北海道新聞 社説 秘密保護法案 早くも欠陥を露呈した(11月6日)北海道新聞 社説 秘密保護法案 早くも欠陥を露呈した(11月6日)
北海道新聞 社説 秘密保護法案 早くも欠陥を露呈した(11月6日)
案の定というべきだろう。秘密漏えいに重罰を科す特定秘密保護法案をめぐり、所管の森雅子少子化担当相はじめ政府・与党の発言がぶれたり、食い違ったりする場面が頻発している。
保護の対象となる「特定秘密」を、政権の都合の良いように恣意(しい)的に指定できるという法案の根本的な欠陥を早くも露呈したと言える。
政府は特定秘密が約40万件になるとの見通しを示している。それだけでも膨大だが、担当閣僚ですら秘密指定の判断が曖昧な実態をみれば、秘密が際限なく増える恐れが強い。
法案は7日にも衆院で審議入りする。国民の「知る権利」や報道の自由を脅かすことが一層、明白になった法案の成立を許してはならない。
森氏は環太平洋連携協定(TPP)交渉内容について「(特定秘密に)なる可能性はある」と明言した。
だが、「特定秘密の対象とはならない」とする政府見解との食い違いを指摘されると、その日のうちに訂正した。
また、沖縄返還に伴う日米密約を報じた記者が、外務省の女性事務官をそそのかしたとして逮捕された西山事件のような取材活動は処罰対象になるとの認識を示したが、批判を受けて「私は過去の事件を述べる立場にない」と軌道修正した。
さらに原発情報に関し「警察の警備実施状況は特定秘密に指定され得る」と述べたが、これは礒崎陽輔首相補佐官が先に「原発情報が指定されることは絶対にない」と明言したことと食い違う。
これでは一体、誰の説明を信じればよいのか。
一方、自民党の小池百合子元防衛相は国会質問で、首相の1日の行動を報道する「首相動静」について「国民の『知る権利』を超えている。日本は秘密や機密の感覚を失っている平和ぼけの国」などと述べた。
新聞各社が首相動静を報じるのは、日本の最高権力者の動きが、国民の「知る権利」の根幹をなす情報の一つと位置づけているからだ。
法案は「知る権利」や報道の自由への配慮を盛り込んだ。だが、小池氏の発言は政治家の報道に対する根本的な無理解を示し、法案の危険な側面を端的にあらわにした。
政府は特定秘密の恣意的な指定を防ぐため、有識者会議を設置して指定基準を策定するとしたが、その基準も拡大解釈は可能だろう。
政府の勝手な秘密指定を、第三者が排除する仕組みもないままだ。
法案には多くの市民グループや弁護士会などが批判の声を上げ、共同通信の世論調査では反対が50%を超えた。与野党とも、こうした国民の意見を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
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