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許すな!憲法改悪・市民連絡会

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2010年11月 6日 (土)

【土・日曜日に書く】特別記者・千野境子 一歩二歩、後退という悪癖 

千野さん、まだ健筆をふるっていますね。ご同慶の至りです。(高田)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101106/plc1011060310002-n1.htm
【土・日曜日に書く】特別記者・千野境子 一歩二歩、後退という悪癖 
◆ノーと言い過ぎる日本

 以前、「日本はノーと言い過ぎているのではないか」という元駐米大使、大河原良雄氏の見解を聞いて一瞬、聞き間違いではないかと思ったことがある。むしろ日本はノーを言えない国で、「ノーと言える日本」になれ、との声の方が大きかったからだ。

 真意は、対米交渉で「ノー」と言ったら最後まで通すべきで、「ノー」と言いながら、一歩下がり、二歩下がっていく。交渉態度として、これが非常にまずい、後味が悪いというもので、車、農産物、鉄鋼と日米経済摩擦真っ最中の80年代に、駐米大使を務めた元外交官ならではの実感だった。

 イエスであれ、ノーであれ、いったん決めたのにズルズルと後退していく。日本のこの悪癖は根深いといわざるをえない。合意から一転、事実上白紙に戻り、棚上げ状態の普天間基地移設問題は、その最たるケースだろう。

 そしていま、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に、その陥穽(かんせい)にはまった感のあるのが環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題だ。

 菅直人首相が珍しく?決然と所信表明演説で参加の意思を明らかにした途端、矢は内から飛んできた。しかも前首相以下、110人もの与党議員が束になってだ。

 理由は例によって「農業」である。食料自給率は大事だし、日本農業の崩壊もだれも望まない。しかし現実は農業を聖域視するあまり、各国との自由貿易協定(FTA)は頓挫(とんざ)し、肝心の農業再興も手つかずだ。その轍(てつ)を、またもや踏もうというのだろうか。

 すでにTPP参加の是非をめぐっては、さまざまな試算がある。慎重派の農水省と推進派の経産省とでは、案の定、正反対だ。合意形成より、各人の主張に執心しているだけのように見える。

 ◆TPPと日本の選択肢

 TPPでもっとも大事な事実は対象となるアジア太平洋地域経済圏が、21世紀の一番の成長センターであり、世界最大の経済規模を持つということだ。

 日本が孤高を貫く覚悟があるなら、この貿易ルールの枠組み作りに参加しない選択肢もある。けれど圧倒的な経済圏を前に、覚悟が一歩、二歩と後退していくのは時間の問題で、遅れて参加するという、みじめで後味の悪いパターンになるのは目に見えている。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)とのFTAを中国があっという間に結び、日本が先んじられた衝撃を忘れたわけではあるまい。9日の事務レベル協議には日本、カナダ、フィリピンとともに、中国も参加するという。関係者によると、中国の参加は想定外らしいが、ダイナミックに展開するアジア太平洋は、もはや予定調和の世界ではないと考えた方がよい。

 経済規模の小さい4カ国(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ)で2006年に発効したTPPは、米国の交渉参加で局面が大きく変わった。敏感に反応したのはベトナムだ。原子力発電所の発注も日本とロシアに分けるなど戦略的思考に長(た)けた同国は、米国の入るTPPは対中国の保険になると手を挙げた、とASEAN外交筋は解説する。

 ◆APEC議長の指導力

 思えば、中国漁船衝突事件もロシア大統領の北方領土訪問も、ノーと言いながらズルズルと後退を重ねたツケともいえる。この悪癖に早く終止符を打たないと、日本は立ち行かない。

 菅直人首相が議長となるAPEC首脳会議を、その機会とすることができれば、ピンチは一転、チャンスになるかもしれない。

 TPPの沸騰する議論の陰にすっかり隠れた形だが、今回はアジア太平洋自由貿易圏構想(FTAAP)の道筋をつけることや成長戦略の策定が重要な課題だ。

 菅首相は議長特権を活用しない手はない。TPP参加も、先送りは問題外だが、「参加を検討」とか「情報収集のため協議」といった玉虫色もやめ、TPPの議論を率先してリードし、「日本も変わった」くらいの印象を与える積極性がいまは要る。農業問題もその中で活路を見いだすほかない。

 来年、ハワイでAPEC首脳会議を主催する米国は、TPPをそれまでにまとめる青写真を描く。東アジア首脳会議への参加と併せて、米国がアジア太平洋への関与を仕切り直しする戦略の一環であることは明らかだろう。

 日本がAPEC議長を務めるのは大阪以来、15年ぶりのことである。言い換えれば今後15年、その機会はもう来ないといってもよいのだ。そう考えれば、日本は幸運の女神からまだまだ見放されたわけではないのである。

 いまだに指導力発揮とはいかぬ菅首相を見ていると、ついつい女神の助けも仰ぎたくなる。(ちの けいこ)

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