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2011年9月26日 (月)

ニュース争論:新生リビアとアラブの春 小池百合子氏/栗田禎子氏

http://mainichi.jp/select/opinion/souron/news/20110926ddm004070018000c.html
ニュース争論:新生リビアとアラブの春 小池百合子氏/栗田禎子氏

 リビアのカダフィ政権崩壊から1カ月が過ぎた。新生リビアに民主主義は根付くのか。そして、中東の民主化運動「アラブの春」の未来は? 日本リビア友好協会会長を務める自民党の小池百合子・総務会長と、栗田禎子・千葉大教授が論じ合った。【立会人・布施広、写真・須賀川理】

 ◆中東変えるイスラム化--日本リビア友好協会会長・小池百合子氏

 ◆欧米の干渉は禍根残す--千葉大教授・栗田禎子氏
 ◇安定と民主化の間で

 立会人 「カダフィ後」のリビアは安定すると思いますか。
小池百合子 自民党総務会長 日本リビア友好協会会長=東京都千代田区で2011年9月22日、須賀川理撮影

 小池 カダフィ政権は「恐怖による安定」の42年間でした。(政権崩壊で)これから安定を模索する長い旅が始まりますが、大佐の居場所はわからず戦闘は続いています。国民評議会が新たな暫定政府を樹立するにあたり、(1)反旗を翻したカダフィ政権の元閣僚(2)部族の代表・指導者(3)イスラム関係者(4)欧米で教育を受けた人々--をどういうバランスで配置するかが、難しい。新政権の仕上がり具合で安定の時期が決まるでしょう。

 栗田 リビアの人たちはカダフィ政権に「ノー」を突きつけ、自由、民主化を求めて立ち上がりました。「安定するのか」を問うよりも、むしろ「本当に民主化するのか」という問いをすべきかもしれません。カダフィ大佐は民衆に拒絶され、国際的にも見放されているので、復権はあり得ず、意外と早く安定があるかもしれません。ただし、カダフィ政権を支えていた閣僚が要職に就き、「カダフィなきカダフィ政権」ができると、立ち上がった民衆との間に矛盾が出てきます。
 ◇NATOの軍事介入

 立会人 北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入はどう思われますか。

 小池 NATOが出てきたのはリビアだからです。過去の国際テロ(への関与)の問題があり、カダフィ大佐の下、リビアは特殊な国で、憲法もなく、議会もないに等しい。民主化を人々の中から模索する動きが見られたエジプトやチュニジアとはまったく違う様相を呈しています。大佐は「アラブの狂犬」と呼ばれ、介入にアラブ各国が猛反対することもありませんでした。

 栗田 リビアの展開には光と影があります。独裁から解放されたのは前進ですし、リビアの人たちも希望を持っていると思います。一方、民衆の力だけで政権を打倒できず、外国の力を借りてしまいました。今後、経済・軍事面で欧米への従属が強まる可能性もあります。リビアはチュニジア・エジプト型の民衆の自然なデモとして始まりながら、欧米が「民主化」を口実に介入するといういつもの筋書きに戻り、イラク戦争型の「上からの解放」になってしまいました。

 立会人 アラブの春は今後はどのように展開、波及すると思われますか。

 小池 アラブでの春は過ぎてから「あれが春だった」と気が付くものです。2011年は分水嶺(ぶんすいれい)として記憶されるでしょう。この間、エジプトを訪れ、(穏健派イスラム原理主義組織の)ムスリム同胞団が浸透していることを痛感しました。よりイスラム原理に忠実なサラフィ主義者の活発な動きを目にしてエジプトでは「(穏健な)ムスリム同胞団の方がいい」と考える人が結構いました。大統領候補もムスリム同胞団に目配りしていますし、世俗的だったエジプトでもイスラム色は強まっていくと思います。

 栗田 国を安定させるには最大の政治勢力であるムスリム同胞団と手を組むのが手っ取り早いという発想から、軍部とムスリム同胞団の同盟が生じる可能性はあります。また、革命を抑え込もうとする内外の力が働き、テロや宗派紛争を引き起こし、混乱させることで革命に水を差す恐れもあります。
栗田禎子 千葉大教授=東京都千代田区で2011年9月22日、須賀川理撮影

 小池 共和国のチュニジア、エジプト、リビア、シリアで世襲を無理にやろうとしたことにそもそもの間違いがあります。シリアでは今、流血が深刻化しており、どこでアサド大統領が限界を理解するかにかかっているのではないかと思います。ただ、次のシナリオは見えません。イスラエルやクルド地域との関係から、(国際社会は)厳しい判断を迫られています。NATOも(リビアとの)二正面作戦はできず、介入しにくい状況だと思います。

 栗田 リビア同様、シリアの政権はデモで倒れる性格のものではありません。民衆の側は民主化勢力間のネットワーク作りや政権への働きかけなどの過程を探るべきでした。力と力でぶつかったら国家が強いので、政治闘争も含めたもっと巧妙な闘い方を工夫していくべきだと思います。

 小池 米国の相対的な力が落ちてきているのは否めず、今後、中東のパワーバランスは変わるでしょう。そんな中でトルコがリビア、パレスチナ、エジプト、シリアなどに関して存在感を示しているのは特筆すべきことだと思います。イスラムという切り口から見ても中東の軸は変わってきています。
 ◇アラブ対イスラエル

 立会人 アラブ民衆の反イスラエル感情が露出し、アラブ・イスラエル紛争が再燃する恐れはないでしょうか。

 栗田 パレスチナ問題の公正な解決を求める声が強くなるのは疑いありません。ただ、民主化を遂げたアラブの国々は今後、好戦的な言辞を弄(ろう)するのではなく、国際社会への平和的働きかけを強める手法をとると思われるので、「アラブ・イスラエル対立の再燃か」と恐れる必要はありません。パレスチナの国連加盟申請は構想自体は前からありましたが、パレスチナ自治政府のシャース議長顧問は「エジプト革命に勇気をもらった。その延長として国連加盟運動を闘う」と話していました。タハリール広場の民衆は「平和に!」と非暴力で闘い、強力なムバラク政権を倒しました。「エジプト人にできたのなら、自分たちも平和的に国際法に訴え、パレスチナ問題を解決できるだろう」と。

 小池 今回、パレスチナは局面を切り開こうと大きな賭けに出ました。中東和平交渉が進まない中、思い切った行動に出ることでパレスチナには失うものは何もありません。

 立会人 日本の取るべき対応は?

 小池 エジプト、チュニジア、リビアで民主主義国家をつくるにあたり、行政を進める人材育成で支援できるのではないかと思います。エジプトに設立された「エジプト・日本科学技術大学」(E-JUST)もその好例です。将来的な社会の安定のために「アラブの春」で表面化した若年層の失業問題に取り組むべきではないでしょうか。

 栗田 植民地勢力である欧米のまねをしないことが大事です。パレスチナ国連加盟も支援してよいのでは。「アラブの春」は親米独裁政権が進める新自由主義下で広がった貧富の差への異議申し立てでもあり、日本の青年もそこから学ぶことができると思います。

 ■聞いて一言
 ◇パレスチナにも及ぶ、旧体制崩壊させる力

 リビアには90年代に2度行ったきりだが、同じ独裁者でもカダフィ大佐はイラクのフセイン大統領、シリアの先代アサド大統領(ともに故人)らに比べ、どこか漫画チックで軽い印象があった。日本リビア友好協会会長でもある小池百合子氏はカダフィ政権の崩壊を前向きにとらえ、中東研究者の栗田禎子氏は欧米などの軍事行動に懐疑的な見方を示した。どちらの意見にも共感したのは、いずれは終わるべき体制ながら、どう終わらせるかが問題だと思っていたからだ。旧弊な体制は他にもある。「アラブの春」のエネルギーは、パレスチナの占領状態を終わらせる方向にも働くだろう。(布施)

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 ■人物略歴
 ◇こいけ・ゆりこ

 52年生まれ。カイロ大文卒。参院議員1期、衆院議員6期。環境相、防衛相などを歴任。昨年9月から自民党総務会長。日本リビア友好協会会長。

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 ■人物略歴
 ◇くりた・よしこ

 60年生まれ。東京大大学院博士課程修了。専門はエジプト、スーダンの近現代史。著書に「イスラーム地域の民衆運動と民主化」(共編著)など。
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毎日新聞 2011年9月26日 東京朝刊

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