「尖閣棚上げ」食い違う外交記録=日本「事実ない」、中国「文書存在」
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「尖閣棚上げ」食い違う外交記録=日本「事実ない」、中国「文書存在」
野中広務元官房長官が3日、1972年9月に日中国交正常化を実現した田中角栄首相(当時)から、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)領有権の棚上げを双方が確認したと聞いたと、中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員との会談で明かし、日中両国で波紋を広げている。岸田文雄外相は4日、「わが国外交の記録を見る限りそういう事実はない」として棚上げを否定。一方、中国政府幹部は「中国には棚上げで合意した外交文書が存在する」と証言する。「尖閣棚上げ」をめぐる歴史事実はどうなのか。対立が激化する日中関係を左右する大きな焦点の一つに浮上している。
◇「波静かに」と確認
野中氏の話は、国交正常化直後に神奈川県の箱根で開かれた自民党田中派の研修会で田中氏が語った内容に基づいている。
野中氏の説明によると、正常化交渉も大詰めに入り、田中氏は「この際、あの問題について話がしたい」と、周恩来首相(当時)に尖閣問題を切り出した。71年末に中国政府は初めて公式に尖閣の領有権を主張し、火種となっていた。これに対して正常化実現を優先したい周氏は「今、そこまで踏み込んで話したら会談はなくなってしまう。いつまで話し合わなくてはならないか分からない」と難色を示した。
そこに同席した大平正芳外相(同)が助け舟を出した。「田中さんは帰国して右翼から『尖閣はどうなった』と聞かれた時、(中国側と)『話をした』とするために言ったのだ」。結局、双方は「棚上げすることで将来にわたりお互いに話し合いができる道を求めるまで波静かにやろう」と確認したという。
◇「生き証人として」-野中氏
日中友好に尽力した今年88歳になる野中氏は「当時の現状を聞いた生き証人として明らかにしておきたい」と語る。周氏やトウ小平氏の知恵である「棚上げ」でしか、尖閣をめぐる両国の対立打開への道はないと感じているのだ。
しかし日本政府は「棚上げ」を認めれば、その前提として領土問題も容認することになり、中国側の交渉ペースにはまると警戒を強める。菅義偉官房長官は4日、「野中発言」に対して「中国側との間で、棚上げで合意した事実はない」と強調。5日も「伝え聞いたことを確たる証拠も示さず、非常に違和感を覚えている」と批判した。
日本政府の立場は、国交正常化をめぐり公開した外交文書が根拠だ。それによると国交正常化交渉で田中氏は「尖閣諸島についてどう思うか? 私のところに、いろいろ言ってくる人がいる」と尋ね、周氏は「今、これを話すのはよくない。(尖閣周辺海域に)石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない」と答えて終わったことになっている。
◇人民日報掲載の「核心」
しかし中国側では昨年9月に日本政府が尖閣諸島を国有化した直後、共産党機関紙・人民日報(10月12日付)が、日本政府の外交文書に掲載されていない「核心部分」を公にした。
「石油」の話に続き、田中氏は周氏に「よろしい。これ以上話す必要はなくなった。またにしよう」と持ち掛けた。これに対して周氏も「またにしよう。今回、われわれは解決できる大きな基本問題、例えば両国関係の正常化問題を先に解決する。これが最も差し迫った問題だ」と答えたというのだ。
尖閣問題「棚上げ」で合意したと読めるこのやりとりは、正常化交渉に参加した中国外務省顧問(当時)で日本専門家・張香山氏の回想を基にしている。複数の中国政府関係者も「張氏の記録が外交文書として残っている」と証言するが、外務省档案館(外交史料館)はいまだ原文コピーを公開していない。
「原文を見ない限り、(中国外交記録は)改ざんされている可能性もある」。日本政府関係者はこう漏らした。(北京時事)(2013/06/05-16:28)
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