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2010年12月30日 (木)

クローズアップ2010:「派遣村」なき年越し 行政のはざま、支援手薄

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20101230ddm003040067000c.html
クローズアップ2010:「派遣村」なき年越し 行政のはざま、支援手薄

 リーマン・ショック(08年秋)に伴う世界大不況以降、生活困窮者の年越しを支援してきた「派遣村」が今年は姿を消した。政府は「以前より状況が改善した」として、29、30日に都市部のハローワークを臨時開所することで対応可能と判断した。ただ、民間の支援団体には「年明けまでの緊急避難的な対策が必要」と態勢縮小を懸念する声がある。【市川明代、鈴木直、倉田陶子】
 ◇ハローワーク臨時開所、初日相談3700人

 08年の「年越し派遣村」の村長を務め、現在は内閣府参与として生活困窮者の支援策の立案にかかわっている湯浅誠氏は、派遣村見送りについて必ずしも認めているわけではない。「大みそかから1月3日までの間、行き場がなく、支援を必要とする人々が一定程度残ってしまうのは事実。十分な対応ができなかったのは私の力不足でもある」。そのうえで「住所が定まらない不安定な人たちの生活保障について、国が自治体間の財政調整に関与するシステムが必要だ」と指摘した。

 「年越し派遣村」に続き、翌09年には国が東京都に要請する形で「公設派遣村」が開設された。今年は一転して「イベント型支援」が見送られた。厚生労働省の担当者は「労働者の置かれた状況が改善した」と説明し、その理由として▽ハローワークでの就職支援▽自治体と連携しての生活資金貸し付けや住宅手当の支給--などの通年対策が実績をあげていると強調する。

 国が唯一かかわる年越し支援がハローワークの年末臨時開所だ。29日から2日間の予定で、都市部を中心に11都道府県19カ所の窓口を開ける。29日は計3700人余りが相談に訪れた。さらに国は各自治体に対し「それぞれの判断」で宿泊場所を用意するよう促した。19カ所のハローワークがある都市のほとんどは、宿泊先のない人が相談に訪れた場合に備え、ホテルなどを利用できるよう準備している。例えば千葉市は民間のホテルを5室、28日から年明け1月4日まで借り上げた。

 だが、国が派遣村を開設しなかった最大の理由は別にある。東京都の協力拒否だ。湯浅氏が指摘する通り、国と自治体、さらに自治体間の利害調整ができていない。

 「昨年のような派遣村は、東京は協力して行いません」。11月5日、石原慎太郎都知事は定例の記者会見で国への協力をきっぱりと断った。09年の公設派遣村で、利用者の一部が生活資金2万円を支給された直後に所在不明になったり、都外の困窮者が多数訪れたことが背景にある。

 東京23区も派遣村への警戒感を示す。閉村後の「出口」となるセーフティーネットがなく、利用者のほとんどが各区に生活保護を一斉に申請する結果になったからだ。東京への困窮者集中を嫌がる都は今年、宿泊場所についての情報すら最後まで公表しなかった。

 東京都のかたくなな態度について政府関係者は「昨年は東京をねじ伏せた。でも民主党政権の求心力が低下した今年は、逆にねじ伏せられた」とぼやく。ハローワークの年末オープンは、厚労省が都から引き出したギリギリの譲歩だった。

 NPO法人「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」の井上久さんは、国の説明に一定の理解を示しつつも、「緊急避難的な年末年始対策はまだ必要だ」と指摘する。

 同会は29日、新宿駅西口にテントを張り、生活相談とハローワークへの案内をした。この日は50人超が訪れた。30日も続ける。

 失職し、公園での野宿で着替えや所持金をすべて盗まれたという男性(48)は、ビラを受け取ってハローワーク新宿へ向かった。都の職員から、3日までのカプセルホテルの利用券とグルメカードを受け取り、「これで死なずに済む」と話した。
 ◇党内抗争、政権の関心低下

 民主党政権として初めて「年越し」を迎えた昨年末と比べると、派遣切りなどに遭った人たちに対する政権中枢の関心は低下している。厚生労働省幹部は「年末年始だけのパフォーマンスではなく、通年型の対策を進めている」と説明するが、党内抗争を抱えた菅直人首相らに余裕がないことも一因とみられる。

 細川律夫厚労相は29日午後、年末対策で延長開所している東京・飯田橋とさいたま市大宮区のハローワークを視察した。さいたま市での視察時間は約5分。20人ほどいた求職者に話しかけることもなかった。視察後、厚労相は「昨年と比べると、(生活や住居に)困っている人の数が少なくなっている印象を受けた。通年的な対策に取り組んできた成果が出ている」と記者団に語った。

 今年の元日、国家戦略担当相だった菅氏は当時の鳩山由紀夫首相とともに東京・代々木の公設派遣村に足を運んだ。派遣村の村長だった湯浅誠氏を政府内に取り込む人事も菅氏が主導した。しかし、この年末は自らの視察予定はなく、29日の視察を終えた細川厚労相から報告を受けるだけにとどめた。首相の指示は「年末年始の状況に対応できるよう注視してほしい」。昨年ほどの熱意はなかった。

 雇い止めの数が減少傾向にあることも、政権内での切迫感の薄れにつながっている。厚労省の調査によると、非正規労働者の雇い止め数は昨年1年間で12万5000人増加したのに対し、今年の増加数は4万4000人。12月分だけで比較すると昨年の3444人から今年は2188人に減った。

 厚労省政務三役の一人は「役所は28日で仕事納め。なのに29、30日に(主なハローワークで)特別相談を受け付けるんだから十分」と話している。

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 ■「派遣村」を巡る動き■

08年12月31日 市民ボランティアらが東京・日比谷公園に「年越し派遣村」を開設

09年12月29日 国と東京都が東京・代々木に「公設派遣村」スタート

10年 1月 7日 公設派遣村の利用者約860人のうち約1割が所在不明に

    2月 5日 派遣村利用者のうち482人が生活保護を受給したと都が発表

   11月 5日 石原慎太郎都知事が「派遣村には協力しない」と発言

   12月24日 小宮山洋子副厚労相が、公設派遣村は開設しないと明言
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毎日新聞 2010年12月30日 東京朝刊

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