「原発全廃提案」 山名元氏、飯田哲也氏
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「原発全廃提案」 山名元氏、飯田哲也氏
2012.5.11 08:08 (1/4ページ)
山名元氏
山名元氏
関西電力の筆頭株主である大阪市は、6月開催の同社株主総会で「可及的速やかな全原発の廃止」を求める提案を行う。これに対し、関電は「電力の安定供給」のためにも、大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を目指しており、原発をめぐる両者の立場の違いは鮮明化している。原発ゼロを目指す理由は何なのか。原発がなくなれば、日本はどうなるのか。大阪府市統合本部の飯田哲也特別顧問と京都大学の山名元教授にそれぞれの見解を聞いた。(内海俊彦)
◇
≪山名元氏≫
結果的に国力の低下招く
--日本から原発がゼロになる意味は?
「日本は原発の安定・安価な電力供給のもとにビジネスモデルをつくってきた。原発をなくし、火力発電への依存が大きくなると、発電用の燃料費の輸入で膨大な資金が海外に流出する。結果的に国力の低下につながる」
●問題はらむ株主提案
--そんな中、大阪市は関電に可及的速やかな原発全廃を求める
「この提案は問題をはらんでいる。電力事業は民営だが公益事業でもあり、単なる民間ビジネスの株主とは違う。エネルギー政策に文句を言うのはいいが、急激に変えると社会や経済に大きなリスクを与える。時間をかけて公益を損ねないような確実性の高い提案をすべきだ。国策、大政党、官僚主義への不満のため株主提案という荒業をしているだけにみえる」
--自治体による株主提案をどう評価するのか
「税金で株を保有しているのは公益を守るためではないか。税金で社会安全を保障し、安定・安価な電力供給で市民生活が守られてきた。それが急に『原子力は駄目だ』と原発停止を求めるのは、市民にリスクを負わせることにつながる」
--火力を総動員すれば、大丈夫という意見もあるが
「火力で瞬間的なピーク時を乗り切る議論は問題の本質からそれている。原子力という基盤をなくし、節電などによる長期的な体質低下は国力を減退させる。原子力の代替え電源もなく、『危険な社会実験』に突入した」
--“実験”の結末はどこに向かうのか
「大きなものを喪失する。例えば、日本から逃げた企業は戻ってこない。電力事業者のファイナンスリスクもあり、電気料金も値上げせざるをえない。東京電力福島第1原発の事故で反省して、喫緊の対策をとれば、少なくとも全原子力の3分の2は復帰できる。その間に直していけばいい話だ」
●太陽光は不確実性大
--再生可能エネルギーの実力は?
「太陽光も風力にも、経済性、導入可能規模、時期、送電系統の信頼性などに不確実性が大きい。原子力か非原子力かという二項対立になっているが、エネルギー政策を論じるためには、確実性と不確実性が最初に問われるべきだ」
--エネルギー政策のあるべき姿とは
「確実性にウエートを置き、不確実性に軽く足を乗せるようなバランスでなければならない。不確実な再生可能エネルギーに全部乗って、確実性の高い原子力や火力を捨てるのは危険。長期的なエネルギー政策を示すロードマップが求められる」
◇
≪飯田哲也氏≫
可決は無理…影響力示す
--なぜ、原発に反対なのか
「確かに原子力はそれなりの供給力はあるが、事故を起こした時点でサドンデス(突然死)。確率の高い宝くじかもしれないが、外れたときはスッカラカンになる」
--電源としての弱点は?
「記録を見れば、原発は地震やボヤなどで山のように停止している。原因が分からなければ停止時間は長くなる。超不安定要因を考慮しなければならない」
○関電と戦うのでなく
--大阪市は関電に全原発停止を求める株主提案を提出した
「橋下(徹)市長らが株主総会に出席して話す場面が中継されると大きなインパクトがある。ただ、関電と戦うことが目的ではなく、提案の実現が目標だ」
--可決に必要な3分の2の賛同は得られるのか
「おそらく無理だろう。ただ、提案が経営に影響しないことはないと思う。これだけ話題を呼ぶと、要求する100のうち、関電は来年、10もしくは1は実施してくるはず。その変化を起こすことがとても大切だ」
--電力不足を懸念する経済界から、早期の原発再稼働を望む声が高まっている
「あまりに、ものを考えなさすぎだ。再稼働のプロセスは手続きを踏んでいないのが実情。福島であれだけの原発事故を起こしている状況で、最低限の手順が取られていない」
--具体的にどのような手順が抜け落ちているのか
「事故前から津波は安全対策としても指摘されていたが、東京電力は何もしてこなかった。その体質に手を突っ込まなければ何もできない。国も機能不全だった。すべてをさらけ出して、一つ一つをつぶさなければならない」
--原発の「地元」をめぐり、自治体間で意見が割れている
「日常的な雇用など通常時であれば地元は福井でいいが、シビアアクシデント(過酷事故)時の地元は拡充して考えることが、論理的には当然だ」
○他の地域も「地元」に
--福井県だけが地元ではないということか
「例えば、滋賀県の嘉田(由紀子)知事が言っているのは『被害地元』だ。原発事故で放射能が県境を越えて出てこなければ福井県が地元でいいが、そんなわけはない。原発があるから地元という論理は事故後は成り立たない」
--注目する電源は何か
「1千キロワット、500キロワット規模の分散型のコージェネレーション(熱併給発電)を広めていけばいい。今までは、熱が十分に利用されなかった。(電力の買い取り制度で)電力を高値で買うという環境が整えば、投資会社が参入しやすくなる」
◇
【プロフィル】山名元
やまな・はじむ 昭和28年、京都府生まれ。58歳。東北大大学院工学研究科博士課程修了。旧動力炉・核燃料開発事業団で再処理開発に従事。同事業団の主任研究員を経て、京都大原子炉実験所教授。著書に「間違いだらけの原子力・再処理問題」「それでも日本は原発を止められない」など。
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【プロフィル】飯田哲也
いいだ・てつなり 昭和34年、山口県生まれ。53歳。京都大大学院原子核工学専攻修了。大手鉄鋼メーカー、電力関連研究機関で原子力の仕事に携わり、現在は認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長、大阪府市統合本部の特別顧問。著書に「エネルギー進化論」他多数。
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