沖タイ社説:[稲嶺市長就任1年]「名護流」脱基地の挑戦
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-02-08_14371/
[稲嶺市長就任1年]「名護流」脱基地の挑戦
政治
2011年2月8日 09時21分
全国自治体で最も苦悩しているのではないだろうか。稲嶺進名護市長はきょう就任一周年を迎えた。
やんばるを彩る桜を見上げると、まぶしいほどの青空にピンクの花弁が映える。同市でキャンプを張る日本ハムファイターズの話題とともにうららかな春のにぎわいが全国の茶の間に届けられる。
先週、市内で開かれた日ハム歓迎会で稲嶺市長は「キャンプに合わせて桜が満開だ。これまでは(名護は)基地問題が全国ニュースになった。今年は“ゆうちゃん”の話題で元気をもらっている」とあいさつした。
この落差そのものが歴代の名護市長の苦悩だろう。人口約6万人の市に日米同盟の重圧がのしかかる。政治の「不条理」の一つに米軍基地問題を上げた菅直人首相が市長の立場だとすれば、市民が嫌がる基地を容認するだろうか。
稲嶺市長が当選するや否や、民主党政権は牙をむき出しにした。当時の平野博文官房長官が「(選挙結果を)斟酌(しんしゃく)しない」と民意にそっぽを向け、後任の仙谷由人官房長官も「甘受してもらいたい」と言い放った。
暮れから年明けにかけて、菅首相を含め関係閣僚が相次いで沖縄を訪れた。普天間飛行場を移転できない代わりに、学校や病院を移転させよう、というアイデアを持ち出す前原誠司外務大臣に至っては、国民主権を忘れたかのようだ。
そんな政府に睨(にら)まれているのだから、名護市長という役職は想像を絶する気苦労がつきまとう。
住民から心に響く励ましの言葉はありましたか―と市長に尋ねてみた。電話での取材にも快く答えてくれた稲嶺市長は、「むしろひどい言葉に発奮したね」と言う。
「基地のカネでメシ食べているんだから、もらっておけよ」「お前たちが(米軍基地に)OKすればおれたちが安心なんだよ」。これまでに多数のメールやFAXが市役所に届いた。
心ない言葉にむしろ闘志がかき立てられる、とあっけらかんと話せるのも、「海にも陸にも新基地は造らせない」と訴え、市民に選ばれたからだろう。閣僚の放言も市長にエネルギーを注入しているのかもしれない。
閣僚の沖縄詣でが県庁止まりであることについて、稲嶺市長は「名護に来ると普天間の話題を出さないわけにはいかないから、足を向けないのだろう」とみている。
市長の「反対」の一言を聞くのが怖いのだろうか。
もちろん激励も多い。「負担を押し付ける側の一人であることが悲しい」とのコメントが本土から届く。
市長によると、沖縄防衛局が12月24日に米軍再編交付金の打ち切りを発表後1月24日までに、250~300件のふるさと納税申し込みがあり、数百万円という大口寄付も数件あるという。この支援の広がりはかつてない。
市長は「身の丈の行政をやるだけです」と淡々と語る。
自治と国策がぶつかり合う。民意を背にするのが政道であるはずだ。
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