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許すな!憲法改悪・市民連絡会

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2010年2月 1日 (月)

【日本よ】石原慎太郎 国家の戦略とは何か

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100201/plc1002010324007-n1.htm
【日本よ】石原慎太郎 国家の戦略とは何か

最近、畏友猪瀬直樹氏から興味深い記事について教えられた。

 フランスの有力紙が中東の産油国アラブ首長国連邦の新しい原子力発電所の建設の権利を韓国が大統領自らの売り込みでせしめてしまったと報道し、これはかつて一国の運命を左右したウァーテルロオの戦いやトラファルガーの海戦にフランスが敗れたに等しいと切歯扼腕(せっしゃくわん)、慨嘆していた。

 フランスは最近まで日本と並んで、次世代の有力なエネルギー供給手段と目されていた高速増殖炉の開発に腐心してきた、原子力開発では先進国としての沽券(こけん)を構えている国だが、その国の有力紙が、こともあろうに韓国にしてやられたということにかくも憤慨、慨嘆しているのは、なるほどとも思われる。

 考えてみれば、韓国はいろいろ可能性を備えた国ではあるが、こと原子炉に関しては独自の優れた技術を保持しているとは聞いたことがない。純韓国製のタービンは存在するのだろうか。

 石油資源で台頭してきた中東の産油国に、石油ならざるエネルギーの供給手段を提供するというある意味では、画期的なプロジェクトをその技術面ではさしたる存在でもない韓国が請け負ってしまうというのは、原子力開発に関しては自負のあるフランスにとっては、我慢ならぬことかも知れないが、それ以上にこの日本の立場はどういうことになるのか。

 日本の東芝は先に世界有数の原子炉開発の企業であるウェスティング・ハウスを買収しその傘下に収めている。東芝だけではなしに、日本の他の有力企業も合わせて原子炉に関する日本企業のシェアは世界では群を抜いて高い。中東での原子炉建設のプロジェクトが推進されていく際、結局日本の企業が技術的には請け負うことになり、それを斡旋(あっせん)する韓国が多大な口銭をせしめるということになるのだろうか。

 ともかくも原子炉大国を自ら任じるフランスはこの事態に、ウァーテルロオの戦いに敗れたごときに痛憤しているが、日本の中ではそんな声は一向に聞こえてこない。ここら辺の差が私には我慢出来ない。実際に作業を担当する企業はやがては仕事がとれるということで満足するのかも知れないが、自らが得意とする技術を駆使しての国際プロジェクトを自らの手で獲得出来ぬという国家としての体質に問題があるのだ。

 かつて、フランスを訪問した池田勇人総理のことをドゴール大統領は、「あの男は、総理大臣というよりもトランジスターのセールスマンみたいだ」と皮肉ったが、それで良いではないか。池田総理がドゴールとどんな話をしたかは知らぬが、国家の能力を表象する技術を誇って売り込むのは決していやしい作業でありはしない。政治家の大事な責任の一つでもある。

                   ◇

 文明の進展は必ず新しい技術に依るものであり、技術こそが端的に国力を表象する。少子高齢化がすすみ国民の心がなんとなく萎(な)えてきている今の日本で、この国の力を表象するものは我々の持てる優れた技術くらいしかありはしない。

 そしてそれをかざし踏まえて国力の進展を計ることこそが国家の大計、戦略に他ならない。原子力に限らずこの日本には他にも誇るべき世界に比類のない技術が沢山あるのにそれを心得て遂行する政治家も官僚も一向に見当たらない。

 例えば、水。

 今の世界で、蛇口をひねって安心して水の飲める国はわずか十一しかない。日本はその中でも最も進んだ技術を持っている。東京の水道水は五次処理までされていて、防腐剤の入った市販のミネラルウオーターよりも安全安価だ。パリの水はとても飲めたものではないが、そのフランスはかつての植民地インドシナ半島三国に水道のシステムを輸出しようとしていると聞いたが、同じアジアの日本がそうしたプロジェクトに関心があると聞いたことがない。

 世界には冠たる?アメリカの航空機産業は日本の技術による高級部品なくしてはなりたたない。

 性能が優秀すぎるので日本への提供に難色を示しだしたF22戦闘機の、レーダーに映らぬ外面の特殊塗装は日本の技術によるものしかない。高度な軍用機や旅客機のコックピットはほとんど日本製だ。航行計器を包むダッシュボードのセラミックや中に入っている液晶体はすべて日本製。しかし、そちらが売らないなら、こちらも売らないという交渉をこの国の政治家はしようとはしない。

 クリントン政権の末期、アメリカは日本の技術に関する大掛かりな調査団を派遣してきたが、目的はdual use technologyの調査。つまり日本では民間用品に使われている技術を、彼等は軍事目的に転用活用出来ないかということだった。

 きっかけは、その年にソニーから発売された子供のゲーム機器プレイステーション2に搭載されていたマイクロ・チップが、なんと彼等の宇宙船に使われているものの四倍のメガビットの性能を備えていると知って仰天した結果だった。それがそのまま中国やロシアなどに流れたらアメリカの世界戦略に支障を来しかねぬから、その規制を強いてもきた。

 彼等も大切な部品の提供を日本から仰ぐのが業腹だから、関係企業のかなり深部の生産行程まで強引に調べてみたが、同じ性能の部品を自分で作るには倍の金と時間がかかると判断してあきらめた。

 昔の話だがブッシュの父親大統領の時の湾岸戦争でも、ソヴィエトから最新の兵器を供与されていたイラクとの通常兵器による一種の代理戦争でアメリカが容易に勝利出来たのは、中曽根時代にアメリカに限っては戦略技術を提供してもいいという画期的な裁断のおかげで、戦後の報告書にも十幾つかの項目を挙げて、我々はこれらの日本の技術によって勝利出来た、その貢献度は十数万の兵隊を送ってともに戦ったイギリスの貢献の数十倍に値すると書かれていた。アメリカもソヴィエトもそれをよく知っているが、知らぬのは日本だけということだ。

 江戸時代の成熟が生んだ『浮き世絵』の素晴らしさにフランスの印象派の画家たちは驚嘆し、それぞれの絵に組みこんだものだったが、文明開化後の日本人は卑屈にそれを恥じて売り飛ばした。

 身の程を知らぬ人間は滑稽(こっけい)だが、己の優れた能力の程も知らず、それを国家の大計、戦略に組みこめぬ国家は滑稽ですまず、哀れでしかない。

 故にも、国がやらないから代わりに東京都はある画期的な試みを行うことにしている。

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