朝日社説:福島の除染―中間貯蔵施設をどこへ
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福島の除染―中間貯蔵施設をどこへ
安心して暮らせる環境を取り戻すため、どんな手順で、どの程度の時間をかけて、放射性物質に汚染された土や落ち葉などを取り除いていくか。
東京電力福島第一原発の事故に伴う除染作業について、政府が工程表をまとめた。
大規模な作業を強いられる福島県での計画はこんな内容だ。
市町村ごとに仮置き場を用意し、3年ほど保管する。仮置き場から運び出す土などの受け皿として、県内に1カ所、中間貯蔵施設を造る。利用は2015年初めから30年以内とし、最終的には福島県外で処分する。
環境省の推計では、福島県で取り除く土や、落ち葉などを燃やした後の焼却灰は計2800万立方メートル、東京ドーム23杯分におよぶ恐れがある。除染をできるだけ早く始めるため、3段階の工程にした。
ところが、その実現の見通しがたたない。
まずは仮置き場だが、市町村ごとの場所探しが進まない。国有林などが候補地だが、保管が長期になることを恐れる住民から「いつ仮置き場がなくなるのか、見通しがないと受け入れられない」との声が相次いだ。
政府の答えは「3年」。だがその前提となる中間貯蔵施設の場所は「12年度中に決める」と先送りした。必要な面積は3平方キロメートル~5平方キロメートルで、保管期間は最長30年になる。その先の県外の最終処分場は文字通り白紙の状態で、立地の難しさは仮置き場の比ではないだろう。
しかし、中間貯蔵施設に早くメドをつけないと、仮置き場づくりも進まず、除染作業が遅れかねない。政府は責任を持って取り組まねばならない。
その際、福島県や県内の市町村の意向を尊重するのは当然のことである。
福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域のうち、原発に近い地域に自宅がある避難者の一部からは、中間貯蔵施設の受け入れもやむをえないとの意見が出ている。自宅周辺の汚染状況や、福島第一原発の先行きを考えた上での判断だろう。こうした声が広がるのかどうか、慎重に見極めたい。
中間貯蔵施設の具体策の検討とともに、土や焼却灰から放射性物質を分離し、汚染物の量を減らす研究も急ぎたい。既に10余りの方法について実証研究が始まっているという。
除染が順調に進むかどうかは福島再生への取り組み全体を左右する。とても難しい選択になるが、ここでつまずくわけにはいかない。
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