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2009年4月22日 (水)

水島朝穂さんの「憲法改正手続法の附帯決議について」

水島さんが彼のブログに文章を掲載している。貴重な論考なので、ぜひ読んで頂きたい。(高田)
http://www.asaho.com/jpn/
1 年後に施行が迫った法律について、先週、早稲田大学比較法研究所のホームページに短い文章を出した(英文)。その日本文を下記に掲げることにしたい。何度か書いてきたものをまとめたものだが、再確認のため、以下掲載する。


憲法改正手続法の附帯決議について

憲法改正手続法(2007年5 月18日・法律第51号)。日本国憲法第96条の憲法改正条項を具体化する手続法である。「憲法改正国民投票法」とも呼ばれる。日本国憲法制定から60年後にようやく成立した。憲法改正の手続きを定める技術的な法律だが、憲法改正をめぐる政治対立が反映して、これまで整備されてこなかったものである。当時の安倍晋三内閣の強引な政権運営の結果、国会審議の途中で強行採決がなされ、野党の賛成を得られなかったばかりでなく、内容的にも多くの問題を残した。そのことを象徴しているのが、参議院の「日本国憲法に関する調査特別委員会」における「附帯決議」である。18項目の内容は、日本の立法史上、際立って異例な特徴をもつ。

そもそも附帯決議とは、国会の委員会で法案や予算案の採決にあたり、所管する省庁に対する運用上の努力目標や注意事項などを盛り込む決議のことをいう。野党側が法案賛成の際の条件として付けることが多い。政治的、道義的性格をもち、法的拘束力はない。

この18項目という数字は、特段に多いというわけではない。近年では、2005年の改正介護保健法の24項目、障害者自立支援法の23項目という例もあるからである。では、何が問題なのか。

まず、最低投票率の問題がある。例えば投票率30%という場合、憲法上過半数で憲法改正は可能となるから、有権者の15%強でも憲法改正は可能ということになる。そこで、「憲法改正の正当性に疑義が生じないよう」に、本法施行までに「最低投票率制度」を検討すること、という項目が盛り込まれた(第6 項)。法案審議の過程でも、この点は重要な焦点となった。だが、与党が法案成立を急いだため、曖昧にされた。制度設計上、そのような「疑義」を生ずるような手続法は失敗ではないか。審議不十分のまま強行採決に至ったため、積み残しの重要問題をすべて附帯決議に羅列したと言えなくもない。

そのなかでも、私が「日本立法史上の汚点」と考えているのは、第12項である。「罰則について、〔犯罪〕構成要件の明確化を図るなどの観点から検討を加え、必要な法制上の措置も含めて検討すること」。これを初めて見たとき、私は思わず目を疑った。これは法案の拙速とか手抜きを超える問題を含む。

もともと附帯決議というのは、「構成要件が明確なものとして可決された」罰則について、人権保障の観点から、その運用上の注意を促すというのが本来の任務である。今回の附帯決議には、「罰則の適用に当たっては、…国民の憲法改正に関する意見表明・運動等が萎縮し制約されることがないように慎重に運用すること」(第14項)というのがある。これに加えて、構成要件が不明確なまま可決されたので、今後、それを明確化するように求めるという第12項は、立法府の仕事としては敗北宣言に近い。犯罪構成要件の明確化は政策論ではなく、法律論のなかでも最も重要な憲法論に関わる問題である。犯罪構成要件が曖昧で不明確なものは、憲法31条〔罪刑法定主義、明確性の原則〕違反の可能性が高いからである。立法府が、最初から憲法違反の疑いを附帯決議で宣言して制定した法律は、前代未聞ではないか。

この法律の施行日は、「公布の日から起算して3 年を経過した日」、すなわち2010年5 月18日である。「私の首相任期中に憲法改正を実現する」という執念で、国会に憲法改正手続法の成立を急がせ、結果的にこの異様な附帯決議を生み出すことになった安倍首相は、法律成立の4 カ月後に突然辞任した。その後の内閣は、憲法改正に慎重な姿勢をとっている。法律施行を目前にして、附帯決議で示された諸問題の検討はほとんど進んでいない。これは、憲法改正手続に関するきわめて重要な法律である。この際、施行を延長して、附帯決議18項目すべてについて十分な審議を行った上で、法律自体の全面見直しを行うべきではないだろうか。 

【早稲田大学比較法研究所ホームページ「日本法の動向」"On Additional Resolution of Constitutional Amendment Procedural Law"より転載】

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