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2011年12月22日 (木)

記者の目:福島第1原発の「収束宣言」=中西拓司

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20111222k0000m070118000c.html
記者の目:福島第1原発の「収束宣言」=中西拓司

 政府は今月、東京電力福島第1原発を「冷温停止状態」と判断し、事故の収束を宣言した。だが冷温停止状態という言葉は曖昧なうえ、政府が「完了」を主張する「工程表」の中身は過去、7回も書き換えられている。国際社会に早期収束をアピールするため、「自作自演」で幕引きを図った姿勢が透けて見える。

 事故から9カ月が経過した。当時の危機的状況を検証してみよう。
 ◇首都避難の恐れ、偶然重なり回避

 「第1原発も深刻だが、同様に深刻だった第2原発は奇跡的に冷却できたと認識できた」。5月下旬、現地視察した国際原子力機関(IAEA)調査団は、経済産業省幹部に対し「奇跡」という言葉を持ち出してねぎらった。

 津波後も一部電源が残った第2原発では、仮設ケーブルを柏崎刈羽原発(新潟県)などから集め、電気を通して4基の原子炉を冷却することが急務だった。作業員を大量投入して敷地の野球場フェンスを徹夜で撤去し、ヘリポートに改造、ケーブルを積んだヘリを社員の車20台のヘッドライトで誘導した。総延長9キロのケーブルを2日で敷設し、ぎりぎり冷却が間に合った。通常20日かかる作業だった。

 人海戦術ができたのは、地震発生が金曜日の午後で、協力企業の作業員数千人がたまたま施設内にいたためだ。「もし発生が翌日の土曜日だったらと思うとぞっとする」。IAEAに、第2原発の増田尚宏所長は証言した。

 そのころ第1原発では1~4号機が電源喪失で冷却機能を失った。最多の1535本(460トン)を保管する4号機の使用済み核燃料プールは沸騰。溶融すれば最悪の場合、首都圏の3000万人が避難を強いられる事態が目前だった。だが空だき直前、4号機内で起きた水素爆発の衝撃で核燃料プール横の別なプールの水が偶然、核燃料プールに流れ込み危機を免れた。

 2号機では、原子炉建屋の窓が、隣接する1号機の水素爆発の衝撃でたまたま開き、水素が排気されて建屋内の爆発が回避された。もし4号機プールが空だきとなり2号機も爆発したら、放射性物質の汚染は今の比ではなかった。

 「日本だから収束できた。海外だったら無理」。東電幹部は私の取材にこう証言した。作業員が被ばくにおびえながら復旧に尽くしたことには頭が下がる。だが事故への対応では「偶然」が重なった面も忘れないでほしい。
 ◇政治判断を優先、「一里塚」は疑問

 これに加え、政府・東電が収束に向けて作成した工程表では、根本問題を先送りし、形式的な「収束」にこだわったことが分かる。

 工程表は、原子炉の安定冷却を目指すステップ1(4~7月)、「冷温停止状態」に持ち込むステップ2(7月~来年1月)で構成。政府は、ステップ2の年内の前倒し達成を目指していた。東電は当初ステップ2の目標として、格納容器を水で満たす冠水(水棺)計画を公表したが、格納容器に穴が開いていたことを受け撤回。結局、この重要課題は、5年後以降に先送りされた。「放射性汚染水を処理し減少させる」とのステップ2での目標も、工程表書き直しの過程で「終了後も処理を継続」と変えられた。

 今回発表された「工程表達成」は、ハードルを自分で下げた結果にほかならない。第二次世界大戦当時、大本営発表が軍の撤退を「転進」と言い換えたことを想起させる。

 「冷温停止状態」の定義は、(1)圧力容器底部の温度が100度以下(2)原発敷地境界の放射線量が年1ミリシーベルト未満--などだが、現場の温度計の誤差は最大20度で、実際の温度は不明だ。また、線量は気体分だけで海への流出は含めておらず、曖昧さは否定できない。内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長でさえ「冷温停止状態なる言葉は使ったことはない。メルトダウン(炉心溶融)した原子炉の定義は難しい」という。

 「サイト内(原発敷地内)は収束したが、サイト外(敷地外)は別」(細野豪志・原発事故担当相)という政府の論法も、原子炉内部をだれも見たことがなく状況証拠でしかない。「収束」は、科学的根拠より、早期収束を印象づける政治判断を優先させたと言わざるを得ない。国民の生命、財産を守るはずの政府の姿勢としては疑問だ。

 西沢俊夫・東電社長は16日の記者会見で「工程表終了は一里塚」と言ったが、目標設定を下げた「一里塚」には意味がない。政府は、廃炉終了まで東電を監視し、必要な情報を公開し続ける義務を負う。「収束」「冷温停止状態」などの言い繕いは要らない。誠実に「本当の収束」を目指すことが、今の政府と東電に求められている。

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