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2009年1月25日 (日)

読む政治:ソマリア沖海賊、海自派遣急ぐ政府

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090125ddm001010085000c.html
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090125ddm003010090000c.html
読む政治:ソマリア沖海賊、海自派遣急ぐ政府(その1)
 ◇中国には負けられぬ

 中曽根弘文外相の代理としてニューヨークの国連本部に派遣された外務省の西村康稔政務官(自民)は日本の発言が回ってこないかと心待ちにしていた。

 アフリカ・ソマリア沖で頻発する武装海賊への対応策をめぐり、国連安全保障理事会が昨年12月16日に開催した閣僚級会合の席だ。

 西村氏は「日本としては新たな海賊法制の整備を鋭意検討しており、現行法制下でも早急に実効的な対応を講じたい」と表明することにしていた。会議に先立ってライス米国務長官(当時)に「海上自衛隊を出すよう検討している」と伝えたところ、「エクセレント(素晴らしい)」という返事をもらっていた。

 主要8カ国(G8)で現場海域に艦船を出していないのは日本だけだ。西村氏は、日本政府が現行法と新法の「2段階方式」で海自の派遣を前向きに考えていることを説明し、理解を得たかった。

 ところが、常任理事国から始まった発言が中国の番になった時、会場がどよめいた。

 中国外交部の何亜非・副部長が「中国は海軍を派遣すべく、積極的に検討している」と表明したためだった。中国は昨年、7件の誘拐の被害を受けている。西村氏に発言の機会が与えられたのはそのずっと後。中国について事前の情報がなく、各国を驚かせた分だけ、日本の決意表明はかすみがちだった。

 国連安保理は同じ日の会議で、海賊の陸上拠点に対する軍事攻撃を容認する決議1851を採択している。「ソマリア沖」は国際協力の舞台として明確に位置づけられた。

 中国の動きは、政府をあわてさせた。自衛隊の海外派遣が容易ではない日本とは異なり、中国は国連平和維持活動(PKO)など国際協力活動に軍を積極的に参加させ、存在感を高めている。内閣官房の政府高官はそのころ、麻生太郎首相に「中国に負けるわけにはいきません」と進言している。首相は「そりゃそうだ」と答えたという。

 河村建夫官房長官は12月24日の記者会見で派遣の検討状況について聞かれると「中国の艦船も出発すると報告を受けているので、日本の対応を急がなければならない」と回答。質問にはなかった中国にあえて言及した。

 首相周辺は、派遣に慎重な公明党に配慮して、年明けに海上警備行動の発令による派遣方式を表舞台に出そうとしていた。しかし、首相は同月25日夜、記者団に「ことは急いでいる。(新しい)法律を考えるべきだが、時間がかかる。取り急ぎは海上警備行動で対応する」と明言した。

 中国海軍が駆逐艦2隻、補給艦1隻をアデン湾に向け出航させたのは翌26日だった。
◆ソマリア沖、海賊対策に海自
 ◇「派遣」優先、議論半ば 根拠「新法」棚上げ懸念

 海上自衛隊による海上警備行動は、99年の北朝鮮不審船事件、04年の中国原子力潜水艦による領海侵犯事件と過去2回しかない。政府はソマリア沖の海賊対策に向け3例目を発令しようとしている。

 ただ、海上保安庁の船が対処できない緊急事態向けの海警行動を、日本から遠く離れた海域で実施するのは法律の想定外だ。このため、政府内の議論は「派遣の必要性」と「法的な裏付け」の間で揺れ続けた。

 無政府状態にあるソマリアとイエメンに挟まれたアデン湾は、年間延べ2万隻の船舶が航行する重要なシーレーン(海上交通路)だ。日本の海運会社が運航する船舶だけでも年間約2300隻に上る。

 日本の船会社がこの海域で初めて被害に遭ったのは07年10月28日。ケミカルタンカー「ゴールデン・ノリ」が海賊に乗っ取られた。昨年4月21日には原油タンカー「高山」が海賊の高速艇に襲撃され、船体が被弾した。同11月14日には、ケニア沖で中国漁船が乗っ取られ、日本人船長の久貝豊和さん(53)=沖縄県出身=は現在も人質のままだ。

 自衛隊の派遣が政治課題として浮上したのは昨年10月17日の衆院テロ対策特別委員会。麻生太郎首相が長島昭久衆院議員(民主)の質問に答え「海上警備行動としては極めて有意義だと思う」と明言してからだ。

 それでも、政府内の動きは鈍かった。海上保安庁の岩崎貞二長官は昨年10月の段階で「総合的に勘案すると(海保の)巡視船を派遣することは困難」と答弁。他方、浜田靖一防衛相も海自の派遣に一貫して慎重な姿勢を取り続けた。海警行動の発令による派遣は「脱法的」(政府筋)と考えていたためだ。

    ■

 昨年12月2日、衆院第2議員会館で超党派の海賊対策議連が開かれた。代表世話人の一人、中谷元・元防衛庁長官は自衛隊を派遣する場合の根拠法として(1)海上警備行動(2)時限的な特別措置法(3)新たな一般法--の3例を示す文書を配布した。

 特措法はソマリア沖にしか適用できないのに国会審議のハードルは低くならないとの理由で次第に検討対象から外れ、まずは海警行動で対処し、途中から新法による派遣に切り替える2段階方式に議論は傾いていった。

 中国の艦船派遣が表面化した後の12月24日。閣僚懇談会で海保を管轄する金子一義国交相は「早急にこの問題に対応する必要がある」と発言し、防衛省に必要な行動を促した。しかし、浜田氏はぶぜんとして黙り込んだ。このため、前任の防衛相である石破茂農相が「憲法上の問題はない。ただ、海上警備行動は命令を出しっ放しにすることを想定していない」と浜田氏の心中を代弁した。

 浜田氏の理想は、海賊対策の新法で武器使用基準を緩和してからの派遣だった。安易に海警行動に応じた場合、新法の議論が棚上げされ、派遣の実績だけ「食い逃げ」されることを恐れた。
 ◇武器使用基準「運用で」

 自民、公明の与党は今月9日になってようやく海賊対策のプロジェクトチーム(PT)の初会合を開いた。議論の核心は、常に武器使用基準にあった。

 13日のPTでは、インド海軍の事例が問題になった。海賊が乗っ取った漁船の攻撃を受け、インド海軍が漁船を撃沈させ、人質が死亡したケースだ。

 派遣された自衛隊員が海賊や民間人を殺傷した場合、武器使用基準で許される正当防衛や緊急避難の範囲はどこまでなのか。柳沢協二・内閣官房副長官補らは「訓練で習熟すれば対応できる」と主張したが、防衛省の徳地秀士・運用企画局長は「船体射撃で死傷者が出れば、自衛官が訴追される可能性がある」と実態に応じた基準作りを求めた。

 米国でのオバマ新政権の発足を前にして、日本が国際協力分野で出遅れてはまずいという首相官邸や外務省の判断。参院を牛耳る民主党の出方が不透明な中で新法の制定が難しいという与党内の認識。それらが重なり合って「とにかく現行法での派遣を急ぐ」との意見が勢いを増した。

 海自のエスコート方法が議論になった20日のPTでは、公明党の赤松正雄衆院議員ですら「こんなことでぐずぐずやっている場合ではない。早いことが大事だ」と発言した。

 22日にまとまった与党PTの中間報告は、武器使用基準について「具体的な運用基準は防衛省を中心に作成する」と記し、大部分を自衛隊の運用に委ねた。制服組幹部は「核心部分を勝手にやれということだ。やりすぎても怒られ、やらなくても怒られる」と苦渋の表情を浮かべた。

 元陸上自衛隊1佐でイラク先遣隊隊長だった佐藤正久参院議員(自民)は昨年12月、海賊対策で仏軍が拠点にしているジブチを視察した。「各国とも自国の船を守るのが精いっぱいな状況だ。日本は政府内の連携が悪い」

 外務省は、中国の派遣も自国の船舶保護が主目的だとみている。

    ◇

 高塚保、古本陽荘、松尾良、仙石恭が担当しました。

毎日新聞 2009年1月25日 東京朝刊

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