産経・ 【イチから分かる】国民投票法 最終的には国民が決める
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【イチから分かる】国民投票法 最終的には国民が決める
2010.5.19 07:51
憲法改正の手続きを定めた国民投票法が18日に施行された。安倍晋三政権当時の平成19年5月に国民投票法が成立、公布された際には、憲法改正の機運が高まったかに見えたが、国会はこの3年間、憲法改正の論議をほとんど行っていない。昨年夏の衆院選で初当選した新人や国政返り咲き組の中には、国民投票法を十分理解していない議員もいるのが実情だ。施行を機に、その内容をおさらいしてみた。(原川貴郎)
日本国憲法は、第96条で憲法改正の手順を次のように定めている。
「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」
簡単に言い換えると「憲法改正は国会が提案する。しかし、最終的には国民が国民投票で決める必要がある」ということだ。
しかし、3年前まで国民投票を実施するための法律はなかった。つまり憲法が想定している憲法改正が、実際にはできないという仕組みが、昭和22年5月3日の憲法施行以来、60年にわたり放置されていたのだ。
国会では平成12年、衆参両院に憲法調査会が設置され、国民投票法制定に向けた検討を開始した。17年には衆院憲法調査会が衆院議長に、国民投票法の早期制定を提言した。
こうした流れを受け18年5月、自民、公明の与党両党(当時)と民主党がそれぞれ法案を提出。最終的には19年4月の衆院本会議で民主党など当時の野党が採決に反対する中、自民、公明両党が採決に踏み切り可決、5月には参院で自公両党などの賛成多数で可決され、成立した。
国民投票法は、投票の対象を憲法96条が定める憲法改正だけに限っている。投票権年齢は本則で18歳以上とされた。高校生も参加する可能性があるわけだ。ただし付則の規定で、公職選挙法上の投票権年齢や民法上の成年年齢などとの調整が終わらないうちは、投票権年齢は20歳以上とされている。
国会は国民に対して、憲法改正の発議を個別の事項ごとに行う。例えば、「憲法第9条の改正」と「環境権の創設」を提案する場合、2つの憲法改正案が作成され、国民投票はそれぞれ国民が意思表示することになる。
実際に国民投票が実施され、憲法が改正されるまでには、(1)衆院は100人以上、参院は50人以上の議員の賛成者が憲法改正原案を国会に提出。または衆参の「憲法審査会」が原案を作成し提出(2)衆参それぞれの3分の2以上の議員の賛成を経て、憲法改正を国民に発議(3)国民投票の過半数の賛成で承認(4)天皇が国民の名で公布する-というプロセスが必要だ。
憲法審査会は“幽霊”状態
隣国の韓国は昨年12月までに憲法を9度改正しているが、現在の方法は、国会の3分の2以上の賛成の後、国民投票(有権者の過半数の投票と投票者の過半数の賛成)で決まる。スイスでも憲法改正に国民投票の手続きを設けている。
国民投票法の施行までの3年間は、衆参両院の憲法審査会が憲法改正の具体的項目を検討する調査専念期間のはずだった。しかし、国民投票法とセットの改正国会法で衆参両院に設置された憲法審査会は、今も委員長や委員が選任されない幽霊機関の状態が続いている。自民党政権時代から民主党が、憲法改正に反対する党内左派や社民党に配慮して、審査会の始動に応じないでいるためだ。
自民党は国民投票法の施行を機に、憲法改正原案の今国会提出を検討している。しかし実際に提出しても憲法審査会が機能しないため、国民投票にかけられることはない。施行されたものの、国民投票法が機能する見通しは立っていないのが現実だ。
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