国民投票法 論議を一からやり直せ 06月07日(金)
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国民投票法 論議を一からやり直せ 06月07日(金)
衆院憲法審査会は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が求める成人年齢や選挙権年齢の引き下げについて議論した。自民党の委員からは、国民投票ができる年齢を「18歳以上」で確定させる案が出された。
民法で20歳以上となっている成人年齢の引き下げは、2010年の施行までに行うことになっていたが、実現していない。
一方、安倍晋三政権は民法や公職選挙法の改正などには当面手を付けず、国民投票の年齢を先行して固めるための法改正も検討している。国民投票法だけをいじって改憲の環境整備を進める考えだとしたら、やり方が荒っぽい。
そもそも、この法律は第1次安倍政権が成立を急いだため、詰め切れていなかったり、手付かずだったりの課題が多すぎる。
07年に成立した国民投票法は付則で「宿題」を明記している。同法で投票権は18歳以上に与えているが、民法上の成人年齢や公選法上の投票年齢を同じ18歳以上にすることが盛られている。
公務員が憲法改正の是非を論じられるようにする法の整備や、国民投票の対象を拡大する案の検討も求められている。合わせて「三つの宿題」と言われる。
安倍首相はこれらの課題に結論を出した上で、改憲の国会発議要件を緩和する96条の改正に取り組む意向を示してきた。が、いずれもめどがたたず、早期改憲の「足かせ」になるとの思いを強めたのではないか。
さらに重要な問題がある。参院で国民投票法案が可決されたときの付帯決議だ。最低投票率制度の導入について検討することなどを求めた。これも手付かずのまま今日に至っている。
とりわけ、投票率の問題は無視できない。国会から改憲が提案され、投票率が低かった場合、ひと握りの国民の意思で憲法が変わってしまうことも起こり得る。投票率がわずか20%でも過半数が賛成すれば、憲法を変えられることを意味する。
安倍首相は「憲法を国民の手に取り戻す」ために改憲は必要と訴えてきた。低投票率になれば、改正の正当性に疑問符が付き、首相の言葉とは逆に憲法が国民から遠い存在になるかもしれない。
成立過程も含めて国民投票法には問題が多いことを認識しなくてはなるまい。与野党で一から論議することを求める。
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