毎日社説:武器輸出三原則 厳格な歯止めの議論を
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毎日社説:武器輸出三原則 厳格な歯止めの議論を
毎日新聞 2013年12月16日 02時31分(最終更新 12月16日 03時42分)
安倍政権は、武器輸出を原則として禁じてきた武器輸出三原則を緩和し、来年以降、新たな輸出管理原則を定める方針だ。17日に閣議決定する国家安全保障戦略と防衛大綱に見直しの方向性を盛り込む。三原則の理念を堅持した上で、厳格な基準や審査体制などの歯止めをかけることが肝要だ。国民の目に見える丁寧な議論を尽くしてほしい。
三原則について、政府は個別案件ごとに例外を認めてきたが、2011年12月に野田内閣が新基準を作り、抜本的に緩和した。相手国が日本の事前同意なく目的外使用や第三国移転はしないことを前提に「平和貢献・国際協力」「国際共同開発・生産」について、武器輸出を認めた。
今年3月には安倍内閣が、自衛隊の次期戦闘機F35の国際共同生産への参加にあたり、日本製部品の対米輸出を三原則の例外として認めた。
政権はこうした上に立って、さらなる緩和を目指している。防衛産業の技術力や国際競争力を高め、日米同盟を強化するのが狙いだ。これまでの「原則輸出禁止」をやめ、「日本の安全保障に資する場合」など一定の制限のもとで武器輸出を認め、新基準に基づいて個別に輸出の可否を判断する仕組みをつくるという。
武器輸出三原則は、日本の平和国家の理念を支えてきた基本的原則だ。例外措置を重ね、すでに形骸化しているが、見直すたびに国民への説明はいつも不十分だった。
今回も検討は専ら有識者会議に委ねられ、先の臨時国会での議論は低調だった。政権は一気に年内に新たな武器輸出管理原則を策定する構えだったが、公明党が自民党との協議で慎重な対応を求め、新基準づくりは来年以降に持ち越された。
政権が検討している「日本の安全保障に資する場合」という制限は、範囲があいまいだ。厳格な基準をどう作るか、議論を深めてほしい。基準に適合しているかどうかの審査体制を整備する必要もある。
ただ、今回の見直しには、検討に値する内容も含まれている。
例えば、国連平和維持活動(PKO)など平和貢献や国際協力での防衛装備品の供与は、野田内閣時の基準で解禁されたが、政府間の取り決めが前提で、国際機関は対象外だ。化学兵器禁止機関(OPCW)から器材提供を求められても、対応できない。こういうケースは、柔軟に認める方向で考えてもいいだろう。
一方、外国軍隊への修理など役務の提供や国産部品の輸出解禁、第三国移転に関する日本の事前同意の簡略化は、慎重な検討を求めたい。
見直すべき点とそうでない点を整理し、しっかりした基準と審査体制をつくることが不可欠だ。
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