法守って国滅ぶである。
高山が被弾した海域の周辺では海上自衛隊の補給艦と護衛艦が多国籍海軍へ給油支援を行っている。普通の国の海軍なら、自国船舶が海賊に襲撃されたら、自衛権によって不法な暴力を撃退するが、海自はそうした行動を取れない。
それは、新テロ特別措置法が給油支援に限定しているだけでなく、不法な暴力を抑止する国内法規定がないうえ、普通の軍隊に付与される「平時の自衛権」が認められていないためだ。
日本は自衛権の発動に急迫不正の侵害などの厳格な要件を課している。このため海賊の攻撃に自衛権は適用されず、撃退は憲法解釈で禁止されている「武力行使との一体化」行為とみなされる。
≪自衛権がなぜ使えない≫
国連安保理は現在、海賊を領海内まで追跡、逮捕できる権限を付与する決議を準備しているが、日本はパトロールすら実施できないと弁明するのだろうか。
問題海域は日本の海上交通路(シーレーン)と重なる。日本の国益にかなう国際共同行動に日本がもし憲法を理由に参加しないなら、国際社会はどう受け止めるだろうか。国際社会との連携こそ、貿易立国・日本の基軸であり、その実現に総力を挙げるべきだ。
この国際社会の行動を国会はどの程度直視しているのだろう。政争に明け暮れているのが実態ではないか。憲法問題の調査、研究を行うために昨年8月、衆参両院に設置された憲法審査会がいまだに、定員や審議方法などを定める規程を決められないまま、開店休業なのは、その一例である。
この怠慢に民主党の責任は大きい。同党は国民投票法採決を与党が強引に進めたと批判、昨秋の執行部人事でも憲法調査会長を置くことなく、憲法問題に背を向けている。憲法審査会での憲法改正原案の起草・審査は現在凍結されているが、平成22年5月に解除される。それまでに国民の平和と安全をきちんと守れる国のありようを与野党で論じ合うのが、立法府の最低限の責務だろう。
≪タブーなく参院見直せ≫
衆参両院の意思が異なる「ねじれ」が日本を停滞させてもいる。この問題では国民の利益や国益を守るため、与野党の歩み寄りが必要不可欠だが、参院のあり方もタブーなく見直すべきである。
自民党が平成17年10月にまとめた新憲法草案や参院憲法調査会の報告書でも、参院は現状維持にとどまっている。参院見直しに参院側が反発したためである。
フランス革命の理論的指導者だったシェイエスは「第二院は何の役に立つのか。第一院と一致するなら無用、異なれば有害」と語ったが、日本における二院制のあるべき姿を憲法改正を含めて明確にしなくてはなるまい。
これまでの日本は憲法解釈に基づき、できることとできないことを仕分けしてきた。できることは超安全な地域での給油支援などだった。武力行使との一体化を避けるためだが、憲法第9条の「国際紛争を解決する手段としての武力行使」は2国間の戦い、いわば侵略戦争のための武力行使を意味している。国際的な警察行動や制裁はそこに含まれないと考える有力説もある。
海賊も撃退できない憲法解釈がいかにおかしなものか。自民党の新憲法草案で自衛軍保持と集団的自衛権の行使容認をまとめた福田康夫首相は熟知していよう。小沢一郎民主党代表も「普通の国」が持論だったはずだ。国民の常識が通用する憲法体制の構築に与野党は競い合ってほしい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20080503.html
朝日新聞社説 日本国憲法―現実を変える手段として
たった1年での、この変わりようはどうだろう。61回目の誕生日を迎えた日本国憲法をめぐる景色である。
昨年の憲法記念日のころを思い出してみる。安倍首相は、夏の参院選に向けて憲法改正を争点に掲げ、そのための手続き法である国民投票法を成立させた。集団的自衛権の政府解釈を見直す方向で、諮問機関も発足させた。
ところがいま、そうした前のめりとでも言うべき改憲気分は、すっかり鳴りを潜めている。福田首相は安倍時代の改憲路線とは一線を画し、集団的自衛権の見直しも棚上げにした。
世論も冷えている。改憲の旗振り役をつとめてきた読売新聞の調査では今年、93年以降の構図が逆転し、改憲反対が賛成を上回った。朝日新聞の調査でも、9条については改正賛成が23%に対して、反対は3倍近い66%だ。
90年代から政治やメディアが主導する形で改憲論が盛り上がった。だが、そもそも政治が取り組むべき課題を世論調査で聞くと、景気や年金など暮らしに直結する問題が上位に並び、改憲の優先順位は高くはなかった。イラクでの米国の失敗なども背景に、政治の熱が冷めれば、自然と関心も下がるということなのだろう。
むろん、政界再編などを通じて、9条改憲が再浮上する可能性は否定できない。ただ、今の世の中の流れをみる限りでは、一本調子の改憲論、とりわけ自衛隊を軍にすべきだといった主張が訴求力を失うのはあたり前なのかもしれない。
■豊かさの中の新貧困
9条をめぐってかまびすしい議論が交わされる陰で、実は憲法をめぐってもっと深刻な事態が進行していたことは見過ごされがちだった。
すさまじい勢いで進む経済のグローバル化や、インターネット、携帯電話の広がりは、日本の社会を大きく変容させた。従来の憲法論議が想像もしなかった新しい現実が、挑戦状を突きつけているのだ。
たとえば「ワーキングプア(働く貧困層)」という言葉に象徴される、新しい貧困の問題。
国境を超えた競争の激化で、企業は人件費の削減に走る。パートや派遣の非正規労働者が飛躍的に増え、いまや働く人の3分の1を占める。仕事があったりなかったりの不安定さと低賃金で、生活保護の対象になるような水準の収入しかない人たちが出てきた。
本人に問題があるケースもあろう。だが、人と人とのつながりが希薄になった現代社会では、個人は砂粒のようにバラバラになり、ふとしたはずみで貧困にすべり落ちると、はい上がるすべがない。
戦後の日本人は、豊かな社会をめざして懸命に働いてきた。ようやくその目標を達したかに思えたところで、実は袋の底に新しい穴が開いていた。そんな状況ではあるまいか。
東京でこの春、「反貧困フェスタ」という催しがあり、そこで貧困の実態を伝えるミュージカルが上演された。
狭苦しいインターネットカフェの場面から物語は始まる。カフェを寝場所にする若者たちが、かたかたとキーボードをたたきながらネットを通じて不安や体験を語り合う。
長時間労働で倒れた人、勤め先の倒産で給料未払いのまま職がなくなってしまった若者、日雇い派遣の暮らしから抜け出せない青年……。
最後に出演者たちが朗唱する。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。生存権をうたった憲法25条の条文だ。
憲法と現実との間にできてしまった深い溝を、彼らは体で感じているように見えた。
■「自由」は実現したか
民主主義の社会では、だれもが自分の思うことを言えなければならない。憲法はその自由を保障している。軍国主義の過去を持つ国として、ここはゆるがせにできないと、だれもが思っていることだろう。だが、この袋にも実は穴が開いているのではないか。そう感じさせる事件が続く。
名門ホテルが右翼団体からの妨害を恐れ、教職員組合への会場貸し出しをキャンセルした。それを違法とする裁判所の命令にも従わない。
中国人監督によるドキュメンタリー映画「靖国」は、政府が関与する団体が助成金を出したのを疑問視する国会議員の動きなどもあって、上映を取りやめる映画館が相次いだ。
インターネット社会が持つ匿名性は「両刃の剣」だ。多数の人々に個人が自由に発信できる世界を広げる一方で、無責任な書き込みによる中傷やいじめ、プライバシーの暴露が、逆に個人の自由と人権を抑圧する。
こうした新しい現実の中で、私たちは自由と権利を守る知恵や手段をまだ見いだしていない。
憲法で「全体の奉仕者」と位置づけられている公務員が、その通りに仕事をしているか。社会保険庁や防衛省で起きたことは何なのか。憲法の精神への裏切りではないのか。
憲法は国民の権利を定めた基本法だ。その重みをいま一度かみしめたい。人々の暮らしをどう守るのか。みなが縮こまらない社会にするにはどうしたらいいか。現実と憲法の溝の深さにたじろいではいけない。
憲法は現実を改革し、すみよい社会をつくる手段なのだ。その視点があってこそ、本物の憲法論議が生まれる。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20080503ddm005070099000c.html
毎日新聞 社説:憲法記念日 「ことなかれ」に決別を 生存権の侵害が進んでいる
あれほど盛んだった改憲論議が、今年はすっかりカゲをひそめてしまった。国民の関心は憲法よりも、暮らしに向かっている。
戦後最長の大型景気も天井を打って下り坂に転じた気配が濃厚である。ガソリンだけでなく、食品も値上げラッシュだ。
ところが、所得は一向に伸びない。老後を支える年金や医療保険改革は前進しない。暮らしの悪化の実感の前に、憲法問題は背後に追いやられてしまった。
しかしながら、実は今年ほど、憲法が切実な年もないのではないか。
右翼のいやがらせへの懸念を理由に、裁判所の決定を無視してかたくなに日教組の集会を拒んだ東京のホテル。国会議員の介入を機に映画館の上映中止が相次いだ映画「靖国」。
憲法の保障する集会の自由、表現の自由が脅かされている。「面倒は避けたい」と思うのは人情だ。しかし、このとめどもない「ことなかれ」の連鎖はいったいどうしたことか。意識して抵抗しないと基本的人権は守れない。私たちの現状は、やや無自覚に過ぎるように見える。
◇感度が鈍っている
NHKが5年ごとに「憲法上の権利だと思うもの」を調査している。驚いたことに「思っていることを世間に発表する」こと(表現の自由)を権利と認識するひとの割合が調査ごとに下がっている。73年は49%だったのが、03年は36%まで落ち込んだ。表現の自由に対する感度が鈍っているのが心配だ。
その意味で注目されるのが、イラクでの航空自衛隊の活動に対する名古屋高裁の違憲判決だ。
高裁は「バグダッドは戦闘地域」と認定し、空輸の法的根拠を否定した。対米協力を優先させ、憲法の制約をかいくぐり、曲芸のような論理で海外派遣を強行するやり方は限界に達している。そのことを明快に示す判決だった。
しかし、この判決の意義はそれにとどまらない。憲法の前文は「平和のうちに生存する権利」をうたっているが、それは単なる理念の表明ではない。侵害された場合は裁判所に救済を求める根拠になる法的な権利である。そのような憲法判断を司法として初めて示したのである。
ダイナミックにとらえ直された「生存権」。その視点から現状を見れば、違憲状態が疑われることばかりではないか。
4月から始まった「後期高齢者医療制度」は高齢の年金生活者に不評の極みである。無神経な「後期高齢者」という名称。保険料を年金から一方的に天引きされ、従来の保険料より高い人も多い。「平和のうちに生存する権利」の侵害と感じる人が少なくあるまい。
「憲法」と「現実」の懸隔が広がっている。働いても生活保護以下の所得しか得られないワーキングプアの問題など典型だ。年金を払い込みながら記録されていない「消えた年金」もそうであろう。「生存権」の侵害に監視を強める地道な努力が必要である。
その努力の中心になるべきは、言うまでもなく国会だが、野党はもとより、与党もひたすら「生活重視」を唱えている。むしろ「内向き」過ぎると心配したくなる。ところが「生活重視」で一致するのに、スムーズに動かない。いわゆる「ねじれ国会」の弊害である。
しかし、「ねじれ国会」の非効率性だけを言うのは一方的だ。「ねじれ」になる前の自民党はどうだったのか。強行採決を連発する多数の横暴そのものだったと言えるだろう。
「ねじれ」以降、自民党は話し合い路線の模索に転じ、福田康夫首相は道路特定財源の一般財源化を約束するに至った。「ねじれ」なしでは起こりえなかったことである。カラオケ機を買うなど、年金や道路財源のデタラメな運営も「ねじれ国会」の圧力があって明らかになったことだ。
◇ルールの整備急げ
私たちは「ねじれ国会」は、選挙で打開を図るのが基本だと主張している。選挙のマニフェストを発表する際、喫緊の重要課題について選挙結果に従うことを約束しておくのも一案だろう。こうしたルールの整備によって「ねじれ」を消化していくことが、民主政治を成熟させることにほかなるまい。
憲法が両院不一致の場合の打開策としている両院協議会は、いま、ほとんど機能していない。両院それぞれ議決した側から10人ずつ委員を選ぶ仕組みだから、打開案がまとまりにくい。委員選出の弾力化など、その活性化に早急に取り組んでもらいたい。
ただ「ねじれ」の有無にかかわらず、参院は「ミニ衆院」という批判を払拭(ふっしょく)する必要がある。明治から約120年の歴史を有する衆院と違い、参院は戦後改革で生まれた。憲法の精神の体現といってよい。参院はその自覚に立って独自性の確立を急ぐべきである。
憲法で保障された国民の権利は、沈黙では守れない。暮らしの劣化は生存権の侵害が進んでいるということだ。憲法記念日に当たって、読者とともに政治に行動を迫っていく決意を新たにしたい。
毎日新聞 2008年5月3日 東京朝刊
東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008050302008501.html
憲法記念日に考える 『なぜ?』を大切に
2008年5月3日
日本国憲法の規範としての力が弱まっています。現実を前に思考停止に陥ることなく、六十年前、廃虚の中で先人が掲げた高い志を再確認しましょう。
昨年七月、北九州市で独り暮らしの男性が孤独死しているのが発見されました。部屋にあった日記に生活の苦しさがつづられ、最後のページには「おにぎりが食べたい」と書いてありました。
男性はタクシー運転手をしていましたが肝臓の病気で働けなくなり、四月まで生活保護を受けていました。病気が少しよくなり、福祉事務所の強い指導で保護を辞退したものの働けず、にぎり飯を買うカネさえなかったようです。
忘れられた公平、平等
全国各地から生活に困っていても保護を受けられない、保護辞退を強要された、などの知らせが後を絶ちません。憲法第二五条には「すべて国民は、健康で文化的な生活を営む権利を有する」とあるのにどうしたことでしょう。
国が抱える膨大な借金、将来の社会を支える若者の減少など、日本は難局に直面しています。しかし、最大の要因は弱者に対する視線の変化でしょう。
行き過ぎた市場主義、能力主義が「富める者はますます富み、貧しい者はなかなか浮かび上がれない」社会を到来させました。小泉政権以来の諸改革がそれを助長し、「公平」「平等」「相互扶助」という憲法の精神を忘れさせ、第二五条は規範としての意味が薄れました。
リストラでよみがえった会社の陰には職を失った労働者がたくさんいます。「現代の奴隷労働」とさえ言われる悪条件で働くことを余儀なくされた非正規雇用の労働者が、企業に大きな利益をもたらしています。
年収二百万円に満たず、ワーキングプアと称される労働者は一千万人を超えると言われます。
黙殺された違憲判決
安い賃金、不安定な雇用で住居費が払えず、インターネットカフェや漫画喫茶に寝泊まりしている人が、昨年夏の厚生労働省調査で五千四百人もいました。これは推計で実際はもっと多そうです。
憲法には第二五条のほかに「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」(第二七条)という規定もあります。
「なのになぜ?」-ここにもそう問いたい現実があります。
「戦力は持たない」(第九条第二項)はずの国で、ミサイルを装備した巨船に漁船が衝突されて沈没しました。乗組員二人はいまだに行方が分かりません。「戦争はしない」(同条第一項)はずだった国の航空機がイラクに行き、武装した多国籍兵などを空輸しています。
市民の異議申し立てに対して、名古屋高裁は先月十七日の判決で「自衛隊のイラクでの活動は憲法違反」と断言しました。「国民には平和に生きる権利がある」との判断も示しました。
しかし、政府は判決を黙殺する構えで、自衛隊幹部の一人は人気お笑い芸人のセリフをまね「そんなのかんけえねえ」と言ってのけました。「判決は自衛隊の活動に影響を及ぼさない」と言いたかったのでしょうが、「憲法なんて関係ねえ」と聞こえました。
イラク派遣反対のビラを自衛隊官舎に配った東京都立川市の市民は住居侵入容疑で逮捕され、七十五日間も拘置されたすえに有罪とされました。団地の新聞受けにビラを静かに入れて回っただけなのに「他人の住居を侵し、私生活の平穏を害した」というのです。
ビラ配布は、組織、資力がなくても自分の見解を広く伝えることができる簡便な手段です。読みたくなければ捨てればいいだけでしょう。それが犯罪になるのなら憲法第二一条が保障する「表現の自由」は絵に描いたモチです。
これでは、民主主義にとって欠かせない自由な意見表明や討論が十分できません。
国民から集めた税金で職場にマッサージチェアを設置したり豪華旅行をするなど、「全体の奉仕者」(第一五条第二項)である公務員による私益優先のあれこれが次々明るみに出ました。
長い間に「主権在民」(前文)が無視されて、主権在官僚のようなシステムを組み上げられてしまったのです。
憲法は政府・公権力の勝手な振る舞いを抑え、私たちの自由と権利を守り幸福を実現する砦(とりで)です。
国民に砦を守る責任
憲法を尊重し擁護するのは公務員の義務(第九九条)です。国民には「自由と権利を不断の努力で保持する」責任(第一二条)、いわば砦を守る責任があります。
その責任を果たすために、一人ひとりが憲法と現実との関係に厳しく目を光らせ、「なぜ?」と問い続けたいものです。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/90699.html?_nva=24
北海道新聞 憲法記念日 平和に生きる権利 今こそ(5月3日)
昨年のいまごろは、安倍晋三政権下で改憲の手続きを定める国民投票法案が大きな議論になっていた。
いま、福田康夫首相が憲法に言及する場面はほとんど見られない。
ねじれ国会の下、年金や道路財源問題など早急に取り組まねばならない課題が山積しており、それどころではないというのが本音だろう。
衆参両院に設けられた憲法審査会は運営規定もまだ決まっていない。二〇一〇年に改憲発議は可能になるが、改憲の動きは表面的にはやや勢いが落ちてきたようにも見える。
日本国憲法が施行されてきょうで六十一年となる。憲法とは何か、私たちの暮らしにどうかかわるのか。この機に思いをめぐらせてみたい。
*軽視された違憲判断
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原理とする現憲法には人々の「戦争は二度といやだ」という強い願いが込められている。
なかでも前文と九条は世界に向けた平和と不戦の表明でもある。
その誓いを戦後、政府はないがしろにしてきたのではないか。そう問いかける司法判断が四月十七日、名古屋高裁で示された。
イラクに派遣された航空自衛隊の活動は武装兵士を戦闘地域に輸送するものであり、憲法九条が禁じる武力行使にあたると指摘したのだ。
自衛隊を海外に送り出すために憲法を拡大解釈してきた政府の姿勢を厳しく戒めるものとなった。
政府は、判決をことさら軽視しようとしている。隊員の心境について航空幕僚長はお笑いタレントのせりふを引用し、「そんなの関係ねぇという状況だ」と言った。
憲法は国の最高法規だ。九九条は大臣や国会議員、公務員らに憲法の尊重と擁護義務を負わせている。
にもかかわらず政府が違憲判断を真摯(しんし)に受け止めず、文民統制を崩しかねない制服組の発言を放置する。法治国家としてどうなのだろう。
政府はイラク派遣を人道支援、国際貢献と言ってきた。しかし、政府がいまなすべきことははっきりしている。イラクから撤退し、憲法にのっとって武力に頼らない国際貢献のあり方を考え直すことではないか。
*生存権が脅かされる
憲法の前文に「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免(まぬ)かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。
その「平和に生きる権利」がいま脅かされ、侵害されてはいまいか。
三十一歳のフリーターが月刊誌に発表した「希望は戦争」という論文が昨年、反響を呼んだ。
戦争は社会の閉塞(へいそく)状態を打破してくれる。生活苦の窮状から脱し、一人前の人間としての尊厳を得られる可能性をもたらしてくれる。戦争は悲惨でもなくむしろチャンスだ-。
慄然(りつぜん)とさせられる物言いだが、こうした発言が出てきた社会のあり様(よう)を深刻に考えなければなるまい。
米国では実際に、貧しい若者たちが生活の保障を求めて軍に志願し、イラクへと送られている。
憲法二五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とうたっている。
しかし、ワーキングプアと呼ばれる新たな貧困層が増え続けている。年収二百四十万円以下が一千万人を超え、百万円以下も珍しくない。
後期高齢者医療制度にお年寄りから悲鳴が上がっている。社会保険庁のずさんな管理で、わずかな年金さえ受け取れない人がいる。生活保護世帯は全国で百万を超えた。
二五条は二項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている。それを実践し、憲法を暮らしに定着させるのは国の責務なのだ。
*軍事に頼らぬ平和を
北海道新聞社が四月に行った世論調査によると、七割の人たちが憲法を改めるべきだと答えている。
「時代の変化に応じた方がよい」との理由がもっとも多かった。環境権やプライバシー権、知る権利といった、新たな権利の保障などが念頭にあるのだろうか。
ただ、これらの人権は現憲法でも保障されているとする憲法学者は多い。確かに憲法は「不磨の大典」ではない。国民的論議を広げていくことは必要だろう。
九条については改憲容認の人たちでも、六割近くが変更しなくていいと答えた。逆に変更して戦力保持を明記するべきだとした人は大幅に減って、三割にとどまった。
自民党の新憲法草案は、現憲法前文の「平和のうちに生存する国民の権利」を捨て、戦力不保持と、交戦権の否認を定めた九条二項を削除し自衛軍の創設を盛り込んでいる。
戦後、海外で一度も武力行使をせず、血を流さなかった日本の姿を大きく変えることになる。
イラクの惨状は、武力で平和はつくれないという当たり前のことを見せつけた。軍事力に頼らず平和を目指そうとの流れが世界で生まれつつある。平和憲法を持つ日本がその先頭に立ってもいいのではないか。
http://www.kanaloco.jp/editorial/entry/entryxiiimay08051/
神奈川新聞 人権擁護し理想の追求を
「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」-。前文で国際社会にこう誓った日本国憲法が、きょう施行六十一年を迎えた。
焦土から復興に立ち上がった先達の努力によって、現在の日本は自由な民主主義諸国の一角を占めるに至った。先輩たちへの感謝を忘れてはなるまい。ところが、最近、この成果を土台から腐食させるような問題が続いている。
第一が、ドキュメンタリー映画「靖国」の上映中止、日教組集会の会場使用拒否などで表面化した表現の自由、集会の自由の危機である。一部の映画館、ホテルが右翼団体の街頭宣伝活動などに萎(い)縮(しゅく)した結果、自由が封じられた。嫌がらせや不法行為には警察を含めて行政、社会が毅(き)然(ぜん)とした態度を取るべきだ。ところが「靖国」の例では、騒ぎの発端をつくったのは与党の国会議員だった。
そこで思い出されるのが、反戦ビラ配布が狙い撃ち同然に検挙された立川反戦ビラ事件だ。政府に批判的な表現を抑圧し、萎縮させるような権力の動きがあった。
表現の自由は民主主義の土台である。もし萎縮の連鎖や権力の暴走が続くようなら、日本は戦前のような「物言えぬ社会」「専制と隷従、圧迫と偏狭」の社会に戻ってしまうだろう。国民一人一人が、表現の自由を守り抜く決意を持たなければならない。
第二は、貧困、格差の問題だ。憲法二五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、生存権を定めた。高齢者や障害者の福祉が切り捨てられ、汗水流して働いても生活保護水準、貧困ラインを抜け出せない人々がいるのは、大きな人権侵害であると指摘したい。
世界を見渡せば、医療福祉が整備され、格差の小さな国は、社会経済も安定し、国民の幸福度も高い。日本がこのまま福祉や年金、医療を崩壊させ、働く貧困層を拡大させたらどうなるか。社会はすさみ、経済の底力も失われるだろう。選ぶべき道は明らかだ。
最後に、平和主義の問題だ。名古屋高裁は先月、航空自衛隊によるバグダッドへの多国籍軍武装兵員輸送を憲法九条違反とした。しかし、政府は判決を無視したままだ。なし崩し的な自衛隊の運用、平和主義からの逸脱をこのまま進めていいのだろうか。あすから三日間、千葉市で「9条世界会議」が開催される。憲法九条の世界史的な意義を再確認したい。
日本人は今、目先の利益や安心に汲々(きゅうきゅう)としているように見える。果敢に難問に挑み、世界に理想や模範を示すという気概を失ってはいないか。日本国憲法は人類の経験と知恵、理想の集積である。この憲法から勇気を得て「名誉ある地位」への努力を進めたい。
5月3日、産経紙は中曽根康弘にインタビューした。安倍内閣が倒れてから後の改憲派の焦りと、飽くなき改憲への動機が読み取れる。安倍の退陣がいかに彼らにとって痛手であったか、がよくわかると同時に、決してあきらめていないことが読み取れる。興味深い記事である。心しておこうではないか。(高田)
中曽根康弘元首相インタビュー 早期に憲法審査会を始動せよ
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805022104011-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805022104011-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805022104011-n3.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805022104011-n4.htm
超党派の国会議員らでつくる「新憲法制定議員同盟」の会長を務める中曽根康弘元首相(89)に、始動の見通しが立っていない憲法審査会やねじれ国会など憲法問題についてインタビューした。(聞き手 榊原智)
-昨年の今ごろは国民投票法の制定が大詰めを迎え憲法問題が盛んに議論されていたが、今は政治の争点から外れている。憲法論議をどう展望するか
「安倍晋三君が首相になって憲法改正と教育改革という保守本流の主義主張を表に出したが、彼は昨年7月の参院選で挫折し、心の傷を負った。福田康夫首相は施政方針演説で憲法審査会に触れたが、現実問題の処理に忙しい。安倍内閣が続いていれば憲法論議の方へ動いたろうが、福田君の時代は国会対策と外交問題で余裕がない。福田君の次だね。特に次の解散総選挙で当選する新しい議員たちは、憲法問題を国家構造の問題として真剣に考え、取り上げるだろう」
-民主党の小沢一郎代表は福田首相と同様、憲法問題に優先順位を与えていないようだ
「小沢君は以前は、憲法改正にはっきりした考えを持ち熱心だった。だが、民主党の内部は旧社会党系の人もいて複雑だから、党の代表として慎重になっている。憲法改正の風が強く吹いているなら彼もその方向に党を引っ張っていけるが、今は解散総選挙の対策が第一になっている」
-国民投票法によつて昨年8月に衆参両院の「憲法審査会」が法的に設置されたが、「審査会規程」の制定が見送られていることから実際には始動していない
「国民投票法の成立は画期的で、憲法改正への基礎工事ができたと思った。だが、審査会規程の制定が政局の具合で、今にいたるまで放棄されているのは残念だ」
-国会が法律を無視している。審査会は動き出す気配がない
「早くても7月の北海道洞爺湖サミット以降だろう。衆院議員の残り任期が約1年になる。来年の9月までが衆院議員の任期だが、それまでには与野党の関係や政局に変化もあり得る。そういう変化の時に政界の指導者たちがどんな政治見識を持つかにかかってくる。民主党の諸君と話してみると、審査会規程は早晩作る用意があるという心境にあるようだ。多少時間を待てば審査会規程(の制定)には乗ってくると期待している」
-与野党の激しい政争が続いている
「政党間の交渉で憲法問題をどう国会で審議するか、具体的には憲法審査会の早期開会の合意を作るのが賢明だろう。憲法問題が本格的に動くのは解散総選挙後になるのではないか。民主党にも憲法問題を重視する人はかなり多い。憲法問題の結論を作っていく段階に必ず入っていける。解散総選挙後の新しい政局のもと、戦後日本の政治の歩み、国家構造あるいは国家機能を再点検する観点から、(政界で)憲法改正作業が出てくる」
-衆参で与野党がそれぞれ多数を占める「ねじれ国会」をどうみる
「不便を感じるが、世界各国の議会政治全般からみれば、与党がいつも多数を占め法案がスムーズに成立するわけではないということだ。今まで自民党は安心しすぎていた。昨年の参院選後、与野党の首脳部間で話し合いの体系、原則を話し合っておくべきだった。今はノールールの乱戦になっている。これは失敗だ」
-「大連立」や「政界再編」はあるだろうか
「当面はないだろう。小沢君も野党の諸君もそういう選択はしにくい。衆院選が遅くとも1年数カ月後にあるのだから。解散総選挙後は状況次第だ」
-平成17年の自民党新憲法草案は、当時の参院自民党の反発から現憲法の国会条項の改正に踏み込まなかった。ねじれ国会を踏まえ、国会や衆参両院の関係を見直すべきか
「当然、議論しなくてはならない。ねじれの問題と絡んでいる。自民党の新憲法草案は立党50年のお祝いを前に急いで作り上げた第1次草案だ。第2次草案作りにいよいよ取りかかるべきだ。そこでは、参院の権能が現状でいいのかどうかが非常に大きな課題となる」
-2院制がいいか、1院制がいいか
「衆院議員と同じような方法で参院議員が選ばれ、参院は衆院と同格で肩を張って対抗する存在になっている。このような第2院は世界でも非常に少ない。これは見直すべきだ。その代わり、新しい参院は選出方法を変え、人事や決算、会計検査などで衆院にない特別な権限が与えられるべきだ」
-そもそもなぜ憲法改正が必要か
「現憲法は占領下に作られたが、自由、民主主義、平和の面で特段の長所をもつ。だが戦後60年の経験からみても重大な欠陥がある。憲法9条はもちろん、前文、教育、新しい人権概念、議会や内閣制度、環境などといった点の改正を検討すべきだろう」
-憲法改正を訴える政治家の声が小さい
「欠陥のある憲法を改めるのは国民と政治家の当然の責任だ。そのことを政治家は国民によく説明しなければいけない。一般国民は憲法をじっくり読む暇はない。政治指導者は国のあり方についての自己の信念を国民に訴え、国の歩みを正しい方向へ持っていく責任を負っている。だから憲法の長所と同時に欠陥を国民に指摘して、是正しようと説得すべきだ。あるいは政治勢力を形成して運動を起こすべきだ。だから私は議員同盟の会長になった」
-韓国の李明博大統領が、日本に永住外国人への地方参政権付与を求めている
「付与の必要はないと思う。憲法上の日本国民という概念には過去、現在、そして将来生まれてくる国民が含まれる。(地方選挙権も含む参政権付与の条件であるべき)国籍は非常に貴重なポジションだ。帰化すれば選挙権は即座に得られる」
本日の読売と赤旗紙の記事である。昨1日、改憲議員同盟が集会を開いた。国会議員51人をはじめ、1000人ほどの集会だったようである。朝日紙などの記事によると中曽根会長は「戦後生まれた憲法を正しい憲法に作り直して、子孫に対する責任を果たしたい。これを実現するまでは、命の限りを尽くして頑張っていく」と発言。安倍前首相も「憲法を自分たちの手で書いていく決意こそ、新しい時代を切り開いていく魂につながっていく」とのべたという。民主党鳩山幹事長の代理として長嶋昭久副幹事長は「民主党も憲法改正を党是とし、創憲を掲げている。この大会を機に憲法審査会を動かしていこうと言うことだ」と発言して満場の拍手を浴びた。(高田)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080501-OYT1T00697.htm
「憲法審査会の早期始動を」超党派議員ら憲法の4目標提示
超党派の国会議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根元首相)は1日、東京・永田町の憲政記念館で「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、衆参両院に設置された憲法審査会を早期に始動させ、憲法改正論議を前進させるよう求める決議を採択した。
決議では、国会の憲法審査会が昨年8月の設置以来、野党側の反対で一度も開かれていないことを踏まえ、早期の開催を「強く願う」とした。また、新たな憲法のあり方について、〈1〉日本の歴史・文化・伝統の香り高い憲法〈2〉自由・民主・人権・平和・国際協調を基本とする〈3〉国際平和を願い、他国と共にその実現のため協力し合うことを誓う〈4〉自然との共生を信条に、美しく豊かな地球環境をまもる――の四つの目標を掲げた。
大会で、中曽根氏は「一意専心、不惑の信念を持って、戦後に生まれた憲法を正しい憲法に作り直し、責任を果たしたい。今の憲法体制、政治体制では、日本の地位が低下するのは必至だ」と訴えた。
自民党の伊吹幹事長、安倍前首相、民主党の長島昭久衆院議員、公明党の白浜一良・党憲法調査会長らのほか、政府から町村官房長官が出席した。
(2008年5月1日22時42分 読売新聞)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-05-02/2008050202_02_0.html
憲法審査会の始動要求
自・民・公議員ら改憲推進大会
自民、民主、公明、国民新各党などの改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)が主催する「新しい憲法を制定する推進大会」が一日、国会の憲政記念館で行われ、国会議員五十一人を含め、自民党地方関係者、日本経団連や日本商工会議所などの財界関係者ら千人が参加しました。
三月の総会で、民主党幹部を役員にすえるなど新体制とし、改憲世論を盛り上げる「国民運動」の契機にしようと計画されたもので、大会では、改憲原案の審査権をもつ憲法審査会の始動と改憲論議の再開を求める決議を採択しました。
自民党の伊吹文明幹事長は、あいさつで「変化に対応した憲法をつくるのが党是」と表明。民主党からは、鳩山由紀夫幹事長の代理として長島昭久副幹事長が登壇し、「昨日は敵味方に分かれて国会で対決したが、民主党も憲法改正を党是とし『創憲』をかかげている。この大会を機に憲法審査会を動かしていこうということだ」と述べました。公明党の白浜一良憲法調査会長、国民新党の亀井久興幹事長があいさつしました。
「福田総理の名代」と紹介された町村信孝官房長官は「憲法審査会がせっかくできているのに、いまだに議論が一度も行われていないのは国会の怠慢」などと攻撃しました。
自民党地方組織の代表が「地方にもこの声を広げ国民運動にする」と表明しました。
憲法問題で奮闘する法学館のサイトに掲載された山内敏弘さんの論文である。いつもながら、鋭く、沈着な分析だと思う。一読をおすすめする。(高田)
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20080421.html
最近の改憲動向について
2008年4月21日
山内敏弘さん(龍谷大学法科大学院教授)
今年もまた、憲法記念日の5月3日が近づいてきた。今年の特徴は、昨年の5月3日と比較して、明文改憲の主張が比較的弱くなっているということである。その直接的な背景にあるのは、いうまでもなく、明文改憲論者であった安倍首相が昨年7月の参議院選挙で敗北して退陣して、代わって福田内閣が登場し、福田首相は明文改憲をあからさまにいうことを差し控えているという政治状況である。
ちなみに、この4月8日に読売新聞は、同社がこの3月に実施した憲法に関する全国世論調査の結果を掲載した。それによると、今の憲法を改正する方がよいと思う人は42.5%、改正しない方がよいと思う人は43.1%になったという。同社が従来実施してきた憲法に関する世論調査では1993年以来一貫して改憲派が改憲不要派を上回ってきたが、今回の調査はその従来の傾向を逆転させるものとなったのである。憲法9条についても、この調査によると、9条1項を改正する必要があると思う人は12.5%、その必要がないと思う人は81.6%となっており(答えない人が5.9%)、また、9条2項については、改正する必要があると思う人は36.8%、その必要がないと思う人は54.5%(答えない人が8.6%)であるという。改憲論議の最大の争点である9条2項についても、改憲論よりも改憲不要論が多数を占めているのである。
このような世論動向の背景要因について、読売新聞の社説は、「最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にある」として、福田首相が改憲問題についてほとんど触れなくなったことや民主党が改憲問題に正面から取り組もうとしない姿勢をあげている。そのこと自体は間違っていないが、問題は、どうして安倍内閣に代わって登場した福田内閣が明文改憲をあまり言わなくなったのか、また民主党が改憲問題に正面から取り組もうとしないのかである。そのことを考える場合に想起されるのは、1960年の国民的な安保反対闘争に直面して改憲派の岸内閣が安保改定は強行したが、その直後に辞職して、代わって登場した池田内閣は「所得倍増政策」を掲げて、明文改憲は言わなくなり、いわゆる解釈改憲論路線をとることになったことである。今回、明文改憲を掲げた安倍内閣に不信任を突きつけたのは、安保闘争のような国民的運動ではなかったが、しかし、昨年の参議院選挙に示された国民世論であったと思われる。
もちろん、選挙では、改憲問題だけが争点となっていたわけではない。しかし、安倍内閣が憲法改正国民投票法の制定など、明文改憲路線を突き進んできたことに対して少なからざる国民が危惧の念をもち、それが投票行動に少なからず反映されたことは否定できないであろう。しかも、そのこととも関連するが、この間、明文改憲の動向を憂える多くの市民が全国各地で改憲反対の運動を繰り広げてきたということである。その一つが、大江健三郎氏や加藤周一氏などが中心となってつくった「九条の会」の運動であり、この運動は全国に草の根的に広がり、現在では6000以上の「九条の会」ができているという。この運動はマスコミではあまり大きく取り上げられていないが、しかし、上記の読売新聞社の世論調査にも反映しているであろうことは、この3月に中曽根康弘氏などがつくっている「新憲法制定議員連盟」がその総会で「九条の会」に対抗するためには改憲のための「拠点づくり」が必要性であると説いたことにも示されている。
また、9条改憲論が後退したことの背景には、おそらくは、この間の一連の防衛省・自衛隊の不祥事も一定程度影響していると思われる。昨年に発生した防衛省の最大の不祥事は、いうまでもなく「防衛省(庁)の天皇」とも言われた守屋前防衛事務次官の収賄事件であった。守屋前事務次官は在任中に軍需産業の専門商社である「山田洋行」の元専務から300回以上にわたって接待ゴルフを受けていたこと、それと見返りにするかのように「山田洋行」は防衛省(庁)から総額174億円もの受注を受けていたことなどが判明したのである。防衛省(庁)をめぐっては、このように「官」と「財」の不正な癒着のみならず、「政」との癒着も問題となったのである。
さらに、今年2月に起きたのは、ハワイでのMD(ミサイル防衛)訓練の帰路にあったイージス艦「あたご」(一万トン)が千葉県・野島崎沖で漁船「清徳丸」(七・三トン)と衝突して、「清徳丸」を真っ二つに切断して沈没させて、乗組員の吉清治夫・哲大の両氏を行方不明にさせたという事件である。この事件の全貌はいまなお明らかにされていないが、しかし、この事件は、かつて20年前の1988年に潜水艦「なだしお」が「第一富士丸」と衝突して30名の乗客を死亡させた事故の教訓を自衛隊がなんら学んでいないことを示すとともに、自衛隊の体質がどのようなものであるかをも示すものとなっているように思われる。かつての「なだしお」事件の場合もそうであったが、今回の「イージス艦」事件でも、防衛省の説明は二転三転して、事実を正確かつ迅速に国民の前に明らかにしようとしない防衛省の秘密主義的な体質が明らかになった。さらに、明らかになったのは、自衛隊は真剣に国民の生命や安全の確保を考えているわけではないということである。日本近海で多数の漁船が航行していることは誰れでも知っているにもかかわらず、「イージス鑑」は衝突直前まで「自動操舵」を続けていたことや、「漁船の方がよけてくれる」と考えて、海上衝突予防法の規定をも無視して直進したことなどに、自衛隊が国民の生命や安全を真剣には考えていないことが端的に示されている。
このように重大な不祥事が防衛省や自衛隊に起きていることを目の当たりにすれば、9条を改憲して防衛省・自衛隊にさらに大きな力を付与することに多くの人々が警戒心を抱いたとしてもなんら不思議ではない。読売新聞の前記社説は、世論動向の背景にあるこのような要因については十分に思いを致していないようにみえる。
このように明文改憲を支持する世論が減少したことは積極的に評価されるべきことであるが、しかし、同時に見過ごしてはならないのは、岸内閣の後に池田内閣が解釈改憲路線をとったと同様に、福田内閣も解釈改憲路線を推進しようとしているということである。しかも、ある意味では究極の解釈改憲路線を推進しようとしているのである。福田首相は、今年1月の施政方針演説で自衛隊の海外派兵のためのいわゆる恒久法(一般法)の制定への強い意欲を示したのである。最近の新聞報道によれば、自民党は、恒久法制定に向けて「国際平和協力活動の一般法に関するプロジェクトチーム」の初会合を開いたという。同チームの座長の山崎拓氏は、5月の連休明けには活動を本格化して、今国会中にも法案を上程することを目指しているという。見過ごすことができない重大な動向と思われる。自民党が現在考えている恒久法の概略は、(1)国連決議などがなくても、国際社会の要請ということで自衛隊の海外出動を可能とする、(2)しかも、自衛隊の海外出動については、この一般法があれば、政府の判断でいつでも、どこにでも出動することができて、いちいち国会の事前承認は必要としない、(3)武器使用についても、正当防衛の場合のみならず、「任務遂行のため」に必要な場合にも認められるなどである。このような法律がかりに制定されたならば、従来政府が言ってきた専守防衛や集団的自衛権行使の禁止などは事実上棚上げにされて、自衛隊は海外でのさまざまな武力紛争に本格的に介入するであろうし、しかも国会によるシビリアンコントロールも形骸化することは必至であろう。究極の解釈改憲と言わざるを得ない所以である。
憲法施行以来61年を経過しようとしている今日、明文改憲論がトーンダウンしていること自体は歓迎すべきであるが、その一方でこのような解釈改憲の動きがあることについても、十分に警戒することが必要であろう。それと同時に、明文改憲が現在トーンダウンしているといっても、護憲運動が少しでも手を緩めれば、政府自民党はすぐにでもまた明文改憲論を鮮明に打ち出すであろうことにも留意することが必要であろう。おりしも、この5月4日から千葉の幕張メッセなどで、「九条世界会議」が「世界は九条をえらび始めた」というスローガンを掲げて開催される。ノーベル平和賞受賞者のマイレッド・マグワイア氏をはじめとして海外からも多数の人たちが参加する予定である。私もこの会議に参加して、憲法九条の世界的意義を改めて勉強したいと思っている。
(2008年4月16日記)
今回の読売の憲法世論調査は各方面の注目を集めている。同日の(8日の)読売の社説を掲載し忘れたので、遅ればせながら掲載する。(高田)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080407-OYT1T00791.htm
憲法世論調査 改正論を冷やす政治の混迷(4月8日付・読売社説)
日本政治の混迷が、憲法改正の世論を冷やしているのだろう。
読売新聞の世論調査で、憲法を「改正する方がよい」と思う改正派が42・5%へ減少した。「改正しない方がよい」という非改正派は、43・1%になった。
1993年調査以来、改正派が非改正派を常に上回ってきた。わずかな差だが、今回逆転した。改正派は、4年連続の減少だ。
最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にあるだろう。
昨年5月、憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立した。だが、それに基づき設置された憲法審査会が、いまだ始動していない。
憲法改正に積極姿勢をみせていた安倍前首相が、昨夏の参院選での自民党惨敗のあと、突然辞任した。後継の福田首相は、打って変わって、憲法改正問題には、ほとんど触れなくなった。
今回、自民党支持層のうち改正派は47%と、98年以降では初めて、5割を切った。衆参ねじれ国会の下、憲法改正論議の進展は困難、という判断と、憲法改正への首相のメッセージの乏しさが、影響しているのではないか。
民主党は、参院選を前に、与党との対決色を出す思惑から、国民投票法に反対した。党内にある憲法改正慎重論や、「護憲」を掲げる社民党との選挙協力などへの配慮もあった。
民主党支持層の改正派は、2005年には67%に達し、自民党支持層の64%を上回っていた。それが今回は41%に減った。
憲法改正問題に正面から取り組もうとしない民主党の姿勢が、支持層の改正派減少をもたらす一因になっていないか。
先の臨時国会では、インド洋での海上自衛隊の給油活動再開や、自衛隊の国際貢献のあり方が焦点になった。だが、前防衛次官の汚職事件や、海自の燃料の対イラク作戦転用問題などが重なり、憲法論議は深まらなかった。
今回、こうした自衛隊の海外派遣についてのルールを定める「恒久法」についての質問では、「必要だと思う」が46%で、「思わない」42%を上回っている。
「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」――。改正派があげた改正理由のトップは、これまでと変わっていない。これから憲法論議を「活発化させるべきだ」と思う人も、7割にのぼる。
安全保障や環境問題など、さまざまな観点から憲法を議論しあうことが求められている。
(2008年4月8日01時30分 読売新聞)
日本青年会議所の小田会頭は改憲議員同盟総会に際して、これと積極的に連携し、憲法審査会の早期立ち上げをめざして、全国各地でタウンミーティングを開くなど、活動を展開していく会頭声明を出した。注意を要する。(高田)
http://www.jaycee.or.jp/message_13.html
新憲法制定議員同盟総会開催に対して
超党派の国会議員で構成される「新憲法制定議員同盟」の総会が昨日開催され、 衆議院では野党第一党、そして参議院では第一党の地位を占める民主党の国会議員も同組織の役員に就任し、新役員体制が発足することが確定しました。 これにより現在全く機能していない両院の憲法審査会が、本来の機能を発揮し始める可能性が高まることとなりました。 また同会議には、日本JCより常任理事・早山康弘君と憲法改正運動実践委員会・説田和彦委員長もオブザーブとして同席いたしました。 その会議において、会長代理の中山太郎代議士より、「JCからも国会に憲法審査会の早期立ち上げに向けた請願書を提出いただいており、 また、JCのような政治家ではない若い世代の皆様とも連携し憲法改正について考えていかなければならない。」との発言もいただきました。
昨年の国民投票法成立と、2010年からの施行により憲法改正が法的に可能になりました。 これを受け憲法のあり方に対する幅広く活発な議論を行う目的で、本年連携推進運動のひとつとして、 地区・ブロック協議会及び関心があるLOMとの「国民参加型憲法タウンミーティング」の全国的な開催を予定している我々日本JCにとって、この動向は望ましい進展であるといえます。 昨日の総会開催時において、同議員同盟への参加議員数は191人に上り、その内訳は自民党167人、公明党10人、民主党14人、国民新党3人、その他・無所属6人となっており、さらに元職議員が48人参加されています(合計239名)。 (なお、同議員同盟への署名に賛同された議員数は、自民党282人、公明党35人、民主党26人、無所属10人の353人です。)
日本JCの担当役員(中島副会頭、早山常任理事、説田憲法改正運動実践委員長、そして私)は上記にあるように1月31日衆議院議員会館を訪問し、同院議長に対し「憲法審査会規定の制定に関する国会請願書」を提出してきました。 憲法審査会は、昨年5月に成立、公布された「日本国憲法の改正手続きに関する法律」にて「(衆参)各議院に憲法審査会を設ける」旨が規定され、「公布の日以後初めて召集される国会の召集の日から施行する」とされています。 しかしながら、昨年8月召集の国会に設置されて以来一度も開催されていないのが現状です。 これは国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会のあり方として、また法治国家として看過できるものではなく、直ちに対処がなされなければなりません。 特に現憲法96条で定められるように改正の発議は国会で行われるわけですから、その国会において十分な議論が行われるべく審査会の早急な設置に議論の余地はないといえます。
また市民意識の変革を通じて社会の変革を目指し多様な運動に取り組むJCが、これに対し果たすべき役割は、市民が主権者としての主体性を持ち、日本という国と「日本人として何を大切にするのかという価値観の集合体」である日本国憲法のあり方を考え、 議論を行う機会を提供することで、市民一人ひとりが国家観を確立出来るようにすることだと信じています。 日本JCも2005年以来、憲法草案JC版の作成、改定を行い世間に憲法のあり方を問い続けてきました。 今年は、昨年の国民投票法の成立を受けて、より具体的な議論を幅広く行うべくタウンミーティングなどの計画を進めています。 これにより、憲法は国民生活に深く根ざしたものであり、国や社会のあり方に対し深く関連することを市民一人ひとりが自覚し、国づくりに積極的に参画することの重要性を広く喧伝してまいりたいと思います。 そのために、全国711の地域で、市民と地域社会の開発に献身的に取り組んでいる4万人のメンバー一人ひとりの深い理解と参画が必要とされています。
この国とこの国の根幹をなす憲法は、人任せではなく、市民一人ひとりが自分自身の事として、自らの手で作り上げるのだという気概をJCから醸成して行こうではありませんか。
社団法人日本青年会議所
会頭 小田 與之彦
本日発表された「読売新聞」の世論調査で、画期的な結果が出た。16年ぶりに、改憲反対派が改憲賛成派を上回ったのである。 改憲賛成42・5、反対43・1%である。改正反対の理由の最大は「世界に誇る平和憲法だから」が52・5%を占めた。
9条を今後どうするかについては「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」24%、「これまで通り、解釈や運用で対応する」36%で、計60%が改憲に反対か消極的、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」は31%、とほぼダブルスコアとなった。改憲反対派が上昇する傾向は2004年以来、顕著であったが、ここにきて、憲法全般、9条とも、改憲派を追い越したのである。これは「九条の会」をはじめ、この間の改憲に反対するさまざまな人々の運動の成果である。
なお、自衛隊の海外派兵恒久法を必要と思う人は46%で、「そうは思わない」の42%を上回ったことにみられる傾向の打破が、改憲反対運動を進めてきた私たちの今後の課題である。9条支持の世論を基盤にして、海外派兵恒久法が9条を破壊する法律であることの世論喚起が求められている。
なお、本調査の内容の詳細は同紙12~13面に掲載されている。(高田)。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080408-OYT1T00041.htm?from=main1
憲法改正「反対」43%、「賛成」を上回る…読売世論調査
世論調査・支持率
読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、今の憲法を改正する方がよいと思う人は42・5%、改正しない方がよいと思う人は43・1%で、わずかながら非改正派が改正派を上回った。
ただ、各政党が憲法議論をさらに活発化させるべきだと思う人は71%に上り、改めたり加えたりした方が良いと思う条文を挙げた人も7割を超えた。施行61年を迎える憲法に、時代にそぐわない部分が増えているとの認識は根強いようだ。
調査は3月15、16日に年間連続調査「日本人」の一環として行った。
1981年から実施している「憲法」世論調査では93年以降、一貫して改正派が非改正派を上回っていた。しかし、今回は改正派が昨年より3・7ポイント減る一方、非改正派が4・0ポイント増え、これが逆転した。憲法改正に強い意欲を示した安倍前首相の突然の退陣や、ねじれ国会での政治の停滞へのいらだちなどが影響したと見られる。
改正派にその理由を複数回答で聞いたところ、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」の45%が最も多かった。非改正派では「世界に誇る平和憲法だから」が53%で最多だった。
憲法で関心のある点(複数回答)では「戦争放棄、自衛隊の問題」が47%で7年連続で最多となった。昨年との比較では「裁判の問題」が20%(昨年15%)に増え、裁判員制度への関心の高まりをうかがわせた。
改めたり加えたりした方がよいと思う憲法の条文(複数回答)としては、〈1〉自衛のための軍隊保持27%〈2〉良好な環境で生活する権利25%〈3〉国と地方の役割22%――を挙げた人が多く、「特にない」は24%だった。
自衛隊の海外派遣全般に関する原則を定める恒久法を必要と思う人は46%で、「そうは思わない」42%を上回った。9条を今後どうするかについては「これまで通り、解釈や運用で対応する」36%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」31%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」24%となった。
(2008年4月8日01時08分 読売新聞)
ウルトラ改憲派の動向を報じる赤旗新聞の記事。「二正面作戦」?というか、「二重の作戦」とでもいうべきところか。(高田)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-07/2008040702_03_0.html
改憲派が“二正面作戦”
国会の審議を促進
「九条の会」に対抗
五月の憲法記念日の前後に大会を予定している改憲推進各派は、国会で改憲案を審議するための憲法審査会の始動を狙う一方、改憲世論を喚起する二正面作戦で新たな展開をはかる構えです。
来月、初の大会
自民党、民主党、公明党、国民新党の衆参国会議員百九十一人(三月四日現在)が加わる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は五月一日に、初めて議員中心による「新しい憲法を制定する推進大会」を東京都内で開きます。
大会のスローガンは、「歴史・文化・伝統の香り高い憲法を」「国際平和を願い、他国とともにその実現のため協力し合うことを誓う憲法を」など。国家主義と海外で戦争ができる国づくりを可能にする改憲方向を打ち出しています。
大会には日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界三団体の代表が出席を予定しています。財界団体がこぞって改憲勢力を支援し、バックアップする姿勢を示すことになります。
一方、昨年まで議員同盟と大会を共催してきた「新しい憲法をつくる国民会議」(堀渉理事長)は五月三日に一般を対象にした独自の「改憲国民大会」を開きます。
別々に大会を開くのには理由があります。
同国民会議役員は「役割分担といっていい。議員同盟は国会議員を中心に国会の憲法審査会で調査審議を進める。運動団体のわれわれは『九条の会』などに対抗する改憲世論を広げる草の根の活動に取り組む。それぞれの立場から大会を開くことにした」と述べています。
世論に対抗意識
草の根レベルで広がる「九条の会」の活動に対抗し、改憲世論を盛り上げる狙いを隠しません。
同国民会議の取り組みは、タイアップする新憲法制定議員同盟の「『九条の会』に対抗していくのにどうしたらいいか、今後の活動の大きな焦点になる」(三月四日、同議員同盟緊急総会での愛知和男幹事長発言)との方針を受けたものです。
日本会議など「靖国」派が中心の改憲団体・「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間憲法臨調)も憲法記念日当日に発表する緊急提言「国会は『憲法審査会』での改憲論議を急げ!」をテーマに自民党議員などが参加する憲法フォーラムを開きます。
近年の世論調査では九条の改憲は「必要」とする回答が漸減傾向にあります。改憲を政権の正面課題にすえた安倍晋三内閣が昨年九月に自壊したこともあり、改憲派は世論に逆行する巻き返しに懸命という構図です。
神奈川新聞の3月3日の記事は本ブログでも紹介したが、5日に同紙に以下の社説が載ったのを見落としていた。神奈川新聞の良識に敬意を表する次第である。(高田)
http://www.kanaloco.jp/editorial/entry/entryxiiimar08033/
「九条の会」施設利用
* 2008/03/05
中立であるべきは行政だ
平和憲法を守ろうと箱根町で結成された市民団体が、町立公民館を借りる際に「九条堅持に偏って主張することは避ける」などと町教育委員会から条件を付けられ活動の制約を受けているという。
公務員は「全体の奉仕者」(憲法一五条)であり、行政こそが政治的に中立でなければならず、勝手な判断はできないはずだ。ところが町教委は個人的な見解を振りかざして、町民の集会の自由、表現の自由を損なった。憲法、地方自治法、地方公務員法などに反した行為だと言わざるを得ない。
町教委は団体に対し「一方的な考えを強く主張するのはやめてほしい」と伝えたり、施設に掲示されたポスターの「憲法九条が危ない情勢」との表現について、「内容が中立的でない」として紙で覆い隠したりしたという。一体何を根拠に「一方的」「中立でない」と判断し、そのような行為に及ぶのか。権限も必要もないはずだ。集会の自由、表現の自由に対する明らかな侵害である。
そもそも世論調査では「九条堅持」は多数派である。ならば「九条改定」を訴える団体は、より「一方的な主張」として厳重な制約を受けるのだろうか。また「九条が危ない」が隠されるのならば「年金が危ない」「環境が危ない」「日本映画が危ない」などの表現も隠されるのだろうか。まるで、戦前の出来事のようである。
町教委は公の施設の運営を基本から取り違えているようだ。民主主義社会では、国民はそれぞれ独自の意見を持ち、集会を行い、表現する自由を持つ。また思想信条などで差別されてはならない。教育文化行政を担当する教育委員会はなおさら、そうした国民の精神的自由を尊重しなければならないはずだ。多様な施設利用者を公平・平等に扱うため、施設運営者側にこそ中立性が求められるのだ。個々の利用者に中立を求めるなど見当違いである。
公の施設について地方自治法は、「正当な理由がない限り」住民の利用を拒否できないとし、「差別的取扱いをしてはならない」と明記している。大阪・泉佐野市民会館の使用不許可をめぐる国家賠償請求事件で最高裁判決(一九九五年)は、「明らかな差し迫った危険が具体的に予見される」ような場合を除き、市は使用申請を拒否できないとした。集会の自由を最大限に保障するためである。
問題視されがちな政治関係の利用についても、全国の公民館でつくる公民館連合会は、政党の講演会などでさえ、「全く問題はない」と明確に説明する。各政党・政治団体が公平・平等に利用できれば何の問題もないのだ。
九条問題は国政の争点の一つだ。箱根町の施設で、護憲、改憲、加憲など、さまざまな立場の町民がそれぞれに集い、議論するのはごく当たり前のことである。
新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘・元首相)=改憲議員同盟の総会が開かれ、民主党の鳩山幹事長が顧問に就任するなど、民主党幹部が加入したことが注目を集めている。
この議員同盟は1955年に岸信介らの極右派が立ち上げた「自主憲法期成議員同盟」を2007年3月に改組し、中曽根が会長について活動を活発化させたもの。当時、安倍前首相が「自分の任期中に改憲する」などと豪語したことに触発され、これを推進するための中曽根ら自民党内の札付きの改憲派の拠点となった。
これとは別に中山太郎が会長をつとめる「憲法調査推進議員連盟」があるが、中山らが長年追求してきた自公民共同による改憲という路線を安倍首相が破壊したことから、改憲派内に矛盾が生じていた。それは自民党の憲法審議会役員構成を巡って、当時の中川昭一・政調会長と、船田元・憲法審議会会長代理の間で確執が生じたことなどに見られたことである。
この中山太郎は今回、改憲議員同盟の会長代理に就任している。
鳩山がこうしたウルトラ右派の議員同盟に加わったこと、この人物の、何とも無責任で、野党幹事長としての政治感覚の悪さを象徴しているが、実は信頼できる情報によると、中曽根が鳩山に直接電話をして頼み込み、断れなかったということのようである。ここに中曽根のこの議員同盟に寄せる執念が見える。中曽根はこのグループの持っている弱点=国家主義的右翼イデオロギーが強烈すぎることをある程度自覚し、鳩山を引き入れることでそのかたくななイデオロギー臭を弱め、支持を広げる必要に迫られたのであろう。
安倍内閣崩壊の後、そのショックから立ち直ったウルトラ改憲派のこの動きは危険である。とくにこの連中が「九条の会」を目の敵にして、対抗し、草の根から改憲の流れを再構築しようとしていることは見逃せない。最近の右派の各自治体での動きなどとあわせて、こうした右派改憲勢力が明文改憲と自衛隊海外派兵恒久法制定などをめざして、草の根右翼の流れをを作り出そうとしていることについては要・警戒である。
ちなみに、改憲議員同盟の役員名簿で、私が注目したのは以下の面々である。
顧問:鳩山由紀夫(衆・民、新任)、、伊吹文明(衆・自、新任)、亀井静香(衆・国、新任)、安倍晋三(衆・自、新任)、谷垣禎一(衆・自、新任)。副会長:前原誠司(衆・民、新任)、渡部英央(参・民、新任)などなど。民主の各メンバーは「なにをかんがえてるの?」ってとこだが、羽田孜は事前に参加を断ったと聞く。谷垣などには「へぇ、ねえ」という感じだ。安倍は最近あちこちに顔をだしているが、「この人、恥知らずだね」という感じ。伊吹は「なんだか、張り切っているね」というとこ。(高田)
昨日の改憲議員同盟総会の報道記事である。朝日、読売、読売社説、赤旗しんぶんの各報道を貼り付けます。安倍内閣崩壊後の改憲派の巻き返し策動の表面化であり、今回は特に鳩山由紀夫氏ら野党幹部が役員に名を連ねているのが特徴だ。改憲議連が動きが鈍くなったのに対応して、超右派からの巻き返しの動きである。(高田)
http://www.asahi.com/politics/update/0304/TKY200803040304.html
与野党改憲派がタッグ 鳩山由・前原氏ら役員に
2008年03月04日16時31分
自民党の国会議員やOBでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は4日、国会内で総会を開き、新たな役員として、民主党の鳩山由紀夫幹事長や国民新党の亀井静香代表代行らを顧問に、民主党の前原誠司前代表らを副代表に迎え入れた。昨年、それまでの「自主憲法期成議員同盟」を衣替えして活動を始めたが、今回は超党派に枠を広げ、改憲機運の盛り上げをめざす。
総会で中曽根氏は「改憲のような国家的大問題は超党派で決めていかねばならない」とあいさつし、安倍前首相も「改憲は私のライフワーク」。民主党を代表して田名部匡省参院議員も「改憲はここ数年で決着すると決めてやらないと」と呼応した。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080304-OYT1T00806.htm
新憲法同盟、自民党と民主党の幹事長を顧問に
超党派の国会議員らで作る「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根元首相)は4日、国会内で総会を開き、自民党の伊吹、民主党の鳩山両幹事長らを顧問とする新役員体制を決定した。
両党幹事長の参加を得て、衆参両院の憲法審査会を早期に始動させるよう、与野党への働きかけを強化する方針だ。
議員同盟には、自民、民主、公明、国民新の各党などから議員191人が参加している。
昨年11月に4人だった民主党議員は、鳩山氏や前原誠司副代表らの入会で14人に増え、前原氏と田名部匡省、渡辺秀央両参院議員は副会長に就任した。自民党からは、議員同盟の副会長である二階総務会長、古賀誠選挙対策委員長に加え、伊吹氏と谷垣政調会長も新たに顧問に迎えられ、党四役が全員、議員同盟の役員となった。
議員同盟は今後、憲法審査会の始動を求める国会議員の署名活動に引き続き取り組むほか、5月1日に大会を開催する予定だ。
中曽根氏はあいさつで、「憲法問題が冷えている最中に超党派の皆さんが参加したということは、国会議員の中に根強い憲法改正へのエネルギーが充満していることの証拠だ」と強調した。伊吹氏は「憲法審査会が動く状況を作りたい」と述べた。
鳩山氏は、この日の総会は「予算審議を巡って与野党が対立している今の状況では参加できない」として欠席したが、4日午後、記者団に対し、「今国会で憲法審査会が動き出す可能性もある」と語った。
(2008年3月4日23時55分 読売新聞)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-03-05/2008030501_01_0.html
改憲同盟 自・民で新体制
役員に両党幹事長ら
“政府を代表して” 官房長官が発言
自民、民主、公明、国民新各党などの改憲派議員でつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は四日、国会内で総会を開きました。民主党幹部を新たに役員に加え、改憲策動を推進する新体制を発足させました。
自民党からは安倍晋三前首相、伊吹文明幹事長、谷垣禎一政調会長らが新たに顧問に就任、民主党からも鳩山由紀夫幹事長が顧問、前原誠司副代表が副会長に就きました。二〇〇八年度予算案の衆院強行通過をめぐって「対立」姿勢をみせる自民、民主両党が、九条改憲という国のあり方の根本問題で基本的に同方向であることを示すものです。
あいさつで中曽根会長は「憲法問題がいま冷えている最中に、なお国会議員の中には根強い憲法改正への意欲が充満している」とし、「超党派で最大公約数を求めながら国家像を決めていく大事業だ」と強調しました。これまでなかった民主党幹部の参加で、改憲機運を盛り上げる狙いを示しました。
閣僚では町村信孝官房長官が参加し、「(中曽根氏から)内閣を代表して出てこいというご命令をいただき、これは天の声だとして私は喜んで参加した」などと発言。憲法改定を目標とする議員同盟の副会長に名を連ね、改憲の呼びかけの先頭に立つ立場を鮮明にし、憲法尊重擁護義務(憲法九九条)に公然と違反する行動に出ました。
また、鳩山邦夫法相、高村正彦外相、額賀福志郎財務相らが役員に名を連ねています。
総会では当面の活動方針として(1)衆参両院の憲法審査会始動へ働きかけをさらに強める(2)民主、公明両党の議員を中心に会員の増強を進める (3)「九条の会」に対抗していくため地方の拠点づくりを進める、ことを確認。五月一日には「新憲法制定推進大会」(仮称)を憲政記念館で開催することを決めました。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080304-OYT1T00737.htm
新憲法議員同盟 まずは憲法審査会の始動だ(3月5日付・読売社説)
憲法論議の前進へ、重要な意義を持つ新たな動きである。
鳩山幹事長や前原誠司前代表ら民主党幹部が、超党派の国会議員らで作る新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)の顧問や副会長の役職に就いた。民主党議員の役員就任は初めてだ。
内外の変化が激しさを増し、憲法と現実との乖離(かいり)がますます進んでいる。民主党内でも、新たな時代の指針となる新憲法制定に正面から取り組まねばならない、との認識が強まっているのだろう。
鳩山幹事長は、民主党幹部の議員同盟役職就任を機に、「通常国会中に憲法審査会の立ち上げが動きだす可能性がある」と言う。
当面、急ぐべきは、衆参の憲法審査会の始動だ。衆参ねじれの下での与野党対決の現状から、民主党はこれまで、「冷静に憲法を論議する環境にない」として消極姿勢に終始してきた。
これは疑問だ。国民投票法に規定されている審査会を動かさないというのは、政治の怠慢だ。立法府の構成員として、国会で成立した法律を無視するようなことは、あってはならない。
何よりも、憲法審査会の場で、政治として取り上げるべき重要な課題がある。
一つは、国際平和活動の問題だ。新テロ対策特別措置法によって、インド洋での給油活動を再開したものの、1年だけの時限立法だ。いずれ、問題が再燃する。その際、いわゆる恒久法の制定問題も論議の俎(そ)上(じょう)に上るだろう。
憲法抜きで、あるべき国際平和活動を論じることはできない。
国民投票法の付則は、選挙権年齢も20歳から18歳に引き下げ、民法の成年年齢についても法制上の措置を講じるよう求めている。
法制審議会は民法の成年年齢を18歳に引き下げるかどうかの審議を始めた。国民の責任・義務のあり方にとどまらず、人口減社会の将来像をどう考えるのか。
憲法審査会としても、こうした課題に関する多角的な議論を通じて、国、社会のあるべき姿を国民に示すべきではないか。
憲法論議を進めることに対し、民主党内には、慎重論が根強くある。旧社会党系の議員は、憲法改正には反対だ。次期衆院選に向けて野党共闘を維持するために、「護憲」を掲げる社民党や共産党への配慮もうかがえる。
だが、政略的思惑で憲法論議をゆがめたり、停滞させたりすべきではあるまい。鳩山幹事長らに期待するところである。
(2008年3月5日01時50分 読売新聞)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-03-05/2008030504_01_0.html
「九条の会」に対抗
新憲法制定議員同盟
地方拠点作り狙う
解説
新憲法制定議員同盟の新役員体制の発足は、これまで参加のなかった民主党幹部を組み込むことで、参院選で挫折した改憲策動を盛り上げることに狙いがあります。議員同盟幹部は、「政局の中で民主党との対立はいろいろあるが改憲は党派を超えた課題であり、政界再編を狙っているわけではないが、客観的には大きく動かす軸になるだろう」と語りました。
それは憲法守れの国民世論に追い込まれた改憲派の危機感のあらわれでもあります。
四日の新憲法制定議員同盟の総会では「拠点となる地方組織づくり」を方針として確認しました。
愛知和男議員同盟幹事長は活動方針の説明の中で「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と強調。「各党支部や青年会議所などに頼んで拠点になってもらうことも一つかと思う」と提起しました。
中曽根康弘会長も「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」と発言しました。
「九条の会」を名指しして「対抗」意識をむき出しにした発言は、焦りの表れです。
自民党は〇五年の「新憲法草案」の発表後から全国的なタウンミーティングの開催や国民運動の展開を繰り返し提起してきました。しかし、現実には改憲促進の“国民運動”の広がりは見られませんでした。「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍内閣の下で改憲手続き法が強行されましたが、国民世論は「九条改定反対」の方向に大きく動いています。
昨年の「新憲法制定議員同盟」の発足に当たっても「九条の会」に対抗した国民運動の展開を提唱していましたが、実現せずにいます。九条改定の主張そのものが国民的に受け入れられていないことの反映です。(中祖寅一)
憲法議員同盟の役員
四日の新憲法制定議員同盟総会で了承された役員は次の通り。☆は新。かっこ内の元は元職。敬称略。
【会長】中曽根康弘(元)
【会長代理】中山太郎(自民・衆院)
【顧問】衆院=海部俊樹、中川秀直、丹羽雄哉、中川昭一、瓦力、山崎拓、☆安倍晋三、☆伊吹文明、☆谷垣禎一(以上自民)、☆鳩山由紀夫(民主)、綿貫民輔、☆亀井静香(以上国民新)、参院=青木幹雄(自民)、元職=塩川正十郎、奥野誠亮、森下元晴、上田稔、倉田寛之、関谷勝嗣、片山虎之助、 ☆粟屋敏信、☆葉梨信行、谷川和穂
【副会長】衆院=津島雄二、古賀誠、野田毅、島村宜伸、深谷隆司、与謝野馨、高村正彦、二階俊博、町村信孝、額賀福志郎、大野功統、斉藤斗志二、杉浦正健、森山眞弓、堀内光雄、☆臼井日出男、☆石原伸晃(以上自民)、☆前原誠司(民主)、平沼赳夫、☆玉沢徳一郎(以上無所属)、参院=☆藤井孝男、 ☆尾辻秀久(以上自民)、☆田名部匡省、☆渡辺秀央(以上民主)、山東昭子(無所属)、元職=小野清子
【副会長兼常任幹事】衆院=保岡興治、鳩山邦夫、大島理森、船田元、金子一義(以上自民)、参院=鴻池祥肇、☆泉信也(以上自民)
【幹事長】愛知和男(自民・衆院)
【副幹事長兼事務局長】柳本卓治(自民・衆院)
【副幹事長】中曽根弘文(自民・参院)
【常任幹事兼事務局次長】衆院=☆平沢勝栄(自民)、参院=林芳正、岡田直樹(以上自民)
【常任幹事】衆院=☆松原仁(民主)、☆下地幹郎(無所属)、参院=☆谷川秀善、☆中川義雄(以上自民)、☆亀井郁夫(国民新)、元職=飯田忠雄、永野茂門
【監事】萩山教嚴、木村太郎(以上自民・衆院)
この赤旗紙の記事は注目すべき動きである。民主党の鳩山幹事長が改憲議員同盟に入っていくことは危険な動きである。この時期に野党第一党の現職幹事長がタカ派改憲議員集団の役員になることは言語道断だ。鳩山氏はもともと改憲議連発足の時にも名を連ねて、諸々の理由ではずれた経過がある人物だが、弟の邦夫氏とともに抜き差しならない改憲派の思想の持ち主である。要注意である。ちなみに鳩山由紀夫氏の国会事務所は電話03-3508-7334 FAX03-3502-5295。(高田)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-03-04/2008030402_03_0.html
憲法審査会始動ねらう
議員同盟 きょう総会
民主幹部が新役員に
自民、民主、国民新各党と無所属の改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は四日に総会を開きます。新たに民主党から鳩山由紀夫幹事長、前原誠司副代表ら幹部の参加を得て新役員体制を発足させる見通しです。
同議員同盟は一月の臨時国会閉会時に、衆参両院議長に対し三百人をこえる衆参両院議員の賛同署名を添えて改憲原案の調査権限を持つ憲法審査会の早期始動を申し入れ、明文改憲論議の促進へ働きかけを強めています。
昨年五月に与党が強行した改憲手続き法に基づき同年八月には衆参両院に憲法審査会が設置されました。しかし、参院選での与野党逆転の結果を受け、審査会の組織と運営のルールを定める審査会規程の議決に野党が反対する中で、いまだに始動できていません。
「二大政党」で
その中での同議員同盟新役員体制への民主党幹部の参加。これは、自民・民主「二大政党」による改憲にむけた共同が、安倍前内閣の強硬な改憲姿勢のもとで破たんしたのを修復し、憲法審査会の早期始動につな