毎日社説:秘密保護法案 懸念材料が多すぎる
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毎日社説:秘密保護法案 懸念材料が多すぎる
毎日新聞 2013年09月04日 02時33分
国家機密の情報漏えいを防ぐための特定秘密保護法案の議論が本格化してきた。政府は秋の臨時国会に法案を提出予定で、自民党など与党でも検討が始まった。
「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分野のうち、秘匿の必要性が特に高い情報を行政機関の長が「特定秘密」に指定する。故意に漏らした公務員には最高懲役10年の罰則を科す。
特定秘密の範囲が拡大すれば、国民の「知る権利」が損なわれる。だが、政府が予定している法案の概要では、その歯止めが明確でない。
あいまいさを残す一方で、当事者を厳罰で縛ろうとする法案の骨格に対し、強い懸念を抱く。
何が特定秘密になるのか。「外交」など4分野について別表で規定する。たとえば、外交ではその一つとして「安全保障に関する外国の政府または国際機関との交渉または協力の方針または内容」と掲げる。
かなり抽象的な規定だ。行政機関の長の判断次第で指定の範囲は大きくふくらむ。さらに指定の有効期間は5年で、何回も更新可能だ。
政府にとって都合の悪い情報の隠れみのになってしまう恐れはないか。指定の適切さを政府内部でどうチェックするのかも明確でない。
米国では、重要な公文書でも期限がすぎれば公開される仕組みが整備されている。一方、日本は官庁側の裁量に左右されてきた。沖縄密約問題でも、米国で公文書が公開されているのに、政府はいまも文書の存在を認めていない。廃棄などずさんな公文書管理も随分、批判を浴びた。隠蔽(いんぺい)体質を改め、まず基本的な情報公開度を高めるのが先ではないか。
さらに懸念するのは、特定秘密を知ろうとする側も罰則の対象としていることだ。特定秘密の取得行為に対し、最高懲役10年の罰則を科す予定だ。たとえば、漏えいをそそのかす行為も罰則の対象だ。
だが、熱心に相手を説得する報道機関の取材とそそのかしをどう線引きするのか。また、取得行為は、報道目的に限らない。国民がそれぞれの立場で政府情報の公開を求める行為も規制対象になり得る。「国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」との規定も設けるというが、適切な運用が担保される保証はない。情報の提供側・受け手双方に対する萎縮効果は甚大だ。
国家間で共有する情報など機密性の高い情報があるのは確かだ。そのセキュリティーに最善を尽くす必要性は分かる。ただし、一義的には情報を持つ官庁の情報管理の問題だ。幅広く民間人も巻き込み厳罰も導入しての法制化が本当に必要なのか。入り口からの議論が必要だ。
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