東京【社説】秘密保護法 自民の「反論」は正当か
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013122302000141.html
東京【社説】秘密保護法 自民の「反論」は正当か
2013年12月23日
特定秘密保護法を批判する報道に対し、自民党が「反論」と称する文書を同党の国会議員に配布した。反論権は十分に認め、謙虚でありたい。それを踏まえても、中身には疑問を持たざるを得ない。
文書のタイトルは「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」だ。東京新聞(中日新聞東京本社)や朝日新聞、毎日新聞の報道や社説を二十三本、取り上げて、それぞれ逐条的に「反論」を加えている。
例えば、「『行政機関の長』が、その裁量でいくらでも特定秘密を指定できる」と書いた新聞について、「反論・事実に反します」と冒頭で記す。さらに「特定秘密は、法律の別表に限定列挙された事項に関する情報に限って指定するもので、(中略)恣意(しい)的な運用が行われることはありません」と記している。
問題なのは、肝心の別表の中身があまりに茫漠(ぼうばく)としていることだ。外交分野では「外国の政府との交渉」と書いてある。こんな言葉では、どんな交渉も含みうる。拡大解釈も、恣意的な運用も可能であろう。どこが「限定」していると言えるのか、不可解というほかはない。
「国会や司法のチェックも及ばない」と書いた新聞にも、「反論・事実に反します」とし、「国会の求めに応じ、特定秘密を提供しなければならず、国会で必要な議論ができます」と書く。
この記述は、議員が誤解しよう。たしかに国会の秘密会に提供する定めはある。だが、行政機関の「長」が「安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」に限られる。
そもそも特定秘密とは「安全保障に著しい支障があるため、特に秘匿するもの」である。支障がないと行政側が判断する情報は元来、特定秘密になりえない。法を読む限り、論理矛盾でないか。
テロリズムの定義をめぐっても、「反論」があった。政府とは異なる解釈ができる条文の書き方で、根源的な問題である。法律自体が欠陥なのだ。
自民党の文書は「一部の新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れています」と記している。批判に背を向ける姿勢がうかがえる。
報道機関は良心に従い、権力を監視し、問題点があれば、報道し、言論を述べる。野党も追及する。国民もデモなどで声を上げる。民主主義社会では正常な風景である。国民を不安に陥れるのは、秘密保護法そのものである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013122302000139.html
秘密法報道に反論文書 自民、本紙など27カ所批判
2013年12月23日 朝刊
自民党は特定秘密保護法に批判的な記事に反論する文書をつくり所属の国会議員に配布した。東京新聞を含め「一部の新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れている」と指摘しているが、根拠に疑問点が多く、一方的な批判になっている。
文書は「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」との題名で、A4判五枚の本文と八枚の別紙からなる。本文は、法律の問題点を指摘する報道を批判し「急きょ、こうした新聞の誤った報道に惑わされないために反論を作成した」と説明している。
別紙は本紙と朝日新聞、毎日新聞の記事の二十七カ所を抜粋し、二十三本にまとめて反論を掲載。すべて記事の法解釈について「事実に反する」などと否定しているが、根拠は政府側の国会答弁など従来の主張を繰り返すにとどまっている。
法成立後、内閣支持率が急落し、政府・自民党は説明資料の作成や説明会の開催などを検討している。今回の文書は党政務調査会の事務局が作成。議員が地元で有権者に説明する際の参考資料とみられる。
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