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2008年11月12日 (水)

田母神喚問後の各紙社説

昨日の参院外交防衛委員会での田母神喚問を受けての各紙社説である。朝日、沖縄タイムス、北海道、毎日、東京、日経、読売、産経各紙を採録した。(下線は引用社による)。末尾に赤旗進軍が報道した自衛隊の教育の実態を暴露した陸自元曹長の発言を採録した。
各紙は読売、日経をもふくめ、田母神が「言論の自由の制限」に抗議したことや、文民統制をまったく理解していないことを厳しく批判した。田母神の「言論の自由」論は北朝鮮になぞらえるなど、幼稚なものである。イラクは派違憲訴訟の名古屋高裁判決に対して「そんなの関係ねえ」と言ったときのレベルそのままである。産経だけが委員会の運営や政府の態度を批判した。産経の主張は田母神前空幕長と同レベルの議論であり、田母神応援団の議論で、メディアの名に値しない。読売、日経がこうしたことにより自衛隊への「国民の信頼」が揺らぐことを畏れているが、産経はそれすらわからない。読売、日経の立場はこの意味において、他の各紙と立場を異にしている。
組織的な動きの可能性を指摘して、沖縄タイムスは「ペンによるクーデター」と指摘し、各紙もその実態の解明を要求した。赤旗紙の元陸曹長も「一首の言論クーデター」と指摘している。こういう田母神の動きが系統的に自衛官の中に同調者を増やす動きであったことにりつ然とする。赤旗新聞の指摘では昨年の参院選の時には「講話」と称する思想教育が自衛隊のなかで組織的に行われており、そこでは例の佐藤正久や東条ゆうこまでもが話をしたというから、驚きだ。
そして、各紙は政府防衛省、麻生首相の対応が、その場しのぎにしかなっていないことを批判している。
この田母神問題はかつての「三無事件」に匹敵するくーだター並みの重大問題だ。今回の参考人喚問程度で終わらせてはならない。田母神と空自教育課の憲法違反、自衛隊法違反問題の追及はもとより、自衛体内にこうした動きに呼応し、あるいは醸成してきた問題があることの徹底解明、この問題(田母神の歴史観、憲法観)についての、浜田防衛相、麻生首相の考え方をtわねばならない。(高田健)

http://www.asahi.com/paper/editorial.html
朝日新聞社説・前空幕長―「言論の自由」のはき違え

 事態の深刻さが、そして何が問われているかが理解できていない。航空自衛隊の田母神(たもがみ)前幕僚長を招いての参院の参考人質疑は、そんな懸念を強く抱かせるものだった。

 田母神氏は「自衛官にも言論の自由がある」「言論統制はおかしい」と繰り返し発言した。自衛隊のトップにまでのぼり詰めた空将が、こんな認識の持ち主だった。

 戦後の日本は、軍部の独走が国を破滅させた過去を反省し、その上に立って平和国家としての歩みを進めてきた。自衛隊という形で再び実力組織を持つことになった際も、厳格な文民統制の下に置くこと、そして旧日本軍とは隔絶された新しい組織とすることが大原則であった。

 憲法9条に違反するという反対論も根強かったなかで、国民の信頼を築いてきたのは、この原則からの逸脱を厳しく戒めてきた自衛官たちの半世紀におよぶ努力の結果である。

 

自衛隊のトップにいた人が、こうした基本原則や過去の反省、努力の積み重ねを突き崩しておいて、なお「言論の自由」を言いつのる神経を疑う。

 むろん、自衛官にも言論の自由はある。だが、政府の命令で軍事力を行使する組織の一員である以上、相応の制約が課されるのは当然ではないか。

 航空自衛隊を率い、統幕学校の校長も務めた人物が、政府方針、基本的な対外姿勢と矛盾する歴史認識を公然と発表し、内部の隊員教育までゆがめる「自由」があろうはずがない。

 問題が表面化した後、防衛大学校の五百旗頭(いおきべ)真校長は毎日新聞のコラムでこう書いた。

 「軍人が自らの信念や思い込みに基づいて独自に行動することは……きわめて危険である」「軍人は国民に選ばれた政府の判断に従って行動することが求められる」

 五百旗頭氏は歴史家だ。戦前の歴史を想起しての、怒りを込めた言葉に違いない。

 それにしても、文民統制の主役としての政治の動きがあまりにも鈍い。浜田防衛相は、田母神氏の定年が迫って時間切れになる恐れがあったので懲戒処分を見送ったと述べた。

 田母神氏の行動が処分に相当すると考えるのは当然だ。きちんと処分すべきだった。そうでなければ政府の姿勢が疑われかねない。自民党国防部会では田母神氏擁護論が相次いだという。そうであればなおさら、麻生政権として明確な態度を示さねばならない。麻生首相の認識が聞きたい。

 ほかにも、参院での審議で驚くべき事実が次々と明らかになった。防衛省はなぜ省をあげての調査体制をつくらないのか。政府の腰が重いのなら、国会が国政調査権を発動して乗り出すしかあるまい。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-11-12-M_1-005-1_001.html
沖縄タイムス社説:[前空幕長招致]

首相の見解が聞きたい

 「国を守ることについて、これほど意見が割れるものは直した方がいい」
 参院外交防衛委員会に参考人招致された田母神俊雄・前航空幕僚長は憲法九条についてこう述べ、改正すべきとの持論を展開した。

 田母神氏は日中戦争、太平洋戦争などの歴史認識に関して、一九九五年に日本がアジア諸国に侵略したことを認めて謝罪した「村山談話」を否定する論文を発表して更迭されたばかりである。

 もちろん、歴史についてどのような思想信条を持とうと、それは個人の自由であり認められなければならない。

 だが、武装組織である航空自衛隊を率いる最高幹部でありながら、政府見解と異なる考えを発表するとなると話は別だ。

 五百旗頭真・防衛大学校長が毎日新聞の「時代の風」(九日)で書くように、「制服自衛官は政治問題につき政府の決定に服する責めを負う」からだ。

 田母神氏は自らの論文を「いささかも間違っていない」と述べている。しかも論文では、集団的自衛権行使を容認すべきとも主張している。

 かたくなな態度がシビリアンコントロール(文民統制)を根幹から危うくするのは間違いない。そもそも、このような人が空自トップに就くこと自体おかしいのである。

 懸賞論文には九十四人の航空自衛官も応募していた。

 その多くが田母神氏と似た歴史観、憲法観を持っているとしたらペンによるクーデターであり、自衛隊が抱える闇は深いというしかない。

 田母神氏は参考人質疑のあと、「村山談話は言論弾圧の道具だ。自由な言論を闘わせることができないならば、日本は北朝鮮と同じだ」と記者団に語っている。

 本当にそうだろうか。

 国会はもとより私たちが懸念しているのは、一人の民間人としての歴史観ではない。国家公務員で、防衛相を補佐する空自トップの職責を持つ人の感覚なのである。

 思想信条にかかわるところで村山談話に異を唱えつつ、小泉純一郎、安倍晋三元首相らも一国の首相として「基本的に踏襲する」と表明している。

 持論を展開して自分の論文が間違っていない、と繰り返すのは議論のすり替えにほかならない。

 信念を貫き通したのかもしれないが、田母神氏の行為が職責に反しているのは明らかだろう。

 気掛かりな点はまだある。田母神氏に対し、政治の側から擁護論が出ていることだ。

 自民党国防部会では、「田母神氏の持論のどこが悪いのか」「防衛省が歴史観で懲戒処分しようとしたのは問題」との意見が相次いだという。

 こうした声は文民統制を危機に陥れるもので、不気味さを覚える。

 言うまでもないが、自衛隊の最高指揮官は麻生太郎首相だ。首相は「村山談話」を踏襲すると述べたが、ここは首相としてこの問題をどう捉えるのか。アジアの国々に訴えるためにも「首相談話」の形にして表明するべきだ。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/128658.html
北海道新聞社説:前空幕長招致 文民統制は形ばかりか(11月12日)

 「いささかも間違っているとは思わない」

 民間の懸賞論文で侵略と植民地支配の歴史を正当化する自説を展開し、更迭された防衛省の田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長が参院の外交防衛委員会で参考人招致された。

 与野党の質問に対し、自分の歴史観の正しさを主張した。あくまで自説に固執し、反省の色さえ見せない態度には驚かされる。

 浜田靖一防衛相は、過去の侵略などを認める政府見解と異なる論文を発表した行為は「極めて不適切」だと更迭の理由を述べた。

 だが、この日の質疑を聞く限り、なぜ職を解かれたのか、本人はまるで理解していないようだ。

 防衛省側も、なぜ更迭したのか明確に説明できたとは言い難い。

 前空幕長は、昨年五月に隊内誌に今回の論文と同趣旨の文章を発表している。この時は問題にならず、どうして今回は処分に発展したのか。

 こう野党に質問され、防衛相は「ダブルスタンダード(二重基準)」だったと、判断基準のあいまいさを認めざるを得なかった。

 一度は検討した懲戒処分を見送った理由も納得できるものではない。

 防衛相によると、前空幕長が審理手続きで争う姿勢を見せたため、結論が出るには時間がかかると考えて早期退職に切り替えたのだという。

 しかし、ことの重大性から見て、懲戒という形で処分するのが筋だったろう。

 危惧(きぐ)するのは、自衛隊運用の根本となるべき文民統制が形骸(けいがい)化していることである。

 前空幕長は論文提出について、自衛官にも言論の自由はあると反論した。自衛隊という実力組織を指揮する、自分の立場への認識を欠いているのではないか

 論文募集に応募するよう隊内で指示したことはないと否定した際、「私が指示すれば千人を超える数が集まる」と豪語した。そうした影響力を自任していたのであれば、自らの言動をもっと戒めるべきだった。

 文民統制を強化するなら「自衛隊は動けなくなる」と批判し、憲法改正を明言した。委員会終了後には、侵略と植民地支配を認めた村山首相談話は「言論弾圧の道具だ」とまでエスカレートさせている。

 自衛隊の一部には、こうした発言を容認する空気があるとも聞く。そうなれば前空幕長一人の問題では済まなくなる。

 最高指揮官である麻生太郎首相はこの問題をどう考えるか。憲法観、歴史認識と合わせて聞きたい。

 野党は参院で文民統制に関する集中審議を求めている。首相も出席し、さらに徹底した論議が必要だ。

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081112k0000m070121000c.html
毎日新聞:社説:前空幕長招致 隊内幹部教育の実態究明を

 戦前の日本の植民地支配と侵略を正当化し、政府見解に反する論文を発表した田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が、参院外交防衛委員会に参考人として招致された。

 田母神氏や浜田靖一防衛相に対する質疑で、現在の文民統制(シビリアンコントロール)の危うさと自衛隊内教育の問題点が浮き彫りになった。

 田母神氏は空幕長就任直後、航空自衛隊の隊内誌「鵬友」に論文と同様の趣旨の文章を掲載していたが、浜田防衛相は「チェックしていなかった」と述べた。

 また、田母神氏は空幕長だった1年7カ月の間、頻繁に基地を視察し、隊員らに講話・訓話を繰り返していた。今年1月の熊谷基地(埼玉県熊谷市)での講話について同氏は「内容は論文に書いたのと一緒だと思う」と語ったが、防衛相は講話をすべて確認しているわけではないと述べた。

 今回の論文だけでなく、文章や発言で同様の歴史認識を繰り返していたのに、これを防衛相が把握していなかったのは論外である。

 田母神氏は、論文が問題になったことについて「今回は多くの人の目につき騒がれたからだ」と語った。従来の主張をしているのに、報道されたために更迭された、というのだ。特異な主張をする人物として防衛省内で知られていた人物を空自トップの座に据えた安倍政権、それを引き継いだ福田、麻生政権では、文民統制が機能していなかったと言わざるを得ない。

 

委員会では、田母神氏が統合幕僚学校長時代に設置したカリキュラムの問題も取り上げられた。

 統幕学校は、陸海空各自衛隊の1佐、2佐クラスを対象にした、将官・上級幕僚への登竜門である。

 同校に04年度に新設された「歴史観・国家観」講座は現在も続いている。02年12月から04年8月まで校長を務めた田母神氏は「私が設けた」と述べた。講義は外部講師が中心で、防衛省の資料によると、教育内容に「大東亜戦争史観」「東京裁判史観」などが並ぶ。

 防衛相は「中身は把握していない。確認したい」と述べた。防衛省は講師名を発表していないが、田母神氏と同様の主張が幹部教育の場で行われていたのではないかとの疑念がわく。

 もしそうなら、偏った歴史観を持つ自衛隊幹部が量産され、第2、第3の田母神氏を生む仕組みが作られていたことになる。早急に調査し、是正策を取るのは麻生内閣の責任である。

 与野党にはこの日の参考人招致は新テロ対策特措法改正案を処理するための「儀式」と受け止める向きもある。これを反映したのか、民主党の追及に迫力は今ひとつ感じられなかった。

 しかし、文民統制の問題も隊内教育の疑惑も解明されたとは言い難い。麻生太郎首相が出席した審議は必須である。田母神氏再招致も検討してしかるべきだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008111202000096.html
東京新聞:【社説】
前空幕長の陳述 文民統制を何と心得る

2008年11月12日

 政府見解に反する論文発表で更迭された前空幕長が国会の参考人招致でも持論を展開した。組織的応募の疑惑も広がり、文民統制の根幹が大きく揺らぐ。政府が認識する以上に事態は深刻だ。

 上司・部下の関係だった浜田靖一防衛相と田母神俊雄前航空幕僚長が代わる代わる答弁する。日本の侵略戦争を正当化する論文をめぐって、浜田防衛相が「極めて不適切」と切り捨てれば、田母神氏は「間違っているとは思っていない」と主張する。十一日の参院外交防衛委員会であった異様な光景だ。

 田母神氏は自ら起こした混乱の責任を自覚していないようだ。

 「びっくりしたのは、日本はいい国だと言ったら解任されたことだ」「政府見解で言論を統制するのはおかしい」…。憲法九条についても「これほど意見が割れるものは直した方がいい」と改正を唱えた。

 

つい先日まで実力部隊のトップだった人物である。政治が軍事に優先する、民主主義国家の基本である文民統制を「そんなの関係ねえ」といわんばかりの言動には驚がくを覚える。

 田母神氏は同趣旨の論文を昨年五月に隊内誌に寄稿。基地視察などの際にも講話していたという。幹部の教育機関である統合幕僚学校の校長も務めていた。政府見解に反する教育が自衛隊内で行われていた疑念を抱かざるを得ない。

 実際、懸賞論文には田母神氏のほか九十四人の航空自衛官が応募していた。田母神氏は募集の件を航空幕僚監部の教育課長に紹介し、教育課は全国の基地にファクスで通知した。田母神氏の主張を受け入れる土壌が自衛隊内にあるのではないか。

 防衛省は組織的背景の究明と隊員教育の実態調査を急ぐべきだ

 “暴走”を放置してきた政治の責任も重い。自民党の国防関係合同部会では擁護論すら飛び出したという。何をか言わんやだ。

 懲戒処分にせず定年退職扱いにして、約六千万円の退職金が支払われる決着には違和感がある。田母神氏が「審理」での徹底論議を求めたため、迅速な対応を優先したというが、これ以上事を荒立てたくない思いも見え隠れする。安易な幕引きは許されない。

 その場しのぎの対応で、揺らぐ文民統制への危惧(きぐ)は解消されるはずがない。麻生太郎首相の口ぶりはあまりに人ごとすぎないか。こういう時にこそ、逃げない姿勢を見せてほしい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081111AS1K1100111112008.html

日経新聞:社説 田母神氏だけなのか心配だ(11/12)

 どうしてこのような人物が航空自衛隊トップになったのだろうか。

 政府見解に反する歴史認識の論文を公表して解任された田母神俊雄前航空幕僚長に対する参院外交防衛委員会の質疑は、不完全燃焼だった。心配なのは、空自内部で田母神氏のような歴史観がどの程度の広がりを持つのかであり、懸賞論文の公募に組織的関与があったかと併せ、さらなる解明を要する。

 空自小松基地「金沢友の会」の会長は「真の近現代史観」をめぐる懸賞論文を企画したアパグループの代表である。田母神氏は小松勤務の経験がある。田母神氏の後任候補としていったん名前があがった織田邦男航空支援集団司令官も小松勤務を経験しており、ウェブサイト上には代表との対談が載っている。

 懸賞論文の応募総数235件のうち94件が航空自衛官だったのは、代表と空自首脳部との関係と無縁ではないだろう。田母神氏自身も「航空幕僚監部教育課長に紹介した」と認めた。空自内部に一定の歴史観を広める結果につながっていないだろうか。

 田母神氏を懲戒処分にしなかった点について国会では技術的な議論があった。田母神氏は懲戒をめぐる手続きの省略を認めず、徹底抗戦の構えをとった。このため短時間で懲戒できず、空幕長を解任して定年退職させる苦肉の策となったからだ。

 1978年、当時の金丸信防衛庁長官は「超法規的行動」発言を理由に栗栖弘臣統合幕僚会議議長を解任した。今回と似ているとされるが、決定的な違いは栗栖氏は自ら辞表を出し、田母神氏はこれを拒否した点である。

 上官である防衛庁長官の信を失ったと栗栖氏は考えた。政治家による軍に対する統制(シビリアンコントロール)を持ち出すまでもない。武人として当然の挙措である。田母神氏のように上官の命令に従わない指揮官をいただく軍事組織は下克上の混乱に陥る危険がある。

 昨年夏、守屋武昌防衛次官は小池百合子防衛相から退任を命じられ、首相官邸に駆け込んで抵抗した。田母神氏の行動は、それと重なる。いつからこんな危険な空気が防衛省には広がったのだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081111-OYT1T00871.htm
前空幕長招致 「言論の自由」をはき違えるな(11月12日付・読売社説)

 つい先月末まで自衛隊の最高幹部を務めていた人物とは思えないような発言が相次いだ。

 田母神俊雄・前航空幕僚長は参院外交防衛委員会での参考人招致で、終始、「我が国が侵略国家というのは濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だ」などとする自らの懸賞論文の内容を正当化しようとした。

 「私の書いたものは、いささかも間違っていないし、日本が正しい方向に行くために必要だ」「日本には、日本の国が悪かったという論が多すぎる。日本の国は良い国だったという見直しがあってもいいのではないか」――。

 昭和戦争などの史実を客観的に研究し、必要に応じて歴史認識を見直す作業は否定すべきものではない。だが、それは空幕長の職務ではなく、歴史家の役目だ。

 自衛隊員に対する愛国心教育は必要としても、過去の歴史を一方的に美化することを通じて行うことではあるまい。

 田母神氏が身勝手な主張を続けることは、むしろ防衛省・自衛隊が長年、国際平和協力活動や災害派遣で地道に築いていた実績や国内外の評価を損なう。

 集団的自衛権の行使や武器使用権限の拡大など、安全保障上の課題の実現も遠のきかねない

 こうした冷静な現状分析を欠いていること自体、自衛隊の指揮官としての適格性のなさを露呈していると言わざるを得ない。

 田母神氏は「自衛官も言論の自由が認められているはずだ」「自由な議論も出来ないのでは、日本は民主主義国家か」と、「政府見解による言論統制」を批判した。

 「言論の自由」を完全にはき違えた議論だ。一私人なら、日本の植民地支配や侵略を認めた村山首相談話と異なる見解を表明しても、何ら問題はなかろう。

 しかし、4万5000人を率いる空自トップが政府見解に公然と反旗を翻すのでは、政府も、自衛隊も、組織として成り立たなくなってしまう。政治による文民統制(シビリアンコントロール)の精神にも反している。

 空自では、同じ懸賞論文に、隊員94人が組織的に応募していたことが判明している。田母神氏の指示はなかったとされるが、徹底した事実関係の調査が必要だ。

 自衛隊幹部は、軍事的知見や統率力に加え、高い見識、広い視野とバランス感覚が求められる。

 防衛省は、自衛隊の幹部教育や人事管理を抜本的に見直し、検討中の省改革の計画に的確に反映すべきだ。それが国民の信頼回復につながる道だ。
(2008年11月12日01時49分  読売新聞)

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081112/stt0811120308001-n1.htm
産経新聞:【主張】田母神氏招致 本質的議論聞きたかった
先の大戦を日本の侵略とする見方に疑問を示す論文を発表したとして、航空幕僚長を更迭された田母神俊雄氏が、参院外交防衛委員会に参考人として出席し、更迭の経緯や文民統制に関する質疑が行われた。

 しかし田母神氏の発言はあらかじめ制限され、質疑は懲戒処分とせずに退職させた防衛省の責任に集中した。安全保障政策や歴史観をめぐる自衛隊トップの発言がどれだけ許容されるのか、論文内容のどこが政府見解や村山富市内閣の「村山談話」に抵触し、不適切かといった議論は素通りした。

 本質を避ける政治の態度が、憲法論や安保政策のひずみを生んできたのではないか。

 委員会の冒頭、北沢俊美参院外交防衛委員長は「参考人が個人的見解を表明する場ではない」と指摘し、質問に対する簡潔な答弁だけを認める方針を示した。このため、田母神氏が論文の真意や歴史認識についてまとまった考えを示す機会は失われ、答弁の多くは浜田靖一防衛相が立った。

 このような委員会運営となった背景には、田母神氏に持論を展開する場を与えたくない与野党共通の思惑もあったとされる。

 政府は田母神氏を更迭する際にも本人に弁明の機会を与えなかった。政府見解や村山談話を議論することなく、異なる意見を封じようというのは立法府のとるべき対応ではない。

 田母神氏は、論文で示した見解は今でも正しいと考えており、政府見解や村山談話を逸脱するものではないと主張した。理由の一つとして「村山談話は具体的にどの場面が侵略だとまったく言っていない」と指摘し、政府見解による言論統制への反発も示した。政府や与野党議員はこれに十分反論できただろうか。

 

政治の軍事に対する統制は確保されなければならず、田母神氏が部外への意見発表の手続きをきちんととらなかった点は問題だ。ただ、集団的自衛権を見直すなどの本質的な議論を制限することがあってはなるまい

 この問題を契機として、民主党は自衛隊の統合幕僚長や陸海空幕僚長の4人を国会同意人事の対象とする考えを打ち出した。何を基準に人選するのか。歴史観など思想統制につながるものなら許されない。政府・与党にも事態収拾の一環として導入を検討する動きがあるが、慎重に対処すべきだ。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-12/2008111215_01_0.html
陸自元曹長が告発
憲法無視 暴走怖い
海外派兵 機に管理強化
前空幕長問題

 田母神俊雄航空自衛隊幕僚長(当時)による侵略戦争肯定の懸賞論文執筆問題で、元自衛隊員からも驚きと不安の声が上がっています。

 陸上自衛隊の元曹長(55)は、「目にあまる。黙っていられない」と憤慨します。「これは一種の言論クーデターだ。こんなことがいつかおきるのでは、と思っていた矢先だった」と言います。

 更迭、定年退職で幕引きを図る防衛省の対応にも納得がいかない、としてこう指摘します。「文民統制上の明白な違反であり懲戒処分は避けられない。それを懲戒審理もせずに退職ですませるやり方は明らかに臭いものにはフタの構えだ」
「尾行しろ」と

 一般隊員は上級の許可もなく外部に文書を発表するなど考えられないし、ちょっとしたことでも警務隊や調査隊に拘束され徹底的に背後関係を調べられる、といいます。


 元曹長にはこんな体験があります。職場で学生時代の同窓生と電話のやりとりを何度かしたときです。「同僚に『お前、大丈夫か』と言われ、なんでと聞き返すと『上官から、あいつ思想関係があるのか調べろ、尾行しろと指示されたから』と」

 元曹長は「四、五年前から自衛隊は歯止めのない暴走がはじまっていると感じてきた」といいます。四、五年前といえば、アメリカのアフガン、イラクへの先制攻撃戦争にあわせて、自衛隊が創設いらい初めて海外に、重武装部隊の派兵に向けて動いた時期です。

 元曹長は「インド洋、イラク派兵をきっかけに第一線部隊に隊員が集められ、人手不足の後方部門でもやれ対テロ訓練だとか任務はふえるばかり。管理もきつくなり、階級をかさにいばりちらす幹部が幅をきかせ、いじめやパワハラ・セクハラがひどくなり、自殺も増え始めた」と告発します。
事実上の動員

 昨年の参議院選挙のときのことです。「自民党から立候補したヒゲの隊長、イラク派遣隊長の『講話』を聞くようにと、課業中の昼間から講堂に集められた。事実上の選挙動員だ。昔は一応自由参加だったが、このときは出欠をとった。東条英機の孫の女性の『講話』も聞かされた、そのときは靖国神社のビデオも見せられた。
憲法なんて関係ねえ、という空気だ」。侵略戦争肯定、憲法無視は、空自だけではない、といいます。

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