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許すな!憲法改悪・市民連絡会

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2008年9月19日 (金)

岡本行夫氏 特別寄稿「アフガンから逃げるな」

岡本行夫氏の論理を資料として掲載する。本日の産経の1面から3面まで掲載された。産経の一大特集である。(高田)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080919/plc0809191044003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080919/plc0809191044003-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080919/plc0809191044003-n3.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080919/plc0809191044003-n4.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080919/plc0809191044003-n5.htm

岡本行夫氏 特別寄稿「アフガンから逃げるな」
2008.9.19 10:34
岡本行夫氏

 インド洋で海上自衛隊が行う給油支援活動の継続が危ぶまれている。日本は国際貢献に汗を流す自国民を守れもしない。外交評論家の岡本行夫氏(62)がそんな現状を憂い、テロとの戦いの主戦場、アフガニスタンへの関与継続を訴える長文を本紙に寄稿した。

何かがおかしい

 2004年4月24日の真夜中、3隻の自爆ボートがイラクのバスラ沖合のオイルターミナルに突っ込んできた。1隻の行く手には、原油を積んだ28万トンの超大型タンカー「高鈴」が停泊していた。間一髪のところで2隻のボートは多国籍軍に爆破され、「高鈴」は軽度の損傷で済んだ。

 しかしもう1隻のボートを阻止しようとしたアメリカ海軍と沿岸警備隊のペルナセリ1等水兵(24)、ワッツ2等水兵(28)、ブルッケンタル3等水兵(24)は、ボートの自爆によって死亡した。3人とも、本国に幼い子供たちを残していた。2日後、国際テロ組織アルカーイダ系のグループが犯行声明を出した。

 今年8月27日、アフガニスタンでNGO(非政府組織)「ペシャワール会」の伊藤和也さんが遺体で発見された。伊藤さんはジャララバード近くで多くの村民に慕われながら農業指導を行っていた。しかし、この痛ましい殺害事件を報じた夜の報道番組の人気キャスター氏は「テロとの戦いのひどさ、これは一体なんだろうという気になります」と、カメラに向かって深くうなずいた。彼は、伊藤さんを殺したテロがひどいと言ったのではない。伊藤さんが殺されたのは米軍の誤爆などが原因である、だからテロと戦うことがひどいと言ったのだ。

 このキャスター氏は、イラクで自爆ボートを阻止して殉職した3人のアメリカ人の遺児たちに「お父さんはひどいことをしてくれた」と言うのだろうか。一部のマスコミは、秩序を維持する側と破壊する側のどちらを被害者、どちらを加害者と考えているのだろうか。何かがおかしい。

 こうした空気の中で、インド洋に海上自衛隊の補給艦を派遣する「新テロ対策特別措置法」が打ち切られようとしている。改正案成立のめどはたっていない。

襲撃者たち

 海上自衛隊の補給艦は、インド洋のソマリア沖に展開する多国籍艦隊に給油するのが任務だ。ソマリア沖では、日本の海運会社が所有したり管理したりする船舶に対する襲撃が頻発している。今年の4月21日には巨大タンカー「高山」が襲われた。

 午前4時すぎ、サウジ西岸に向かっていた同船の4キロ先に現れて急速に接近してきた不審船は、ロケット弾と機関銃を撃ちこみながら「高山」に強制接舷しようと執拗(しつよう)に試みた。付近の海域に展開していた多国籍艦隊のドイツ軍艦「エムデン」が救難信号を受信し、「高山」と交信しながらただちに救出に向かった。常に多国籍軍の通信を傍受している襲撃者たちは、1時間後に逃亡した。
 8月23日、貨物船「AIZU(あいづ)」の前に現れた不審船は、6キロに近づいたところで2隻の高速艇を降ろし襲撃を開始した。「AIZU」は何発も被弾しながら、多国籍艦隊へ非常信号を発信、襲撃母船はその通信を妨害し続けたが、結局1時間で去った。救難信号受信後、ヘリを含め多国籍艦隊の救援が到着するのが平均1時間後だからだ。

 そのほかにも、詳細は公表されていないが、昨年10月から「ゴールデンノリ」「ケミスタームーン」「ステラマリス」「アイリーン」というケミカルタンカーや貨物船が襲われた。その中には今なお捕らわれている船もある。

 以上の事案は日本関係船舶についてのみのものだ。全体ではおびただしい数の船が襲われている。報道されないが、襲撃者たちに拿捕(だほ)された船は今年だけで18隻。今も捕らわれている船員は合計130人以上にのぼる。

「テロの圏外」許されぬ

 海上自衛隊の補給艦は、多国籍艦隊の軍艦がいちいちペルシャ湾まで燃料補給に戻らなくて済むようにソマリア沖で洋上給油を続けている。安全ではあるが、高度な技術のいる仕事である。海上自衛隊の仕事ぶりは各国に称賛され、感謝されている。

 「高山」の救助に向かった「エムデン」も海上自衛隊の補給艦「おうみ」から燃料を補給されていた。多国籍艦隊は8月25日、ソマリア沖をMSPA(海上パトロール区域)に指定し、商船隊の防護体制を強化した。ドイツやデンマークなどは商船保護のための海軍増派を検討中と聞く。

 小沢一郎氏はソマリア沖で活動する多国籍艦隊への給油活動は憲法違反だから中止せよと主張する。与党は衆議院での3分の2の再可決によってようやく補給艦をソマリア沖に戻したが、野党は再びの撤退を主張している。

 そうした撤退要求を聞いてテロリストや襲撃者たちはホッとするだろう。武力行使とは無縁の補給活動がどうして集団自衛権の行使なのか不可解だが、その前に小沢氏は、襲撃される日本関係船舶の人々に「オレたちは多国籍艦隊への支援を阻止するがオマエたちは多国籍艦隊に助けてもらえ」と言えるのだろうか。

 コトは、日本人が世界で肩身が狭くなるだけで済む話ではない。日本国家の在り方にかかわる問題である。自分は国際互助会からは抜けるが果実だけは食わせろ、というわけだ。危険はすべてほかの国が負担して日本人も安全に暮らせる世界を作ってくれと。

 いつからこんな国になってしまったのか。

破壊的

 国際社会はテロに30年以上対決してきたが、9・11テロは防げなかった。その後も、欧州やアジアで一般人を標的とするテロが続いている。なぜか。近年のテロリストたちが、組織力と資金力を強化したうえ情報通信技術を多用し、破壊力を増しているからだ。教義も先鋭化している。ウサマ・ビンラーディンたちの目標は、文明社会自体の破壊にある。日本の好きな「平和的解決」になじむものではない。今も日本はウサマ・ビンラーディンの標的リストの中に入れられている。

 守る側は結局テロの根拠地に入っていかざるを得なくなった。それが世界のアヘンの93%を製造しアルカーイダとタリバンの拠点となっているアフガニスタンだ。テロはそこから発し、アジアに広がっている。もう一つのテロリストの温床が、無政府状態のアフリカ東部のソマリアだ。
多国籍艦隊はその2つの地域の交流を遮断するためにソマリア沖に展開している。海上自衛隊が行っている洋上補給は、アメリカを支援するためのものではない。日本自身のためである。世界が安全にならなければ、日本だけ安全とはならないからだ。

 日本人だけがテロの圏外に立つことはできない。1997年にはエジプトのルクソールで10人の日本人観光客がテロリストに殺された。9・11米中枢同時テロでは24人の日本人が世界貿易センタービルで殺された。逆にテロリストになったケースもある。岡本公三たち3人の日本人は、72年にテルアビブの空港で旅客など24人を殺害した。77年のダッカ事件もある。テロは国際的な広がりを持つ。

使命感

 89年6月の天安門事件。学生たちと人民解放軍の衝突により北京が大混乱に陥る可能性がでてきた。そうなれば、邦人の緊急避難が必要になる。航空会社にその場合の救出を頼んだが、組合が「うん」と言ってくれない。そのとき外務省に勤務していた私は、やむなくアメリカに邦人救出の可能性を打診した。返事は直ちにきた。「最大限の協力をする。避難する人々を1カ所に集められるか?」。幸いこの計画はそれ以上具体化されずに済んだが、打てば響くようなアメリカ政府の対応に、彼らの使命感を教えられた。

 日本でも強い使命感をもつ一線の公務員は少なくない。87年、イラン・イラク戦争の激化によりペルシャ湾航行が危険になった。民間船舶護衛のための多国籍艦隊を組織するので日本も参加してほしいとの要請がアメリカからきた。

 自衛艦派遣は政治的に無理だったが、海上保安庁が応えてくれた。日本船舶支援のためにペルシャ湾まで巡視船が出動する計画が作られたのである。海上保安官たちの決意は橋本龍太郎運輸大臣に伝わり、橋本氏は「自分が最初の巡視船に乗っていく」と言明した。中曽根康弘総理大臣も計画を了承した。主導するのは政治である。

 この計画は後藤田正晴官房長官の強い反対で消えたが、日本船舶を守るために1万2000キロのかなたまで巡視船が出動する態勢が組まれた事実は残った。ホルムズ海峡を通って北上すればペルシャ湾、通らずに西進すればソマリア沖に到達する。

 自衛隊員も、命令さえ下れば士気は高い。ひとたび海外に派遣された隊員たちの使命感と仕事ぶりは、現地の称賛を浴びる。

同胞を守る

 「自衛隊は危険のない場所にだけ行く」というのが、国会審議で確立された大原則だ。しかし国民全員が危険に近寄らないのでは、日本は国としてやっていけない。結果として、そのような地に行くのは、身を守る手段を持たない人々だけになる。

 アフガニスタンにはJICA(国際協力機構)やNGO(非政府組織)の日本人がいる。アフガニスタンで活動する各国の援助関係者の多くは、「PRT(地方復興チーム)」という仕組みの下で、自国の軍や警察によって守られている。27の国際チームがこうした方式で活動している。日本の専門家を警護するチームは、もちろん派遣されていない。

 バグダッドには外務省の職員がいる。危険なので自衛隊はいないから、日本大使館を守るのはイラク人のガードマンだ。バグダッドで自国の部隊が守っていない大使館は日本だけである。

 援助関係者など100人の日本人が既に住んでいるアフリカのスーダンの首都ハルツームに2、3人の自衛官を派遣するための安全確認などの作業は大変で、大型の調査チームまで送られた。しかし、国連から要請を受けて半年近く、今も派遣は実現していない。
海もそうだ。自衛艦隊がいなくなったあとも、日本商船はスエズ運河を通るためにソマリア沖を航行しなければならない。イラクでも、「高鈴」のあと日本のタンカーは依然として原油を積み込んでいる。積まなければ日本の石油が足りなくなる。

 国会が確保しようとするのは「国民の安全」ではなく、「自衛隊の安全」である。世界中にそんな国はない。かくて危険地域の分担は日本の場合、「丸腰チーム」の分担になる。

 伊藤さんが殺されたため、アフガニスタンへの自衛隊派遣の可能性は無くなったという。世界には「同胞が殺されるようなところへは行けない」という国家と、「それなら同胞を守りに行く」という国家がある。

国の生きざま選択岐路

 日本には素晴らしいNGOメンバーたちがいる。彼らはアフガニスタンでも対人地雷を取り除き、農業灌漑(かんがい)を指導し、教育現場に携わり、医療を支援してきた。政府の後ろ盾もなく、公務員のような高い給料もなく、使命感だけで働いてきた。女性もいる。数年前、まだ日本政府職員が首都カブールの外に出られなかったころ、私はヘラートなどの遠隔地で何人かの日本人女性が活躍している様子を見た。イラクでも同様だった。

 欧米政府は自国のNGOに手厚い保護と財政支援を与えているだけではない。外国NGOをも援助している。日本のNGOの中には、日本政府よりアメリカ政府から受けている予算のほうが多いところもある。日本政府のNGOへの支援は微々たるもので、ODA総額の0・2%が支出されているに過ぎない。

 アメリカのNGOに危険が迫れば、米軍のヘリが救出に来る。ヘリにはNGOのアメリカ人職員、次いで現地人職員の順で乗るから、日本のNGO職員までは無理だ。日本人は自前で脱出方法を用意しなければならない。政府はNGOに対して抜本的に支援を強化すべきだ。彼らがいざというときの脱出に必要な車両や無線機器などを購入できるように。世界のすみずみまで支援活動を強化することができるように。

悲壮な援助隊員

 現在の世界の最大関心は、「本来のテロとの戦争」であるアフガニスタンだ。40の国々がカルザイ同国大統領の要請に基づいて軍隊や国境警備隊や警察を送り、国家再建に最も必要な「治安」の確保にあたっている。国際治安支援部隊(ISAF)には、各国から5万3000人が参加している。

 その中に日本の姿はない。「どうして来てくれないのか」と聞くアフガニスタン市民に、「そのかわり、僕たちがいるじゃないですか」と日本のNGOメンバーは答えるという。

 1992年、プノンペンで輝くような日本人青年に会った。カンボジアに平和をもたらす夢を語ったその青年は、「日本が国として何もできない分、僕たちが一生懸命やらなければいけないんです」と力を込めた。名前は中田厚仁といった。国連ボランティアとしてカンボジアの平和構築のため働いていた中田さんは、その翌年、ゲリラの銃弾に倒れた。

 90年代に世界一と日本が胸を張っていた援助額は、その後4割も減少し欧米主要国の後ろに下がった。ODAの現場ではプロジェクトの打ち切りが続いている。重荷を背負うのは一線の援助関係者だ。カネが足りなくなった分、カネのかからない技術協力を行うJICAの職員や青年海外協力隊員に余分な負担がかかっていないか。予算査定で経済協力費を切り込めば、その分、現場に大きなしわ寄せがいく。

 政府が平和維持に参加しないこと、経済協力からも後退することが、心ある援助関係者やNGOを悲壮な使命感に駆り立てていないか。国家の責務を個人の善意と勇気に頼るのは、国家の怠慢である。

カネも出さずに

 世界が首をひねる理屈で、野党は補給艦をインド洋ソマリア沖から引き揚げようとしている。その時点で日本はテロとの戦いの最前線にはいっさい関与しなくなり、世界の互助会から抜けることになる。自国商船隊の保護任務すらほうりだして人任せにすることになる。

 91年の湾岸戦争への貢献をカネだけですませようとした日本は、世界の批判と冷笑を浴びた。今度はカネも出さない。昨年11月28日の本紙に記したように、自衛艦隊派遣のほかにも政治意思さえあればできることは多くある。しかし、やらない。

 われわれは首をすくめ、息をひそめて、テロリストや略奪者たちが日本人や船を襲撃しないようにと念じる国家になるのか。日本にだけは何の災厄もかからないようにと祈り続ける国家になるのか。テロリストや略奪者が憲法9条を読んで反省し、「今後は日本には手を出さない」と言ってくる日を信じるのか。

 世界各地で活動する青年協力隊員やNGOの人々を見ていると、日本がそのような国家に落ちなければならない必然性は見えない。日本には勇気と使命感を秘めた若者が多くいる。彼らにどのような国家を引き継げるのか。

 いまわれわれは、国の生きざまを選択する戦後最大の岐路にいるのではないか。

■岡本行夫(おかもと・ゆきお) 外交評論家。1945年11月23日生まれ。神奈川県出身。68年、一橋大学卒業後、外務省に入省し、北米第1課長などを歴任。91年に退官し「岡本アソシエイツ」を設立。橋本内閣で沖縄担当首相補佐官、小泉内閣で内閣官房参与、首相補佐官(イラク担当)を務める。国際問題の専門家として、政府関係機関や企業へのアドバイス、執筆、講演など幅広く活動。NPO法人「新現役ネット」理事長、立命館大学客員教授。

 

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