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許すな!憲法改悪・市民連絡会

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2009年7月 5日 (日)

<オピニオン>北朝鮮の核実験 インタビュー・石破茂さん、浅尾慶一郎さん」

一月半も前の記事だが、インターネットで採れなくて残念に思っていた。ブログに掲載している方が居たので、備忘録として転載しておきたい。私も各地での講演の際に紹介してきたが、この石破氏の見解がとても面白いのだ。(高田)
http://ameblo.jp/warm-heart/entry-10269408777.html
朝日新聞の5月27日付、東京朝刊、19面に「<オピニオン>北朝鮮の核実験 インタビュー・石破茂さん、浅尾慶一郎さん」という記事が出ていた。

北朝鮮が核実験を強行した事態にあたって、自民党元防衛大臣の石破茂氏と民主党「次の内閣」防衛大臣の浅尾慶一郎氏に、それぞれインタビューしたものである。

両者ともにそれぞれが、自民党と民主党の防衛政策策定の中心を担っていた(or 担っている)人物なので興味深い記事である。

電子版にはアップされていないので、以下「朝日新聞記事情報/G-Search」から検索、転載する。

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◆米中対話で不拡散維持を 現実的でない強硬策 脅しに屈せぬ抑止力こそ 石破茂さん

 --現在の自公連立政権には前回06年10月の核実験に直面した経験があります。今回の核実験を受け、北朝鮮にどう対応していけばいいのでしょうか。

 「北朝鮮は体制の維持と北朝鮮主導による朝鮮半島統一ということは一度もぶれていない。その手段としてミサイル、核実験と着々と進めている。日米韓がいくら言ってみたところで、後ろ盾に中国がいれば、経済制裁をしようが何をしようが、それでいいということになってしまう。だが、中国にしてみれば、核のある朝鮮半島統一は全然望まない」

 「問題はこれで分水嶺(ぶんすいれい)を越えたと判断すべきかどうかだ。朝鮮半島について米中でどういう話し合いがなされるのか。ロシアや韓国の思惑もあるが、北朝鮮にしてみれば米国と友好平和条約の締結をすれば、スポンサーとして日本がついてくる。中国にとっても朝鮮半島のありようでは米国とまた違う考えがある。要は米中で話をする段階に来たということだ。米国が北朝鮮を核保有国として認めることはあり得ない。インド、パキスタンのように事実上保有国として認めることもないだろう。核不拡散体制が崩壊するからだ。その点では中国と思惑が一致する。核不拡散体制の維持ということに共通の利益を見いだす米中の話し合いをしてもらわないと、前に動かない」

 --米中の共通利害を前提に中国の変化を注視していくということですか。

 「(中距離弾道ミサイル)ノドンは200基以上が配備されており、加えて核も小型化されているかもしれない。今回の核実験をみれば核を制御する力を相当もってきたようにみえる。小型化だってあり得ない話ではない。日本に核が降ってくる危険性はあるわけだ。北朝鮮が核を持ったとするならば、抑止力について日米でどこまできちんと話をしているのかが問題になる。きょうのオバマ米大統領と麻生首相の電話会談では、抑止力の話が大統領からあったと報道で承知している。ただ、『いざとなったら米国が核で守るから心配するな』というだけでは不十分で、少なくとも北大西洋条約機構(NATO)で行われているように、核をどのような時に使い、どのようなときに使わないのかという協議が必要だ」

 --北朝鮮が強硬姿勢を示すと、貨物検査や敵基地攻撃論などの強硬論が政界や一般世論に台頭する現状があります。

 「敵基地攻撃論については私が防衛庁長官の時に法的には排除されないといってきた。東京を火の海にするという宣言があり、ミサイルを日本に向けて撃つ段階であれば、そこをたたくのは理論的にはあり得る。ただ、ノドンがどこにあるのか分からないのにどうやってたたくのか。200基配備されているとして二つ三つつぶして、あと全部降ってきたらどうするんだ。まことに現実的ではない」

 「経済制裁もあとやれるのは数億円ぐらいのもの。経済制裁は『やるぞ』ということに意味があるのであって、やっちゃったら、それに合わせて向こうは考える。精神論としていいかもしれないが、その程度。北朝鮮も日本が入っているような6者協議はやめだと主張する。経済制裁論も、安保理決議も意味はあったと思うが、北朝鮮が日本の入る6者協議はもういらない、と主張することに利用されないよう考えねばならない」

 --拉致問題はどうしますか。

 「それは核も拉致もどちらも大切だ。私は拉致問題を軽視するつもりはまったくない。ただ、いま日本が直面する危機は何なのか。仮に日本に核ミサイルが降ってくる事態になったとき、拉致問題は解決するのか。核ミサイルの脅威を取り除き、北朝鮮が国際社会に復帰して話ができる状態になるということが、拉致問題解決のためには極めて重要だ。拉致も核もどっちも大事なのだ。拉致問題を解決するために、北朝鮮の核の危機を除去することは大切だと思っている。拉致問題はいずれにしても解決しなきゃいけない。だけど、敵基地攻撃なんていう現実性のないことを言っていてどうする。貨物検査もいいがそのための法整備はどうする。北朝鮮が核実験をしたら、急に世論が沸騰し、やれ核兵器保有だ、やれ敵基地攻撃だというと、『日本はこんなこと言っているから、協議から外そうよ』となっちゃう」

 --これまで日本は「対話と圧力」でやってきました。

 「『対話と圧力』は当たり前の話。誰も否定しない。だけどその圧力の中には経済制裁だとか、核保有だとか、敵基地攻撃だとかが入っているので、日本人が思っているほどの効果はないかもしれない。それよりやるべきことは抑止だ。北が核ミサイルを持っても、日本の独立と平和、国民の生命と財産は守るというきちんとした体制をつくる。これは地道な話だし、ふだんはうけない。でも、着実に抑止力を高めるのが大切なのだ」

 --「対話と圧力」にかわるスローガンはありますか。

 「脅しに屈しない抑止力の確立、だろう。北の目的は経済復興にある。12年に『強盛大国』になると言っている。そのための米朝国交回復だ。北朝鮮が見ているのはあくまでも米国。日本はプライオリティーが低い。対話と圧力を効果的に組み合わせることは必要だが、そこで日米に齟齬(そご)があってはならない。対話も圧力も日米の緊密な連携の下におこなわなければいけないのだ」(聞き手・吉田貴文)

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 いしばしげる 農水相・元防衛相・自民党衆院議員 57年、鳥取県生まれ。慶応大卒。三井銀行勤務を経て、86年の衆院選で自民党から立候補し初当選。当選7回。防衛相などを歴任し、防衛問題に精通。08年9月から農水相。

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 ◆貨物検査へ法律つくり 敵基地攻撃の議論も 日本の「本気」を打ち出せ 浅尾慶一郎さん

 --北朝鮮の核実験の意図と狙いをどうみていますか。

 「北朝鮮にすれば、国際社会の注目を集めて外交上の成果を上げたい、あるいは、核保有国と認めてもらうことで、イラクのような体制崩壊を防ぎたいということかもしれない。仮にそれが狙いであれば、間違っていると日本として訴えなければならない。彼らの意図や狙いがどうであれ、北朝鮮が核を持つことは日本にとって容認できない、というメッセージをまず強く打ち出すべきだ」

 --具体的には。

 「国際社会は北朝鮮の核開発を決して容認しないという意思を示す。新たな国連安保理決議と同時に、既存の決議で可能なことも徹底すべきだ。前回06年10月の核実験に対する決議では、北朝鮮の核・ミサイル開発につながる物資の輸入を阻止するため、北朝鮮に出入りする貨物の検査ができるとされた。しかし公海上で、北朝鮮に向かったり北朝鮮から出てきたりする船舶の貨物検査を行う法律が、日本にはない。そういう法律をつくる姿勢を示すことで、明確にわが国の意思を示すことができる。米国など他国と協力して貨物検査をする姿勢を示せば、国際社会の意思を示すことになる。相当な圧力を北朝鮮は感じると思う」

 --中国は貨物検査に消極的だったようです。

 「現在は、世界の国々に対して日本に同調してもらうためのカードがない状態で、ただ『核実験はケシカラン』と言っているに過ぎない。既存の安保理決議に基づき、貨物検査を法律でできるようにすべきだという議論が、中国や北朝鮮へのメッセージになり、カードになる」

 「過去に北朝鮮がそれまでの敵対的な路線を明確に変えたことがある。北朝鮮が核不拡散条約からの脱退を表明し、核開発施設の稼働を再開した03年2月に、中国東北部から北朝鮮へのパイプラインによる重油供給が止まった時だ。その後、北朝鮮は4月の米朝中3者協議に応じ、8月には6者協議に参加した。北朝鮮はエネルギーの大部分を中国に依存している。中国が今回、そこまで北朝鮮に圧力をかけられるかどうか、だと思う」

 --中国にはどう働きかけますか。

 「北朝鮮が核や(中距離弾道ミサイルの)ノドンを保有するということになれば、『日本も敵基地攻撃能力を持つべきではないか』という議論が出てくる。最初から、持つべきだ、持つべきではない、とかの結論ありきではないが、仮に北朝鮮が無謀な核実験を繰り返すことによって、わが国も防衛力を高めなければということになれば、それは中国にとって望ましいことなのか、ということになる。中国も北朝鮮に強く自制を求めないと、日本の国内世論は納得しませんよ、ということを伝えるべきだ。そういう議論の間に、周辺国が北朝鮮に影響力を行使すれば、日本にとっても望ましい方向で収束するのではないか」

 --民主党政権ならどうしますか。

 「今言ったようなことに取りかかることになる。まず法律をつくって、公海上で貨物の検査をできるようにする効果は大きいと思う。こういう話は与野党関係なく、圧倒的多数の議員の賛成が望ましいし、政局として扱うべきではない。私たちの仲間からも、『国会として取り組むべきだ』との声が出てくるはずだ」

 --北朝鮮が核・ミサイル開発を着々と進めているという現実の脅威にはどう対応しますか。

 「万に一つでも、北朝鮮のミサイルが日本に命中することは阻止しなければならない。すべて撃ち落とすようイージス艦や陸上配備型の迎撃ミサイルを配備するとなると、天文学的な金額がかかる。今のミサイル防衛では100%守ることは不可能だ。確実なのは先にたたくということ。例えばオーストラリアが導入を計画している巡航ミサイルのトマホークのようなものを持つのも、一つの選択肢として考える。もちろん、そう結論づけるには早い。だが、こうした議論を通じて、日本も本気だということが他国に伝われば、中国などの北朝鮮に対する対応も変わってくることもあり得る」

 --中国にすれば、日本のそうした能力は大変な脅威と感じると思いますが。

 「この軍縮の時代に馬鹿げた軍拡をやるつもりは全くない。しかし、手段がなければそうならざるを得ない、という声が日本の中でも強まってくるということを、政府・与党は国際社会に明確に伝えてこなかった。『平和国家なのに何だ』と批判されかねない国内状況もあったと思う。私たち野党がこういうことを言えば、政府も『政権維持のため、弱腰だと言われないため、我々も対応せざるを得ない。北朝鮮の脅威がなくなれば、その必要もなくなるので、協力してほしい。我々を追い込まないでほしい』というメッセージを国際社会に伝えられる。日本の政治家の最大の務めは国民の生命・安全を守ることだ。北朝鮮が核・ミサイル開発を続ければ、敵基地攻撃が感情論ではなく、日本として必然的な結論にならざるを得ないかもしれない」

 --拉致問題はどうなりますか。

 「核・ミサイル開発で挑発する北朝鮮が拉致問題で努力するとは思えないし、努力していると言っても額面通りには受け取れないというのが合理的な帰結だ。拉致問題解決のためにも、核・ミサイル開発を断念させることが必要でしょう」

 (聞き手・杉井昭仁)

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 あさおけいいちろう 民主党「次の内閣」防衛相・参院議員 64年、東京生まれ。東京大卒、米スタンフォード大経営大学院修了。日本興業銀行勤務を経て、98年の参院選で民主党から立候補し初当選。07年9月から「次の内閣」防衛相。

朝日新聞社

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