北海道新聞社説/安保改定50年 軍事に偏らぬ体制こそ(6月27日)
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北海道新聞社説/安保改定50年 軍事に偏らぬ体制こそ(6月27日)
日米安全保障条約の改定発効から50年がたった。
この間、冷戦終結、米同時テロなど国際的な安全保障環境の変化を踏まえながら、条約は事実上の改定を重ねてきたと言える。
1996年の日米共同宣言、99年の周辺事態法制定、そして2005年の「未来のための変革と再編」合意-。対象範囲が「極東」から「アジア太平洋」「世界」へと拡大し、日米の軍事一体化は進んだ。
一連の改定がかつてのように広範な国民的論議を巻き起こさなかったのはなぜだろう。政府が宣言や新法の持つ意味を丁寧に説明せず、実態を隠そうとしたためではないか。
見て取れるのは、日米密約と同様の秘密主義の伝統である。
国民の理解という裏打ちがない政府間合意はいつか脆弱(ぜいじゃく)性をさらけ出す。沖縄の米軍基地問題を見れば明らかだ。日米両政府は10年以上の間、そのことを学んできたはずだ。
普天間問題をめぐる鳩山由紀夫前政権の挫折をどう見るべきか。
手法は拙劣だったにせよ、鳩山氏が「県外移設」を模索したことで沖縄の過重な基地負担に光が当たった。在日米軍の「抑止力」に関する評価も政治の場で取り上げられた。
国民に向かって実情を率直に語りかけ、日米安保体制のあり方をともに考えていく-。菅直人首相に求めたいのは、透明性の高い安保論議を主導し、政府と国民との認識の溝を埋めていく努力である。
朝鮮戦争開戦から25日で60年を迎えた。記念式典で韓国の李明博(イミョンバク)大統領は海軍の哨戒艦沈没について北朝鮮の謝罪を求めた。
いまも冷戦構造が残る中、南北の緊張は高まっている。
首相はそこに「不確実性」があると再三指摘してきた。であれば、脅威の内容や米軍が果たす役割を具体的に説明する必要がある。日本が北東アジアの平和と安定に貢献していく上でも重要なことだろう。
「日米同盟」を外交の基軸に据える首相は、20カ国・地域(G20)の首脳会合(金融サミット)の際にオバマ米大統領と初会談する。
両国は条約改定50年を節目として「同盟深化」の協議を行い、11月のオバマ氏来日の折に新しい共同宣言を発表する段取りでいる。
官僚や政治家だけで話し合うのでは従来の安保協議の枠を一歩も出ない。「深化」はまず国民的な議論を深めることから始めたい。
在日米軍の機能をいかにとらえるか。文化などのソフトパワーを安全保障にどう生かすか。
改定から半世紀を経て、幅広い視点で軍事偏重の安保条約を検証し直す機とすべきだ。
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