沖縄タイムス 社説[「4・28」抗議大会]新しい風が吹き始めた
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-29_48631
社説[「4・28」抗議大会]新しい風が吹き始めた
「がってぃん(合点)ならん」
腹の底から怒りが湧く場合、土地の記憶や体験に根差した島くとぅばが出てくる。その思いがストレートに伝わり、会場には終始、指笛が鳴り響いた。今回の大会で目立ったのは、島くとぅばに、抗議の意味を込めた人が多かったことだ。
宜野湾海浜公園屋外劇場で開かれた「4・28政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」。ゴールデンウイークにもかかわらず、約1万人(主催者発表)が駆け付けた。
東京の政府式典と同じ時刻にぶつけた。親子連れや沖縄戦を体験したお年寄りら世代は幅広い。車いすを押してもらい参加した年配の人もいた。切迫感が伝わる。
米軍統治下の苦難の歴史など沖縄の集団的記憶が政府式典によって簒奪(さんだつ)されるかもしれないという危機感だ。沖縄のコアの経験が逆なでされたのである。
登壇者の発言や大会参加者の感想の中に「主権」「自己決定」「尊厳」「自恃(じじ)」「離縁状」といった言葉が多かったことに注目したい。
ここに示されているのは県民の自立への渇望であり、気概の表れである。
沖縄の若い世代には「4・28」の意味が必ずしも浸透しているとはいえない。沖縄の中でも風化しつつあるのが現実だ。中部地区青年団協議会のメンバーは「『屈辱の日』を知らなかった。国民主権とは何か、全国民が考える日にしたい」と呼び掛けた。
戦後史の学び直しもこれからの大きな課題である。
■ ■
この日、国会近くの憲政記念館では政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が天皇、皇后両陛下も出席して行われた。県は仲井真弘多知事が欠席、高良倉吉副知事が代理出席した。
式典は約40分間。淡々と進んだ。安倍晋三首相は式辞で日本から切り離された沖縄、奄美、小笠原に触れた。特に沖縄については「若い世代に呼び掛けつつ、沖縄が経てきた辛苦に、ただ深く、思いを寄せる努力をなすべきだということを、訴えようと思う」と述べた。
沖縄が予想以上の反発を示したため慌てて付け足したような印象が拭えない。
言葉と行動が伴っていないのは米軍基地問題をみてもわかる。「努力を訴える」ことだけでは不十分である。
過重な基地負担を解消し、日米地位協定の改定を実行することなしには、沖縄の主権が完全に回復されたとはいえない。
■ ■
なぜ、今、政府式典なのか。安倍首相の式辞からはその理由がうかがえなかった。
答えは2011年2月の自民党有志が立ち上げた「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」(野田毅会長)の設立趣意書にある。こう明記している。「主権回復した際に、本来なら直ちに自主憲法の制定と国防軍の創設は、主権国家として最優先手順であった」。やはり先にあるのは憲法改正である。
「4・28」は基地問題や歴史認識をめぐる国内の亀裂を浮き彫りにした一日だった。
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