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2009年7月 6日 (月)

【正論】同志社大学教授・村田晃嗣 「北朝鮮」で首相の手腕を期待

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090706/plc0907060303004-n1.htm
【正論】同志社大学教授・村田晃嗣 「北朝鮮」で首相の手腕を期待
≪30年の目まぐるしい変化≫

 今から30年前の世界を思い起こしてみよう。まず、1979年1月1日に、アメリカと中国が30年ぶりに国交正常化を果たした。国際政治の大きな構造変化であった。ほどなくイランでイスラム革命が起こり、アメリカは大使館を占拠されて苦境に陥る。他方、中国は工業・農業・国防・科学技術の「四つの近代化」をひた走っていた。イランは原理主義に、中国は実務主義へと、対照的な進路をとったのである。

 この年、日本は初めて先進国首脳会議(サミット)を東京で主催し、大平正芳首相が議長を務めた。ヨーロッパ共同体(EC)の文書が日本の住宅事情を「うさぎ小屋」と記述したことが話題になったが、日本経済は全盛期に向かいつつあり、アメリカの日本専門家エズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が翻訳されて、ベストセラーになった。駐日米大使マイク・マンスフィールドは、貿易摩擦に悩む日米関係を「世界で最も重要な二国間関係」と呼んで、危機管理に余念がなかった。

 この慌ただしい年は、10月に韓国の朴正煕大統領が側近に暗殺され、12月にソ連がアフガニスタンに侵攻することで幕を閉じ、1980年代に道を譲った。

 あれから30年、紆余(うよ)曲折を経て、今や米中関係こそが「世界で最も重要な二国間関係」(ヒラリー・クリントン)と呼ばれ、米中のG2によるグローバル・ガバナンスさえ議論されている。中国は「四つの近代化」に大きな成果を収めたが、反体制派が「五つ目の近代化」と呼ぶ民主化は遅延したままである。

 イランは依然としてアメリカを悩ませているが、イスラム革命体制にも綻(ほころ)びが見えてきた。30年前にカーター米大統領はイランへの対応に失敗して政治生命を絶たれたが、今のところオバマ大統領はより慎重な対応をとっている。

 ≪中国のGDP日本越えか≫

 30年前に大統領の暗殺という悲劇を経験した韓国は、今年また前大統領の自殺という悲劇に遭遇したが、民主化の実績は揺るがない。かつてソ連軍を苦しめたアフガニスタンは、今度は米軍を苦しめている。イラクではなくアフガニスタンこそが、オバマ大統領にとっての「第二のベトナム」になるかもしれない。

 さて、肝心の日本である。

 ほどなくイタリアでG8サミットが開催される。麻生太郎首相にとって最初のサミットであり、おそらく最後のサミットになるであろう。そして、日本が世界第二の経済大国として、アジアを代表してこの会議に臨めるのも、あるいは、これが最後になるかもしれない。来年には中国の国内総生産(GDP)が日本のそれを150年ぶりに越えるとの見通しもあるからである。

 1970年代の日本政治は、保革伯仲の時代であった。1980年の大平首相の急死と衆参同時選挙の結果、自民党が大勝し、以後80年代には自民党の安定政権が続いた。それに対して、来るべき解散・総選挙では、自民党政治の大幅な後退や場合によっては崩壊が予想されている。30年前に比べて、日本の経済も政治も相当衰弱しているのである。

 その上、30年前には顕在化していなかった北朝鮮の脅威に、日本は直面している。すでに、サミットには30年前のような影響力はない。とはいえ、サミットで北朝鮮問題にどの程度国際的な関心を集められるかは、麻生首相にとって、数少ない腕の見せ所ではなかろうか。

 ≪米国と協調し手腕発揮を≫

 確かに、北朝鮮問題は深刻である。しかし、北朝鮮体制は早晩崩壊するであろう。北朝鮮問題は、より長期的かつ本質的には、中国が北朝鮮を抑制できるか、また、その意思を有するかという中国問題である。急速に大国化する中国が、自国の狭い国益を越えて国際秩序の形成と維持に責任を負えるか否かが問われている。

 オバマ大統領にとっても、今回が初のG8サミット出席となる。イラン問題にどう対処するか、アフガニスタン問題でいかに国際的協力を確保するかが、大統領にとっては重要な課題であろう。前回の洞爺湖サミットは、リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)前だったこともあり、国際金融の規制について十分な議論ができなかった。今回のサミットでは、この分野の議論も掘り下げなければならない。

 なにしろ麻生首相は、国内政局の不安定な中でのサミット出席である。「外交の麻生」を自任する首相だが、どれだけの成果が挙げられるかは不明である。だが、北朝鮮問題をアジェンダ(重要課題)に乗せながら、イランやアフガニスタン、国際金融、地球環境問題、核軍縮などでも、オバマ大統領と協調しつつ、手腕を発揮してもらいたい。

 もはや30年前の日本とは異なる。「世界第二の経済大国」として存在を示すだけでは意味がない。サミット外交にも一層の手腕が求められるようになっているのである。(むらた こうじ)

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