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2011年12月16日 (金)

特集ワイド:日本よ!悲しみを越えて 作家・落合恵子さん

http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20111216dde012040019000c.html

特集ワイド:日本よ!悲しみを越えて 作家・落合恵子さん

 <この国はどこへ行こうとしているのか>
 ◇「孤独の力」でつながる--落合恵子さん(66)

 今年の世相を表す漢字が「絆」と決まった冬晴れの日の昼下がり。付箋紙だらけの1冊の本を手に、著者の落合恵子さんに会いに行った。東日本大震災後に出版された本のタイトルは「『孤独の力』を抱きしめて」。尋ねてみたかった。人々が「絆」を求めてやまない時代に、なぜ「孤独」なのですか、と。

 自ら経営する子どもの本の専門書店「クレヨンハウス」(東京・表参道)に現れた落合さん、「孤独は孤立とは違うと思う」という。

 「『孤独』とは一人であること。自分自身であること。『孤独』からスタートして初めて、人は他者とつながっていけるのではないでしょうか。私のいう『孤独の力』は、人とつながる力でもあるのです」

 3・11以降、人とつながり、人をつなげながら、東奔西走してきた。「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人に名を連ね、各地の脱原発集会に参加する一方で、被災地にも通った。

 被災地の子どもたちに絵本を贈るプロジェクト「HUG & READ」には、全国から11万冊以上が集まり、うち約10万冊はすでに被災地に届けられた。クレヨンハウスで原発勉強会を開催するほか、原発や食の安全などをテーマにしたブックレットシリーズの出版も始めた。

 このシリーズの1冊を、小児科医の山田真さんが書いている。福島で医療相談会を開いた時、子を持つ多くの親たちが、放射能への心配よりも、その心配を口にできないつらさに苦しんでいた、と。不安を口にするだけで、「風評被害をあおるな」「福島の評判を落とすのか」と批判されるムードがあったというのだ。

 落合さんはいう。「被害者の立場の人々が分断され、対立させられてしまっている。そうなることで一番安泰なのは誰? 権力はいつも、被害者を分断し、対立させることで生き延びようとするのです」

 だから、つながろう、と呼びかける。西に避難する人には「親の介護や仕事のために、その地を動けずにいる方々のことをどうか忘れないでください」と。福島にとどまる人には「出て行った人のことを郷里を捨てたといわないでください」と。「放射能への不安の声をかき消さないで」と呼びかける一方で、「声すら上げられずにいる人に、声を上げることを無理強いしないでください」とも。

 シーソーならばより軽い方、声ならばより小さい方。いつだって、気付けばより弱い者に寄り添っていた。母親がシングルマザーだからと幼い日にいじめられ、就職時には差別も受けた。そんな体験が、「少数派が切り捨てられる社会では個人はみずみずしく生きられない」という根っこを作った。

 一方、昔も今も集団が苦手。たとえ自分と意見を同じくする人たちに囲まれていても、皆が熱くなり一方向に向かい始めると、つい立ち止まってしまう。でもきっと、そんな人だから、意見の異なる人ともつながれるんだろう。

 たとえば、脱原発を自民党の中で主張してきた河野太郎元幹事長代理と対談した。周囲には、自民党、というだけで反発する人もいた。「他の政策では意見を異にする相手とも、『脱原発』ではつながれる。私は、人を所属する組織ではなく、できる限り個人としてとらえたい」

 脱原発運動もそうだ。同じ「脱原発」でも、即時廃炉派から一時的な再稼働はやむなしまで、それぞれに違う。迷いながら、半歩踏み出したばかりの人もいる。「迷いのある人は、自分の中に揺るぎないものが生まれるまで迷うのがいい。意見の違う相手とも、共感できる部分で緩やかにつながればいい。切り捨ててはいけないんです」

 本当は焦っている。急がねばと思う。10年、20年あるいは30年後を目指した「脱原発」でよいのか。「だって子どもは今日を、この瞬間を放射能汚染の中で生きている。あと10年待って、などと子どもたちに言えますか? たとえ将来、何の病気も発症しなくても、今だって毎朝、子どもが鼻血を出しただけで、不安におののく親子がいるのです。しかも、彼らの苦しみは将来にわたって続く」

 語気を強めるたび、トレードマークの髪が揺れる。権力に怒る者のヘアスタイル。怒髪、と呼ばれるのだそうだ。「福島第1原発事故で多くの人が苦しんでいるのに、国は原発を外国に輸出するという。またもや経済優先、輸出企業優先主義ではないですか。なんという国!」

 震災後、「柔らかな個の力」に出会うことも増えた。「いつか自分の孫が生まれる日のために、と毎月1冊ずつ買い集めていた大切な絵本を段ボールで何箱も送ってくださった方。裁縫で少しずつ得たお金の入った貯金箱を抱きしめ、『これで被災地の子のために絵本を買うの!』と言ってくださった信州のご高齢の女性。被災地へのメッセージに、夫と妻と子どもがそれぞれ1枚ずつ、自分の言葉でつづってくれた家族……」

 自分で考え、流されずに行動することがなぜか難しいこの国で、「放射能が怖い」の一言すら口にするのを許してくれないこの社会で、もっと根っこの強い、揺るがない人の力が生まれているのかも。

 ああ!と、ふに落ちた。震災と原発事故にいためつけられ、人々が絆を求めてやまない今だからこそ、「孤独の力を」だったのか。

 「原発が象徴するあらゆる犠牲のシステムを、何度も何度でも問い直していきたい。どんなに非情で残酷な社会でも、ささやかな希望を、誰かの柔らかな手を、しっかり握って生きれば、見えてくるものがあるはずだから」

 歯がゆいのは、動き出した人々の気持ちと、国の政治を動かす人たちの気持ちとの間に、あまりに大きな乖離(かいり)があることだ。「市民は優しい。でも、この国は、人々の優しさに甘え過ぎてはいませんか」

 帰りがけにクレヨンハウスの野菜売り場で、落合さんと有機栽培のユズを買った。「今日の白菜はおいしいわ、と思える自分も大事にしたいの。昔聞いた歌が流れてきた時、じわっとできる感性とか。だって、旬の味を楽しむ心なしに、どうして長く闘えますか!」というと、さらに春菊を一束、手に取った。

 一番寒さに強いかんきつ類といわれる黄色い果実を傍らに、原稿を書いている。落合さんは今ごろユズで鍋かしら、と思い巡らせながら。【小国綾子】=「日本よ!」は次回は1月5日に掲載します

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 ■人物略歴
 ◇おちあい・けいこ

 1945年、栃木県生まれ。67年文化放送に入社。アナウンサーを経て作家に。女性や子ども、「少数派」の立場から執筆を続けている。「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人の一人として、現在、1000万人を目標に署名活動を展開中。近著に「『孤独の力』を抱きしめて」(小学館)。

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